メルセデス、度重なる衝突は解決できるのか?

オーストリアGPでルイス・ハミルトンとニコ・ロズベルグは再び接触をした。もし、この先もこの様な事が続くのであれば、チームメートで居続けられるのであろうか?

 同じ事は再び繰り返された。メルセデスのチームメート同士のルイス・ハミルトンとニコ・ロズベルグは、グランプリ中に再び接触を起こした。そして、世間は彼等のギクシャクした関係に再び注目している。

「彼等はどうやって今後もチームメートとしてやっていくのだろう。」レース終了後、セバスチャン・ベッテルとマーク・ウェーバーを統率しなくてはならかったレッドブルのチーム代表クリスチャン・ホーナーは、思いにふけりながら述べた。

 日曜日の出来事に関しては、どちらの陣営にもそれぞれの見方があるだろう

 ロズベルグの車載カメラを時間をかけて細かく見てみると、そうするべき時にロズベルグはイン側には寄せず、寄せた時にはとてもゆっくりだった。その一方で、ハミルトンはハードブレーキングで寄せており、その結果としてロズベルグのフロントウィングが壊れる接触を起こす事になった。

 では、ハミルトンはどこでインに寄せるべきだったのか?

“ロズベルグにはコーナーを曲がるための十分なスペースがあった”とハミルトンは述べている。

 ハミルトンがランオフから戻った際の接触については、どう説明がつくのだろう?

「彼はまったくスペースを残していなくて白線ギリギリを走っていたから、僕は芝の上を走らなくてはならなかった。もう終わった事さ」とハミルトンは述べた。

激闘の歴史

 ハミルトンとロズベルグの歴史はカート時代に遡るくらい長く、F1では2013年にメルセデスのチームメートとなった。その年に、ロズベルグはモナコとシルバーストーンで勝利を挙げ、ハミルトンはハンガリーで優勝したが、ベッテルのレッドブルでの最後のタイトル獲得を防ぐことはできなかった。V8エンジン最後の年は、ハミルトンとロズベルグはポイントを争い、最終的に189対171でハミルトンがリードして終えた。

 2014年にハイブリッドターボの時代に入ると、ふたりの争いは一層熾烈になる。ハミルトンの開幕4連勝に続き、ロズベルグがモナコで勝利した。ただし、それは予選最終ラップのミラボーで飛び出し、ハミルトンのポールポジションを打ち砕いた後の話だ。

 この年の後半には、スパ・フランコルシャンで行われたベルギーGPのストレートエンドのレ・コンプで悪名高いクラッシュが起こった。ロズベルグは前を行くハミルトンに対し素晴らしい走りを見せていたが、ロズベルグのフロントウイングがハミルトンの左リヤタイヤをパンクさせた。

 ロズベルグは“オーバーテイクにはまるでリスクは無かった”と言ったが、レース後のヒートアップした会見では、ハミルトンはロズベルグが“自分のポジションを守るため”に行ったことだと非難した。

 この事故により、レッドブルのダニエル・リカルドに勝利が転がり込んだ。ハミルトンは次戦から6連勝を飾り、384対317でタイトルを手中にする。

 2015年は、ハミルトンはオースティンにて自身3度目、そしてメルセデスでは2度目のタイトルを手にする。このレースのターン1でもロズベルグとタイヤ同士で接触し、ニコをランオフに押し出した。

 2戦前の鈴鹿では、ハミルトンは第2コーナー出口でとても乱暴な運転を見せていたが、オースティンでハミルトンは、チームメートに対して意図的にこのようなことをすることはない、との声明を出した。

エスカレートする衝突

 それでも今年のバルセロナで起こった事の衝撃には及ばない。ハミルトンはターン3の出口でインからロズベルグを抜こうとしたが、行く手を塞がれたため芝でコントロールを失い、2台のメルセデスはリタイヤする運びとなったのだ。

 ロズベルグのエンジンセッティングに問題があり、MGU-Kが使えない状況だったことで議論を呼んだ。ステアリングを外してマシンから降りたロズベルグは、ハミルトンのドアを思い切り叩き付けた。

 レース後には、次戦のモナコでのグリッドペナルティを避けるため、お互いに非難することはなかった。

 今年に入って目についた中では、カナダのターン1で、オースティンと同様にハミルトンが攻める形でタイヤを擦り合った。

 そして先週のレッドブルリンク最終周での衝突だ。最終ラップで、ロズベルグのマシンはブレーキシステムの故障により、またもパフォーマンスを落とした。

 今回、ハミルトンはターン2に向かうところで外側からアタックしたが、それでも接触が起きたーー今回はロズベルグが曲がれるはずのコーナーでインに入って行かず、ハミルトンをランオフに押し出したのだ。

 スチュワードはロズベルグの非としたが、彼は「冗談じゃない」のひと言と共に否定した。結局ハミルトンが勝利を掴み、ロズベルグは4位で終えることとなった。もっと声にしたいことはあったのかもしれないが、「ハミルトンが接触して来た以上のことはない」とのコメントを残したのみだった。

 元F1ドライバーで現在はコメンテーターとして活躍するマーティン・ブランデルがレース後に残したコメントは以下の様なものだった。

「 ニコは自分の失敗の代償を払う事になったと思う」

結論

 野心的なドライバーがチーム内にふたりいれば、大きな報酬のために彼等が闘うのは当然で、確執や衝突は日常茶飯事の事だろう。

 今までのところ、マシンのアドバンテージも手伝って、メルセデスは彼等を公平に扱っている。しかし、今までドライバー達の擁護をしていたトト・ウルフでさえ、日曜の夜にこのように話している。

「いつかはまたこうなるのは明白だったが、彼等は学んだはずだから、この様なことはもう起きないだろう、と甘い考えを抱いていた。そして、結局またも同じ事が起きてしまった」

 レース直後には今回の事件に対して「愚か」や「受け入れ難い」などと言った大きな意見が巻き起こり、誰も望まないチームオーダーの可能性が浮上した。もちろん、彼等が再び同じ過ちを犯さない限り問題は無いが、今回は少しばかり複雑だ。

 3度のチャンピオンに輝いたハミルトンは、長期契約に昨年サインしたばかりだ。一方、メルセデスとロズベルグの契約交渉は停滞しており、それが彼を不利な立場に追い込んでいる。

 あまりに多いチーム内の衝突は“ビジネスに悪影響だ”と、メルセデスの役員が決めたとしたら、ニコ・ロズベルグは縮まってしまったポイントリード以上の影響を受けることになるだろう。そして、メルセデスの若きサードドライバーのパスカル・ウェーレインは、この先もマノーに腰を据える事になるだろう。もちろん、そうなるべきではないが。

 ロズベルグにとって、今年は初めてタイトルを獲得するためのチャンスだ。しかし、一時は圧倒的だったポイントリードも、今やたった11ポイントのリードになってしまった。彼がジレンマに陥る危険性は想像に難くない。

 もし彼が闘争心を示さないのであれば、チーム内の序列に追従することになってしまうかもしれない。逆に、もし彼がハミルトンと激しくバトルするのであれば、解雇されるリスクを負わなくてはならないことになる。彼は少しでも多くのポイントリードをキープするためには、その場その場でよりタフな決断を強いられることになるだろう。

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この記事について
シリーズ F1
イベント名 オーストリアGP
サーキット レッドブルリンク
ドライバー Lewis Hamilton , Nico Rosberg , Toto Wolff
チーム Mercedes
記事タイプ コメンタリー