SC導入とほぼ同時だった6号車のピットイン。“問題なくセーフ”判定になった理由とは
2019スーパーGT第5戦富士でGT500クラスの勝敗を分けた#6 WAKO’S 4CR LC500のピットストップ。セーフティカー導入とのタイミングがギリギリだったが、GTAによると“問題なくセーフ”だったという。
#6 WAKO'S 4CR LC500
Masahide Kamio
富士スピードウェイで行われた2019スーパーGT第5戦の決勝レース。GT500クラスでは#6 WAKO’S 4CR LC500がセーフティカー(SC)導入直前の絶妙なタイミングでピットインし、前回のタイに続いて2連勝を飾った。
ただ、このピットストップはSC導入のタイミングとちょうど重なっており「SC導入後にピットインしたのではないか?」と議論となった。しかし、レースコントロールでの検証結果は“セーフ”だった。
事の発端となったのは、105周目のメインストレートで#24 リアライズコーポレーション ADVAN GT-Rが白煙を上げてストップしたこと。停車直後にマシンから炎が上がり、翌106周目にSCが導入されることになった。
このSC導入の瞬間とほぼ同じようなタイミングで、当時2番手を走っていた6号車が3回目のルーティーンストップを敢行した。これで大きなアドバンテージを得た6号車は、レース再開後は2番手以下に1分以上もの大差をつけてトップを独走。前回の第4戦タイに続いて2連勝を飾った。
しかし、スーパーGTではセーフティカー中のピット作業は禁止とされており、従わなかった場合は60秒のペナルティストップが科せられることになっている。6号車のピットインとSCボードが出されるのがほぼ同時だったため、レースコントロールで検証が行われたが、判定は「6号車のピットインはSCボード提示前」というものだった。
これについて、GTA派遣役員として各レースでレースディレクターを務める服部尚貴氏に、この時の状況を訊いた。
「SCが出たらピットインはできないというルールがあるので、ギリギリのタイミングで入ってきた6号車について検証をしました」
服部レースディレクターは、そう説明した。
「ポイントとしてはSCボードが出た時点でセーフティカーラインのどっち側にいるか(ラインを通過する前か後か)? というところでした」
富士スピードウェイでは、昨年から各マーシャルポストにデジタル表示のフラッグパネルを設置し、さらに今年にはコントロールライン付近にある『Sega Sammyブリッジ』に大きなインフォーメーションパネルが設置された。
これらデジタルパネルでも、各フラッグやSCを知らせる表示がされるが、あくまでこれは“インフォメーション”であり、競技判定は各ポストのフラッグ対応およびSCボード提示のタイミングで判断されるという。
「これはブリーフィングでも言っていることですが、デジタルフラッグはあくまで“インフォメーション”であり、判定をする際には各ポストでのフラッグとSCボードが提示されたタイミングで判断をします。それを基準で見ると、6号車はセーフティカーラインを越えていて、ルールとしては問題なくセーフでした」
スーパーGTのスポーティングレギュレーションでも“付則-3”にSC運用規定が細かく明記されており、それによると「SCボードが提示されてからSCがピット入口に進入し、マーシャルポストで緑旗が振動表示される迄の間、すべての競技車両はピットレーンに進入することはできない。ただし、SCが出動した時にピット入口またはピットレーンに入っていた車両については、給油を含むピット作業が許される」とされている。
さらに、ピットインしたことを判定する基準となっているセーフティカーラインがどこにあったかも、忘れてはならないポイントだ。富士スピードウェイではピット入り口側に設置されている「第1セーフティカーライン」は、ちょうど24号車が止まったゼブラゾーンより最終コーナー側に設けられている。
また服部レースディレクターによると、ボタン操作で行うデジタルパネルのSC表示と、コントロールタワーから無線連絡での対応となる各ポストでのSCボード提示には、数秒の時差ができてしまうとのこと。今回もインフォメーションパネルのSC表示が約2秒ほど早かったという。
ちょうどこの瞬間が公式映像に映り、6号車がSC導入後にピットインしてきたのではないかと思い込む人が多く発生した原因となったようだ。
その点も踏まえ、服部レースディレクターは当時の6号車の具体的な位置関係を、このように説明した。
「映像で見ると、SCが出た後にピットインしたように見えます。我々はフラッグとボードで見ていましたが、確かにインフォメーションの『SC』表示が出たタイミングだと、6号車はセーフティカーラインの外側にいました。そこからピットに入ってきて、フラッグとボードが出た時はセーフティカーラインを越えた後でした」
この時のピットインの状況について、6号車の阿部和也エンジニアはピットインの指示を出しつつも「ピットレーンクローズになっていないか、ちゃんと確認してからピットに入ってきて!」とドライバーに伝えたとのこと。それに対し、6号車をドライブしていた山下健太も、マーシャルポストでSCボードが出ていないことを確認した上で、ピットレーンに進入したと、記者会見で語った。
今回の500マイルレースで議論を呼ぶ一件ではあったが、結論としては“全く問題なし”だった。しかし、そのピットインがあと1~2秒でも遅かったらピットレーンはクローズ状態になっていた。それだけに、今回の6号車のピットインは、まさに“絶妙のタイミング”だったと言えるだろう。
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