【フォーミュラE分析】将来のモータースポーツを担うのは、フォーミュラEなのか?

輸送機器の進歩は、モータースポーツの将来を脅かす。その一方で、フォーミュラEこそが将来のモータースポーツの姿なのか……?

 輸送機器の進歩は凄まじい。特に自動車は、かつてはほとんどが内燃機関(エンジン)で駆動していたものが、現在では電気モーターを併用するハイブリッド車が主流を占めるようになり、完全なる電気自動車も各メーカーがラインアップに加えるようになってきた。

 そういう環境下で、内燃エンジンのみを使用してモータースポーツを続けていくことは、長期的に見れば脅威にさらされていると言っても過言ではない。そのため、F1もWECも、電気エネルギーを併用するハイブリッド式に大きくその舵を切った。

 それ以上に将来を見据えたカテゴリーが、フォーミュラEである。フォーミュラEは完全に電気のみで走行するフォーミュラカーで、騒音や排気ガスがゼロもしくは少ないという点から、世界中の大都市の市街地で開催されている。航続距離などの問題はまだあるものの、着実に進歩を遂げており、関係者はフォーミュラEこそが自動車レースの将来を担う最高の方法だと信じている。

Lucas di Grassi and Alejandro Agag, Formula E CEO
Lucas di Grassi and Alejandro Agag, Formula E CEO

Photo by: FIA Formula E

 そのフォーミュラEは今週末、モロッコのマラケシュでレースを行う。マラケシュでは現在COP22(国連気候変動枠組条約第22回締約国会議)が行われており、地球の温暖化を防ぐための取り組みが、各国代表たちによって話し合われている。マラケシュePrixはこのCOP22開催中に街中で行われるため、注目を集めることは必至だ。また、この夏にルーカス・ディ・グラッシがグリーンランドの氷冠でフォーミュラEを走らせたシーンもCOP22で放映され、フォーミュラEの可能性をアピールすることになっている。

 電気を使うとしても、環境面では重要な問題が出てきている。例えば、アムネスティ・インターナショナルの報告によれば、バッテリーの生産に必要不可欠な鉱物であるリチウムは、特に南米で水質汚染や水の枯渇に繋がっているという。このような問題はまだ抱えているものの、フォーミュラEの関係者たちは、その可能性を信じ、次のようにその可能性を語っている。

ニック・ハイドフェルド – マヒンドラ

Nick Heidfeld, Mahindra Racing
Nick Heidfeld, Mahindra Racing

Photo by: Spacesuit Media

「こんなレースをするなんて、誰にも想像できなかった」

「フォーミュラEは若者の生活に関連しているから、彼らはもっとフォーミュラEに触発されてくると思う。僕がモータースポーツを始めた1990年代とは大きく異なっている。効率やクリーンなエンジニアリングと技術に対する認識はほとんどなく、出始めてきたばかりの頃だった」

「こんな方法でレースをするなんて、誰にも予想できなかっただろう。今では学校や大学でこの、よりクリーンな工学技術が教えられている。もちろん、次世代のライフスタイルに、それはより適しているんだ。だから、フォーミュラEやこの種のレーシングに惹きつけられるのは、当然の感覚なんだよ」

「フォーミュラEを都市で開催するのは、新しいファンをレースに引き込む根本的な出発点になる。フォーミュラEは都市部や、現代的な都市に住んでいる人々にとって道理にかなっている。最初のレースが、汚染がひどい北京だったのは重要だった」

「フォーミュラEを見ているファンを見ると、F1のファンとは大きく違うことが分かる。若いファンが多くて、それはノイズがないおかげだと思う。そこで電車や地下鉄に乗っている人々にとって、より身近なんだ。彼らは長旅の後、キャンプをしなくていいんだ。金額にも見合っているし、サーキットに行くために1日かけるより効率的なんだ」

「時間はとてもとても早く過ぎていく。タイミングが全てなんだ。フォーミュラEが始まった3年前というタイミングはパーフェクトだと思う。機能しないと思った提案もあったし、機能するかもしれないと思ったものもあった。今フォーミュラEは機能していて、多くのマニュファクチャラーが参戦している」

「モータースポーツは常に新しいことに取り組んでいくべきだ。ロボレース計画のようにね。いくらかの人々には理解するのに早すぎたかもしれないが、フォーミュラEが近い将来、最低でもモータースポーツの1部分を占めると、私ははっきりと確信している」

 

マーク・プレストン(テチータ・チーム代表)

Mark Preston, Techeetah Team Principal
Mark Preston, Techeetah Team Principal

Photo by: Techeetah

「昔はV8エンジンのことだけ考えれば良かった」

「私が大学を出てから今まで、いつ若いエンジニアの新時代が来るかを考えると、『将来の仕事として内燃機関の仕組みを学ぶのか?』と自問自答しなければならないと思う。私が大学を出た時には、V8エンジンのことだけを考えておけばよかった。私はオーストラリア人だからね!」

「私が会う、今工学に興味を持っている輝いている若者たちは、30年後に何が起こるかを見ている。石油の自動車関連への利用は、切り替えられていくと予測されており、ドイツでは2030年に内燃機関の使用が禁止されるという話もある。他にも多くのものが大きく変わる兆しを見せている」

「変化のペースはとても早い。私がスーパーアグリでフォーミュラEに関わり始めた2013年でさえ、何が起ころうとしているのか本当にはわかっていなかった。技術と、現代の技術を形作っていく方法が今、与えられていると思う。それは、メーカーに受け入れられて、もう昔には戻らない」

「公共の見方は変わった。我々は今、大規模な自動輸送が到来するのではないかとすら思う。自動車においての電気工学やモータースポーツは、今や非常に力強いムーブメントである。なぜなら将来の移動や社会の流れに関連しているからだ」

「私の友達が子供を連れてフォーミュラEに来るとしたら、子供達が寝ないで起きていることは明らかだ。フォーミュラEは、6歳の子供がフェンスの近くに立つことができ、耳栓をすることなくマシンを見れるレースだ。彼らは目撃したことについて語ることもできるし、議論することもできる。音が非常に小さいからね。実際そう考えると、従来のモータースポーツは、それを観戦している間におしゃべりで体験を共有できない、唯一のスポーツではないかと思う」

「もし子供が家に帰ってから、彼らが見たことについて語り、親に質問をし始めたら大事件だ。私が子供の時、リサイクルとオゾン層について聞いた時そんな感じだった。今、彼らがフォーミュラEを見始めて、電気技術を備えたロードカーと関連づけてくれれば、それは環境とより効率的な人生の送り方にとって良いことだ」

 

オリバー・ターベイ – ネクストEV

Oliver Turvey, NEXTEV TCR Formula E Team
Oliver Turvey, NEXTEV TCR Formula E Team

Photo by: Andy Chan

「FEは人々の生活をより効率化できるカテゴリーだ」

「現在のフォーミュラEは今後開発していく余地がたくさんあり、その多くの分野で若いエンジニアを起用し、レースを盛り上げている。そうすることで自然とフォーミュラEに関わる若者を増やしているんだ」

「その一方、フォーミュラEは持続可能エネルギーでモータースポーツをすることができるカテゴリーだ。フォーミュラEは人々の生活をより効率化する手助けができると僕は思っている。人々は今、構造的で組織化された生活をしている。よって、将来的には僕たちのスポーツがより多くのことに役立てると思う」

「1日の終わりに、僕たちは自分たちの生活をしている場所をケアしないといけない。何かをする時には必ずこのプロセスを踏まなければならないと思う。フォーミュラEで使われている数々の技術は、将来的に道路や電気自動車の開発に役立てられて、人々が利益を得ることができるようになる」

「僕が思うに、未来の輸送に関するソリューションは、電気が主な鍵になってくると思う」

 

ルーカス・ディ・グラッシ – アプト・シェフラー・アウディ・スポート

Lucas di Grassi, ABT Schaeffler Audi Sport
Lucas di Grassi, ABT Schaeffler Audi Sport

Photo by: Andy Chan

「新しい世代の関心を引きつけなければいけない」

「僕らがグリーンランドに行った時は、非常に明確なメッセージがあった。道路上により多くの電気自動車を走らせることだったり、それがいかに重要かということだった」

「僕が初めてF1をテストした時、僕は19歳で、V10の自然吸気エンジンだった。パワーとそのサウンドは衝撃的だったよ。でも、僕にとって素晴らしいと思えるのは、その後の10年でモータースポーツがどれだけ急速に変化したかということだ」

「人々が、変わることがどれほど重要かということに適応し、確認することはとても難しいことだ。それが、僕らがこのデモ走行を行った理由だ。今後は電気自動車になっていくし、人々がそれにできるだけ早く適応することが不可欠だということを、強く示す必要があった」

「実際に電気のテクノロジーは、内燃機関よりもより効率的なんだ。経済的にも環境的にも、電気の方が優れている。それは多くのレベルで理に適っている」

「実際にテスラのような誰かが、電気のテクノロジーがどれだけ早く進化できるのかということを示した。そしてそれはまた、この技術に道を作った。それが受け入れられたため、フォーミュラEという道ができたんだ。それによって人々が、電気こそ進むべき道だと信じ始めるようになった」

「それのファンだからということではなく、フォーミュラEに分類されるようなモノに恋に落ちたんだ。自動車メーカーがフォーミュラEに来るのには時間がかかるだろう。しかし多くの人がそれに倣う前に、実現できればどんなに良いことだろう。伝統的な、そして筋金入りのモータースポーツファンに理解されるのも、時間がかかる。しかし、もちろんいずれそうなるはずだ」

「しかし、最も重要なことは、今の世代を取り込むことだ。彼らはもはや、クルマに対して深い情熱を持っていない。彼らの交通の選択は、Uber(ウーバー/インターネットを介した、個人タクシーやレンタカーの配車サービス)のようなモノに変わっている。クルマを所有することは優先事項ではないから、モーターレースはある程度規模が小さくなっていく。だから僕らは、新しい世代の関心を引きつけるようにしなければいけない。そして長期的に彼らに興味を持ってもらい続けなきゃいけないんだ」

「新しい技術の最大の課題は、人々の習慣を変えることにある。内燃機関を積んだクルマを所有する人々の大半が、電気自動車に変更し、そして文化的なモノも変えるためには、長い時間がかかる」

「既存の概念を打ち破るような技術を、いくつか見ることができる。ただ、それがすでにそこにあったとしても、それを受け入れるためには長い時間がかかる。ほとんどの家庭にコンピューターがあるようになるまでに、どのくらいの時間がかかったと思う? それには、数年を要した。これ(電気自動車)の普及はそれよりも早いと思う。保証はできないけどね」

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この記事について
シリーズ フォーミュラE
ドライバー Lucas di Grassi , Nick Heidfeld , Oliver Turvey
記事タイプ 分析
タグ leonardo di caprio, mark preston