【F1アブダビGP】レースレポート:ハミルトン優勝も、チャンピオンはロズベルグの頭上に輝く

F1最終戦アブダビGPは、ハミルトンがレースを終始リードしたものの、2位でフィニッシュしたロズベルグがチャンピオンを獲得した。

 2016年F1グランプリ最終戦アブダビGPは、メルセデスのルイス・ハミルトンが完勝した。ポールポジションからスタートして2番手のニコ・ロズベルグ(メルセデス)を第1コーナーまでにリード、その状態は最後まで変わらなかった。

 しかし、このレースはルイス・ハミルトンとニコ・ロズベルグにとってドライバーズタイトルがかかった重要なレースだった。ポイント上、ハミルトンは(ロズベルグがリタイアした場合でも)3位以内でなければタイトルは獲れないが、ロズベルグが3位以内に入れば優勝してもタイトル獲得は不可能だった。つまり、ロズベルグにとれば追い風の強い、ハミルトンにとれば越える壁の高いレースだったと言える。

 結局、レースは大方の予想通りにハミルトンのリード、ロズベルグの2位追走で終始し、終盤に少し混乱があったものの、そのままゴールしてハミルトン通算53勝目を上げたが、チャンピオンタイトルはロズベルグの頭上に輝いた。

 このレースはタイトル争いの他に2人のドライバーの引退レースとしても記憶されるはずだ。マクラーレンのジェンソン・バトンとウィリアムズのフェリッペ・マッサ。2人はこのレースでF1グランプリから引退するが、2人の結果は明暗を分けた。バトンはコーナーで縁石を激しく攻めすぎてサスペンションにダメージを受けて12周でリタイア。マッサは中団で力強い走りを見せ、最終盤に仕掛けてきたフェルナンド・アロンソを抑えきって9位で最後のレースを終えた。

 貴重なキャラクターを持つふたりが、F1グランプリからいなくなる。

・レースの流れ

 レースはハミルトンのリードで始まり、ロズベルグ、キミ・ライコネン(フェラーリ)、ダニエル・リカルド(レッドブル)、セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)・・・が続いた。最初の計算違いは第1コーナーの立ち上がりでマックス・フェルスタッペン(レッドブル)がニコ・ヒュルケンベルク(フォースインディア)と接触してスピン、最後尾まで転落したことだ。もしフェルスタッペンが通常のレースを走っていれば上位陣の動きは変わっていたはずで、先の読めない物語が語られたかもしれない。実際にはフェルスタッペンは後退したがその後上位に返り咲き、終盤僅かだがレースの流れに波紋を作った。しかし、レースの結果、タイトルの行方に絡むことは出来なかった。その点、レースがやや面白味を欠いたと言えないこともない。

 ハミルトンは5周目当たりからロズベルグとの差を開き、レースをコントロールするようになった。レースをトップでコントロールすることが、ハミルトンがチャンピオンに輝く唯一の方法といえた。そして7周目、スタートで履いたウルトラソフトからソフトタイヤに交換、タイヤ交換が一巡して再びトップに立つと、中盤から最後までの長いスティントをこなした。

 ハミルトンがタイヤ交換をした翌周(8周目)、2番手を走っていたロズベルグがソフトタイヤに交換するためにピットへ入るが、やや時間がかかり、ピットアウトしたときには3番手。ロズベルグの前には最後尾から追い上げてきたフェルスタッペンがいた。実は、8周目には上位陣は揃ってタイヤ交換にピットへ入ったために、フェルスタッペンはハイペースの追い上げを敢行して2番手のポジションに飛び込むことが出来たのだ。フェルスタッペンが1回目のタイヤ交換をしたのは21周目。その結果、6位に後退している。

 10周が過ぎた頃の順位はハミルトン、フェルスタッペン、ロズベルグ、ライコネン、リカルド、ベッテル・・・。ここでメルセデスのチームからロズベルグに「フェルスタッペンに仕掛けるな。右前輪に注意して走れ」と無線連絡が入った。チームはフェルスタッペンがタイヤ交換のピットストップをしなければならないことを知っており、無理をしなくても2位は確実だということを確認していたからだ。ハミルトンも路面温度が低下したためにグレイニングの可能性をチームから警告され、17周目には「タイヤが滑りすぎる」と不満をぶつけている。それでも2番手のフェルスタッペンには大きな差を着けており、レースは彼の思い通りに進んでいた。

  19周目、ロズベルグがフェルスタッペンを攻め、第8コーナーから第11コーナーまでの間に見事にかわした。2台は接触寸前の接近戦を見せたが、スタートからタイヤ無交換で走って来たフェルスタッペンには限界だったのだろう。その2周後に彼はタイヤ交換にピットへ入っている。この時点でトップのハミルトンと2番手ロズベルグの差は約4.7秒。ロズベルグと彼を追うライコネンの間もほぼ同様のタイム差が広がっていた。

  28周目、ハミルトンが2度目のタイヤ交換にピットへ入り、その間にベッテルがレースをリードした。しかし、この頃からハミルトンはややラップタイムを落とした走りでレースをコントロールするようになった。前を行くベッテルは2度目のタイヤ交換をしておらず、それを行えば後退することは見えており、ハミルトンはそれを見込んだ上でペースを落とす走りを繰り広げた。30周を過ぎるとペースの遅さはさらに顕著になった。

  ハミルトンがペースを落としたのはもうひとつ考えがあった。もちろんハミルトンは2番手に着けるロズベルグを前に出すつもりはない。ロズベルグが攻めてくれば防戦するだろう。しかし、ロズベルグが仕掛けてこないことも知っていた。彼は無理をせずとも、3位以内ならチャンピオンだからだ。そこでハミルトンは、ペースを落とすことによって後続のライバル達が追い上げてきて、自らとロズベルグの間に入る可能性に賭けたのだ。トップを走っていたベッテルは予想通りに38周目にピットへ入ってタイヤ交換をするが、すでに10周ほど前に2度目のタイヤ交換をしているハミルトンやロズベルグに比べてラップタイムは2秒ほども速く、一時後退しても終盤までには十分にロズベルグの直後に張り付く計算だった。3位、4位を走るフェルスタッペンとリカルドのレッドブル勢も、ハミルトンのスローペースのおかげでロズベルグに急接近をしてきた。

 メルセデスチームからハミルトンに無線連絡が何度も入った。

「なぜそんなにペースを落とすんだ?」

「1分45秒3に上げろ」

「レースをしろ!」

「速く走れ、後ろからライバルが来ている!」

 しかし、ハミルトンはこう答えた。

「レースをリードしているのは僕だ」

「僕たちに自由にレースをやらせてくれ」

 ここには、自分にもチャンピオンタイトル獲得の権利がある、というハミルトンの強い意志があった。レースをリードしているのは自分で、自分がタイトルを獲得するには状況はどうあるべきかということをハミルトンは考えてレースをしていたのだ。ハミルトンが遅くて後ろのロズベルグが抜いていけばいいということだ。そうすればロズベルグは自力でタイトルを取れるじゃないか、と。しかし、ロズベルグはチームに無線でこう伝えている。

「ルイスはスローペースだけど、セクター1が速いのでどうしても抜けない」

 結局、ハミルトンはスローペースのままトップでゴール、ロズベルグが僅か0秒439という僅差で2位に入り、チャンピオンタイトルを獲得した。ロズベルグに肉薄したベッテルもロズベルグから僅か0秒843差で3位、その後ろにフェルスタッペン、リカルド、ライコネンが続いた。

  メルセデスチームの無線はロズベルグのタイトル獲得を支持するような内容だったとも取れる。しかし、考えてみればこれは公平ではない。レースをコントロールしていたのは、自らのタイトル獲得のチャンスを持ったハミルトン。彼がロズベルグにタイトルを渡さないための最大限の努力をするのをチームが咎めることは出来ないはずなのだ。それはレース中にハミルトンが無線で叫んだ言葉に如実に表れている。

「勝ち負けはどうでも良いんだ。いまこの瞬間にタイトルを失った!」

  ハミルトンが1位で、ロズベルグが2位でゴールした後ろには、ベッテル、フェルスタッペンが僅差でゴール、ロズベルグが5位、ライコネン、ヒュルケンベルク、ペレス、マッサ、アロンソまでがポイント獲得圏内でレースを終えた。終盤、アロンソが攻撃的な走りでマッサを攻めたが届かず。

 レース後、ホンダのF1総責任者の長谷川祐介は、「アロンソはよく追い上げてくれました。一時は15秒もあった差が殆どなくなりましたが、マッサがDRSを使うので抜けませんでした。上手くいけばマッサだけでなくペレスも抜けたはずです」

「バトンはサスペンションのトラブルです。それまではクルマも調子良かったので、リタイアは残念でしたが、ハッピーにレースを終えたようです。エンジンに関しては2台とも問題はありませんでした」と語った。

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この記事について
シリーズ F1
イベント名 アブダビGP
サーキット ヤス・マリーナ・サーキット
ドライバー Lewis Hamilton , Nico Rosberg
チーム Mercedes
記事タイプ レースレポート