フォーミュラEパリ大会は成功だったのか?

初開催。パリの中心街で行われたフォーミュラEを考える

レース関係者長年の夢、実現

 大都会の中心部で自動車レースを開催することは、自動車レースに携わって来た者の心からの夢だ。では、なぜ大都会の真ん中でレースを行いたいのだろう? 自分たちの携わっている仕事を多くの人に見てもらえるから? 正直言ってそれ以外の理由は見当たらない。だから、本当に大都市の中心部で自動車レースが必要だろうか? という疑問は常にある。先のパリで行われたフォーミュラEレースを取材してそう感じた。

 フォーミュラEレースは全電化の自動車レースで、基本的に排ガスを出さず、環境に優しい。自動車の排ガスに頭を悩ませている大都市は、いかに空気汚染から市民生活を守ればいいか試行錯誤だ。クルマを作る側ではなく、使う側の意識を高めなければというのは世界中の大都市の願いだ。

 

Start action
Start action

Photo by: Adrien Clement

モータースポーツを大都市で開催する意義

 フォーミュラEをパリの真ん中で開催するアイデアは、その考えを利用して構築されたといえるだろう。自動車レースを大都会の真ん中で行うには理由が必要だ。そこに環境問題を絡ませることで市街地のレース開催を正当化する。まあ、そんな後付けの理由だろうが、誘致者の功名心だろうが、それは咎められる必要はない。なぜなら、全電化のフォーミュラEレースを見て、大勢の市民が電気自動車の特性と効果に意識を及ばすという大義名分が果たせれば、世の中は(例えゆっくりとでも)変わって行くはずだからだ。

 そうした意味でも、ジャン・トッドFIA会長、アンヌ・イダルゴ(パリ)市長、アレハンドロ・アガグFEH(フォーミュラEホールディングス)代表の目の付け所、そしてその夢を実現させる努力には頭が下がる思いだ。本音が何であろうと、建前が成果を呼ぶのであれば何も批判する必要はない。もちろん重箱の隅を突いて批判する者もいるが、トッドFIA会長はレース前日の会見で「批判は人間の本性だから」と語り、批判する者を許容した。フォーミュラEは批判を内包してしまった。

観戦チケットは完売。イベントとしては成功したパリ大会だが……

 パリのフォーミュラEレースはセーヌ左岸、アンヴァリッド宮殿を巡る1周1.8kmのコースで開催された。公道がコンクリートの壁と金網フェンスとに囲まれてレースコースに変身したのだ。仮設スタンドが設けられ、宮殿前の芝生の庭にはe.Villageと呼ばれる広場が出現した。大勢の市民や観光客が集まり、入場チケットは完売。コース周辺も含め、3万人の人々が集った。レース後の表彰式会場では、表彰台前の広場は観客で埋まった。

 

Podium celebration
Podium celebration

Photo by: FIA Formula E

 振り返ると、イベントとしてのパリ・フォーミュラEレースは成功したと言えよう。しかし、レースとしてはどうか? コース幅が狭すぎて追い抜きが困難で、激しいバトルを見ることは出来なかった。これは今回に限らず公道を使用するフォーミュラEの課題かもしれない。

 もうひとつの課題は、せっかくの市街地レースでありながら、コース全周をコンクリートの壁と金網フェンスが取り囲み、スタンドの設置も貧弱で、決して観客の視点に立って作られたコースとは言えなかった。FIAの安全規則だと言われても、本末転倒な面は否めない。テレビ放映を見てくれというなら、わざわざ大都市の真ん中で開催する意味はない。

 大勢の人々が肌で感じ、自分の目で見ることが出来るレースを提供するために、大都市の市街地で開催しているのではないか。フォーミュラE協会はその点を熟考して欲しい。フォーミュラEを独善的なイベントにしないためにも、大勢の人々に対して扉を開き環境を考えてもらうためにも、より観客フレンドリーなイベントにしてもらいたい。

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この記事について
シリーズ フォーミュラE
記事タイプ 分析