長谷川祐介(ホンダF1総責任者)インタビュー: 「すべてを向上させないと勝てない」

ホンダF1第4期の立ち上げの1年を牽引した新井康久が退いた後を受けて、2016年シーズンからホンダのF1総責任者になった長谷川祐介にホンダの苦悩と目指す道について訊いた。

 ホンダF1第4期の立ち上げの1年を牽引した新井康久が退いた後を受けて、2016年シーズンからホンダのF1総責任者になった長谷川祐介。実は彼はホンダF1の第3期でジャック・ビルヌーブのエンジニアとして働いていた。研究所にいるより現場に出向いての作業に血が騒ぐ。ゆえに今回の仕事はうってつけだが、今回のミッションは第3期の時のように担当部署だけに注力しているわけにはいかず、プロジェクト全体を統括する責任を負う。

 この開幕戦メルボルンで行ったインタビューの内容はまだ新鮮なのでここに掲載する。ホンダの苦悩と目指す道が分かるだろう。

昨年はあちこち壊れていた

——長谷川さんはホンダF1第3期以来、8年ぶりのF1です。いかがですか?
「久し振りに帰ってきて、ものすごく大変です。重要なのは技術的な問題ではなく、ホンダとしていかなる目標設定をし、どうやって実現する計画を立てるかということです。達成しなければならないレベルを設定し、そのために必要なリソースを揃える。それが私の役割だと考えています。方法論は現場の技術者たちが実際に考えてくれればいいのですが、必要とあらば私も参加するつもりです」

——昨年はF1復帰1年目。何が足りなかったか聞き及んでいますか?
「昨年は本当に多くの問題を抱えていました。何もかも問題だったような気がします。基本的なエンジンの骨格とか耐久性もありました。パワーユニットの取り付け方法だとか、そのオペレーションだとか、すべての領域です。去年はあちこち壊れています。エンジン本体が壊れたこともあります。それは、最大限の性能を引き出すレベルを探れていなかったと言うことです。今年はよりレベルアップしなければいけない。それが開幕戦に来て受けた印象です」

熱回生を冬の間に改良してきた

——ハイブリッドにターボチャージャーというパワーユニットですが。
「これまでは外野から見ていたので、ハイブリッドやターボチャージャーがこれほど重要だとは思っていませんでした。ホンダは市販のハイブリッド車を作っていますので、減速回生でエネルギーを蓄え、それをアドオンするという基本的なことは分かっていましたが、排気(熱)回生に関しては十分理解していませんでした。エンジンの排気エネルギーを電気に変えて使うというところにどのくらいのメリットがあるのか分かっていなかった。その取り分が凄く大きいということを昨年理解し、冬の間にそこを改良してきました」

——最近はパワーユニットが複雑になって来ました。
「電気を生むということでいえば、排気エネルギー側は制限がないのでいくらでも取れるということですが、簡単ではなかったです。難しかったのはターボチャージャーのマネージメントですね。排気エネルギーをいかに効率良く電気に交換するかという点がポイントでした。ターボチャージャーは大きい方が良いと説明されていますけど、本当に径が大きい方が良いのか、もしかしたら別の方法があるのかも知れないとも考えています。その他には、MGUの置き場所とかはまだ最適ポイントを見いだせていないかもしれません」

——勝つには道は遠そうですか?
「エネルギー出力も、回生も、耐久性も、燃費も、すべて向上させないと勝てないと分析しています。優先順位を付けて対処しています。難しいのはターボチャージャーが付いていることです。MGU-Kの出力は120kWとレギュレーションで決まっています。それ以外の部分はエンジン出力に頼る部分が非常に大きいということも理解できました」

ホンダには優秀な技術者が揃っている

——F1は2009年にKERSを採用していました。当時と今ではどう違いますか?
「最初はKERSも60kWだったので、ドライバーはその効果をほとんど感じなかったようですね。KERSを使っていないチームの方が成績の良かった。ですから、技術としては重要ですが、戦闘力の差にはならないのかなあって思っていました。それが全然違ったので新鮮でした。差がつかなければハイブリッドを採用する意味がないですけどね。第三者的立場に立っているときには理解していませんでした」

——使い方も重要ですね。
「使用するタイミングが凄く複雑になっているので、レース前のシミュレーションが非常に重要になっています。今年のレギュレーションではレースがスタートするとドライバーに任せるしかないので、エネルギー量をステアリングに表示して、あとは自分で考えて運転しろということです。マクラーレン・ホンダのドライバーは経験豊かなので、その点は有利だと思います」

——残された課題は何でしょう?
「先ほども言いましたが、すべての性能を向上させることです。出力も信頼性も耐久性も燃費も。それが出来て初めて勝利が見えてくると思います。まだまだ道は遠いですが、優秀な技術者が揃っているので不可能ではないと思っています」

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この記事について
シリーズ F1
記事タイプ インタビュー