”ル・マン向け”TS050には厳しかった標高2300mの気圧:トヨタのWECメキシコ

決勝では善戦したトヨタ。しかし、標高2300mの低い気圧が、冷却とダウンフォースの面で苦しめた

 不順な天候のせいもあったが、とにかく最後まで目が離せないレースだった。

 LMP1クラスの3チーム、アウディ、ポルシェ、トヨタの激突。予選ではアウディとポルシェがトヨタを1秒引き離したが、決勝レースになると様相が異なり、3メーカーはほとんど互角の戦いを繰り広げた。

 トヨタが予選でライバルに差を付けられたのには理由がある。ひとつは木曜日朝のテスト走行で6号車がクラッシュ、修復のためにその日のフリープラクティスを走れなかったこと。もうひとつは、TS050ハイブリッドの開発がピンポイントでル・マンに向けられており、他のサーキットではダウンフォース不足に悩まされたからだ。ル・マンに似た高速コースのスパでの好走、タイトコーナーの多いニュルブルクリンクでの惨敗がクルマの特性をよく表している。

 パワーユニット開発責任者の村田久武によると、「TS050ハイブリッドは完全にル・マンだけに向けて開発したクルマです。そのため標高が高く空気の薄いメキシコではダウンフォースを目一杯付けてきましたがまだ足りない。エルマノス・ロドリゲス・サーキットは細かいコーナーが多いので、そこでタイムを失っています」と説明してくれた。

「ダウンフォース以上に問題だったのは冷却です。空気が薄いと冷えない。容量の大きな冷却システムを持って来ましたが、リヤのブレーキが冷えず制動性能が落ちます。それを補うために回生値を上げると今度はモーターが熱を持つ。追っかけっこでした」

 しかし、金曜日の予選が終了するまでには十分な冷却が得られるようになったとして、冷却システムを通常のものに戻した。

 ドライバーは技術陣とは違う心配があった。標高2300m余りのメキシコシティに身体を順応させるために、ドライバーはレースの前の日曜日には現地に入るようにとチームから話があった。中嶋一貴だけが月曜日に入ったが、他のドライバーは予定通り日曜日にメキシコシティに入っている。では、彼らは実際に標高2300mを越える高地をどう感じたか?

 小林可夢偉は、「日曜日に入ってトレーニングしましたが、別に何も変わりませんでした。2300mといえばちょうど富士山の5合目辺りだと思います。僕は何度も富士山に登っているので、全然辛くなかったです」と言う。中嶋一貴も「別にこれといって……ただ、階段なんかを上ると少し息が切れるので、空気が薄いという感じはしますね。走行中ですか? 多少違うかも知れませんが、あまり感じませんね」と言う。アスリートはとにかく丈夫な身体を持っている。ちなみに筆者も普通に生活していると分からないが、階段を上ったり早足で歩いたりすると酸素が足りない感じになった。

 レースはご存じのように中嶋の乗る5号車がパワートレインに纏わる電気系トラブルでリタイア、小林の6号車は木曜日のアクシデントを克服して3位に入賞した。5号車のトラブルは、やはり空気の薄さによる冷却不足からくるトラブルではないかと見られている。通常リヤのブレーキを作動させているのはモーターだが、熱を持ちすぎたことがトラブルの原因になったと推測できる。しかし、6号車にはその兆候がまったく出なかったところを見れば、根本的な問題とは言えないだろう。

 6号車はタイヤの内圧が高すぎてグリップが良くなかった点を除けば、全体的に力強いレースが出来た。小林は「ロングランが全然できていなかったのでどうなるかと思ったが、タイヤの内圧の問題以外は順調に走ることが出来た。事故の後、ほとんどゼロから作りあげたクルマで3位入賞は嬉しかった。可能性としては2位も視野に入っていたけど、僅かに届かなかった」と言う。

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この記事について
シリーズ WEC
イベント名 メキシコ・シティ
サーキット アウトドローモ・エルマノス・ロドリゲス
記事タイプ 速報ニュース