マッサに見る、3ストップ成功のための3要素:F1スペインGP決勝分析

史上最年少優勝を果たしたマックス・フェルスタッペン。その背景には、メルセデス2台のリタイアと、ダニエル・リカルドとセバスチャン・ベッテルが3ストップ作戦を実行して後退したという要因があった。では、なぜリカルドとベッテルは3ストップを選択したのか?

 マックス・フェルスタッペン(レッドブル)が史上最年少優勝を果たしたスペインGP。これまでセバスチャン・ベッテルが持っていた21歳73日(2008年イタリアGP)という記録を2年212日も短縮する、18歳227日目での初優勝である。この記録は、現在のスーパーライセンス発給ポイント制度が残る限り、まず更新されることはないだろう。しかも、チーム移籍初戦の快挙である。

 フェルスタッペンの初優勝は、実に素晴らしいものだ。それにケチをつけるワケではないが、彼の優勝には、いくつかの幸運の影響もあった。それは、皆さんもう御承知の通り、ルイス・ハミルトンとニコ・ロズベルグが同士討ちして優勝最有力候補がいなくなったこと、そしてダニエル・リカルドとセバスチャン・ベッテルが”不可解な”戦略を採って脱落したこと、このふたつである。このふたつがなければ、フェルスタッペンが勝つことはまずなかった。

 ハミルトンとロズベルグの事故については、その原因の分析はチームに任せることとして、今回はリカルドとベッテルが”なぜ3ストップ作戦を採ったのか?”という点を分析してみようと思う。

メリットを活用できなかった3ストップ

 結論から言えば、3ストップ作戦を実施したメリットは、全くなかった。それが一番よくわかるのは、第3スティントのリカルドとベッテルのペースだ。ふたりは2回目のピットストップで、タイヤをミディアムからソフトに交換した。3ストップのメリットは、できるだけ新しいタイヤを履いて飛ばしに飛ばし、ピットストップ1回分のロスタイムを埋めて余りあるペースで走ることにある。しかし、彼らのソフトタイヤのデグラデーションは非常に大きく、ともに1周あたり0.160秒程度ペースが落ちていってしまっている。

 一方、ふたりがソフトタイヤで走行している間に、フェルスタッペンとライコネンはミディアムタイヤに交換する。新品のミディアムタイヤを履いたふたりのペースは、ソフトを履くベッテルとリカルドのペースを、上回ってしまっていた。この時点で、3ストップのメリットを享受できないのは明らかだった。

 ベッテルはこれを確認するや、すぐさまピットに戻り、ミディアムタイヤに交換する。この判断は正解で、被害を最小限に食い止めた。一方、リカルドはタイヤを変えずにそのまま6周にわたって走り続けたことで、ベッテルに先行されてしまい、表彰台を手にするチャンスを失ってしまった。

”意識し合った?”リカルドとベッテル

 しかし、なぜリカルドは3ストップを選択したのか? ラップタイムの推移を見る限り、第2スティントでは、フェラーリの2台とフェルスタッペンに直後に付かれてはいたものの、抜きにくいバルセロナでは、コース上のポジション重視が鉄則。3ストップ作戦では、いずれかのタイミングで2ストップのマシンをオーバーテイクする必要に迫られるわけだ。チーム代表のクリスチャン・ホーナーは「フェラーリをカバーする必要があった」と言うが、それならば3ストップではなく、最後のスティントを長めにする2ストップ作戦にするなど、別の方法を採った方が正解だったように思う。そして少なくとも、ベッテルが3回目のストップに入った直後に自身もピットインし、ベッテルの前のポジションをキープしておくべきだった。

 一方のベッテル側は、リカルドの動きをカバーしたものとみられる。ただ、ラップタイムを見れば、やはり29周目の2回目のピットインは勿体なかったように感じられる。ベッテルはレース後のコメントで「ミディアムは合わなかった」と語っているが、徐々にではあるものの、このスティントで前方を行くレッドブルの2台に近づいていた。しかも、ベッテルが最初のピットストップを行ったのは、上位では最も遅い15周目(リカルド11周目、フェルスタッペンとライコネンは12周目)であり、まだタイヤは若い状態だったはずだ(結果的には、スタートで履いたソフトタイヤでのスティントよりも短かった)。第2スティントをあと5〜6周も走れば、2ストップで走り切れたはずで、そうすればライコネンの前は確実、少なくともフェルスタッペンはもっと苦しめられたに違いない。

唯一3ストップを成功させたマッサ

 とはいえ、何も3ストップが絶対にダメな戦略だったというわけではない。ひとりだけ、3ストップ戦略を成功させ、大きく順位を上げたドライバーがいる。ウイリアムズのフェリペ・マッサである。マッサは予選で大失敗し、Q1敗退。そこから、決勝では追い上げ、8位でゴールしている。

 マッサは1回目のピットストップでダニール・クビアト(トロロッソ)をアンダーカット、2回目のピットストップを早めに終えて新品のソフトタイヤを履くとコース上でジェンソン・バトン(マクラーレン)とセルジオ・ペレス(フォースインディア)を抜き、3回目のピットストップの際に先行を許したクビアトとバトンを再びコース上で抜いている。

 マッサが3ストップを成功できた理由。それは、新品のソフトタイヤを持っていたこと、対峙するライバルとのペース差が大きいこと、オーバーテイクの際に武器となる最高速を持っていたこと、の3つである。マッサはQ1で敗退したため、新品タイヤを多く決勝に残していた。そのため、すべてのスティントで新品タイヤを履くことができ、そのうち2セットはソフトタイヤだった。また、チームメイトのバルテリ・ボッタスを見れば、ウイリアムズの本来のペースは、コース上で戦うことになったライバルを圧倒していたはずだ。さらに最高速は全22台中トップの346.3km/hで、これを使って比較的容易にライバルを抜くことができた。これにより、10ポジションアップという困難な仕事を成し遂げたわけだ。

 リカルドとベッテルには、この3ついずれも不足しており、さらにフリー走行等でソフト/ミディアムの特性は把握していたはず。それらを判断すれば、3ストップを成功させるのは、容易ではなかった。にもかかわらず、ある意味策に弄してしまった両陣営は、厳しく言えば”自滅”してしまったと言えるだろう。

 そんなライバルの脱落があったとはいえ、フェルスタッペンの優勝は紛れもない事実。ライバルが脱落した時に”そこにいた”から、勝利を手にできたのだ。その上、レース終盤は百戦錬磨のライコネンを、きっちり抑え続けた。彼がこの先、いくつ勝利を積み重ねるかはわからない。しかし、ベッテルの奇跡的な初優勝(非力なトロロッソで、大雨のモンツァを制した)などと共に、多くのF1ファンの記憶に残っていくことだろう。

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この記事について
シリーズ F1
イベント名 スペインGP
サブイベント 日曜日 決勝レース
サーキット サーキット・デ・カタルニア
ドライバー Daniel Ricciardo , Felipe Massa , Kimi Raikkonen , Max Verstappen , Sebastian Vettel
記事タイプ レースレポート