インディ500勝者ストーリー:アレクサンダー・ロッシ

インディ500での驚くべき勝利から一夜明けて、アレクサンダー・ロッシはメディアの前に姿を現し、物思いにふけっていた……。

 インディ500での驚くべき勝利から一夜明けて、アレクサンダー・ロッシはメディアの前に姿を現し、物思いにふけっていた。そこにはアン・プロフィットもいた。

 初出場となったベライゾン・インディカー・シリーズのビクトリー・レーンで、NAPAオートスポーツがスポンサーする、ブルーとゴールドにカラーリングされた98番のアンドレッティ・オートスポーツのマシンから降りた彼は、明らかにまごついていた。勝利の花輪のかけ方が分からず、勝利のミルクも一気飲みすればいいのか、一口すすればいいのかも分からなかった。

 レース終了から2時間後、コース開設当初の路面である煉瓦が敷き詰められたオーバルのスタート/フィニッシュラインの上で彼はこう言った。

「ビクトリー・レーンに引き込まれたとき、自分の勝利にただ驚いていた。何も分からなかったんだ。今振り返ってみても、あのコーナーを回ってから何が起きたのか分からないよ」

「この1カ月は、毎日ただ圧倒されていた。今は、昨日起きた事を理解しながら楽しんでいるし、出来る限り受け入れようとしているんだ」

最初は「うわっ、速い!」と思った

 大概のインディ500の勝者と違い、ロッシは勝利を手にした後もゆっくりとくつろいで、夜も良く眠れたようだ。とは言え、今週末のデトロイトに向けて準備を整える前に、木曜日まではあちこちに引っ張りだことなるだろう。

 エンジニアトのトム・ジャーマンによる並外れた準備と、チームの共同オーナーで元レーサーのブライアン・ハータの知識を基とした戦略のすべては、インディの勝利には欠かせないもの。それらはロッシにとって不可欠なものになりつつある。我々のような部外者が、それを理解している事も重要だ。

 オーバルの初心者であるロッシは、フェニックス・インターナショナル・レースウェイで行われた合同テストに見学をしに行った。その時、彼はちょうどアンドレッティ・オートスポーツと契約を交わしたばかりで、まだマシンはあてがわれていなかった。4月上旬のレースに彼は参戦し、予選を通過して14位でレースを終えたが、その時はバンクの厳しいオーバルの運転を学習している最中であった。それは良い学習経験だったが、インディのための準備をさせてはくれなかった。

「ROP(ルーキー・オリエンテーション・プログラム)で何周か走った時は、ふたつの思いが交錯した。ひとつは、“うわ、速い!”、もうひとつは、“ストレートラインのおかげで落ち着きを取り戻せるから、フェニックスよりもゆっくりしてるな”ってね」

「ターン1とターン3に入る度に、これを続けて行くのか疑問を投げかけていた。初めの頃は、ただ無我夢中だった。日が経つに連れてどんどん慣れてきて、自分にとって当たり前になってきたんだ」

やがて訪れた緊張

 アレクサンダー・ロッシのインディ500に対する最初の記憶は、2006年に現チームメートのマルコ・アンドレッティが、サム・ホーニッシュ・ジュニアに数インチの差で敗れた時の事だ。

「あの時の事が、なぜかはっきり記憶に残っているんだ」

 日曜日の朝、ガレージに到着してチームメートのムードを認識していたが、自分は特に緊張はしなかった、と彼は認めた。

「すごい良い気分で呑気にガレージに足を踏み入れたら、みんなが緊張とプレッシャーとストレスにさらされてるのが感じられたんだ。“よし、自分ももう少し緊張するべきなのかもしれない”と思ったんだけど、全然駄目だった。それどころか、グリッド上でマシンに乗り込んだら、もっと落ち着いてしまったんだ。自分が一番落ち着く事をしたら、プレッシャーは全く感じなくなってしまった」

 しかし、それはやがてやって来た。

「レース残り15周で、“OK、チャンスが来たかも”と思ったんだ。でも、やらなければならないことがたくさんあった。ダッシュボードに表示された残燃料の数値も気にしなければ行けなかった。ある周回は良くて、ある周回は悪くて、ただ怖くなっていった。最終的には、完全にナーバスになっていたよ」

 ルーキーには周囲の人々のサポートが必要だ。ロッシには、前出のハータとジャーマンという、この2.5マイルのとても厳しいオーバルを知り尽くしたふたりがついていた。

「トムとブライアンは、インディドライバーが自分のマシンについて欲しいと望む最高のふたりさ」ロッシは述べた。

「ハータは素晴らしい戦略を練り上げるんだ。そして、知識豊富なジャーマンは、1カ月を通してコースで一番ベストなマシンを与えてくれた。彼の成功が彼自身を物語っているよ。毎日のように、データ収集をする彼のために運転し、一緒に作業できるのは本当に名誉な事だ」

インディ500の次なる勝利を目指して

 インディ500で勝利した後、彼はインディカーレースの宣伝をするために火曜日にはニューヨークへ、そして水曜日にはテキサスへ移動する。その後デトロイトへ飛び、彼にとっては初めての市街地コースでレースに参戦する。

「このコースについては何も知らないんだ。でも、この後数日かけてビデオを観ることにするよ。あそこへ行くのをすごい楽しみにしているんだ」

「すごいバンピーだと聞いているよ。最高だねつまり僕の手はハンドルから剥がされそうになるってことだよね。手がボロボロにならないから、オーバルが好きになりかけてたんだけど、僕の手は完全になくなってしまうかもね」

 アンドレッティ・オートスポーツの争いによって、慌ただしいシーズンスタートとなったにも関わらず、ロッシは5月上旬に開催されたインディグランプリで転機を迎えたと語った。そして、チームマネージャーのロブ・エドワーズの「この先に、もっと良い日が我々チーム全員を待ち受けている」と言う信念をチーム内で共有した。

「僕たちは、デトロイトとテキサスにこの勢いを持っていかなければならない。間違いなく、いくつかの事を把握し始めているし、チームとしていつでもスタートできるさ。アンドレッティ・オートスポーツの組織全体として、この後に続くいくつかのレースに向けて前進あるのみだ」ロッシは語った。

 今後の予測は不透明なまま、100回目を迎えたインディ500の勝者は丁寧に会釈をして、次の闘いに向けてその場を去って行った。

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この記事について
シリーズ IndyCar
イベント名 インディ500
サーキット インディアナポリス・モーター・スピードウェイ
ドライバー Alexander Rossi
チーム Andretti Autosport
記事タイプ 特殊機能