【F1メカ解説】Z字型フロア、すでにトレンド化……しかし、大きく異なる各チームの解決策
フロアの面積が縮小されることになった2021年のF1。最大限のフロア面積を確保するならば、フロアの後方は斜めに細い形状になるはずだが、効果的にダウンフォースを生み出すべく、各チームの頭を悩ませた。その結果としてトレンド化しつつあるのがZ字型のフロアだ。
Shaped floors comparison
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2021年シーズンのF1マシンは、ダウンフォース量の10%削減を目指し、フロアの面積がテクニカルレギュレーションにより縮小されている。これには、現時点でふたつの解決策があるようだ。
レギュレーションでは、コクピットの後端から後ろに位置するフロアは、徐々に細していくことが求められている。つまり、最大限の面積を確保しようとすれば、フロアの端が斜めに切り取られる形となるわけだ。
ただ、必ずしもその斜めの形状にしなければいけないというわけではない。その斜めのラインの外にフロアが存在しなければいいわけだ。
この結果、2021年の各F1マシンのフロア形状を見ていくと、2種類のデザインが存在することが分かる。ひとつは、レギュレーションで許された最大限のフロア面積を確保するため、後方に向かってフロアが細くなっていくデザイン。もうひとつは、Z字型の切り欠きを設けることで、フロアの面積を最大限よりも小さくしたデザインだ。
プレシーズンテストを終えた段階では、後方が斜めに切り取られたデザインのフロアが、10チーム中6チームに採用されていた。しかし第2戦エミリア・ロマーニャGPのマシンを見ると、7チームがZ字型のフロアを使用。形勢が逆転した。
Ferrari SF21 floor
Photo by: Giorgio Piola
フェラーリは、フロア後端部分に3枚のウイングレットを装着。そしてZ字型の段差の部分には、大型のストレーキを設けた(矢印の部分)。
このストレーキは、Z字型のフロアを持ついずれのマシンにも装着されている。ただその形状は様々で、長いものや細かく分割されているものなど、多岐にわたる。しかしマシンの外側に気流を向けるような方向でストレーキが取り付けられているのは共通だ。
Z字型の切り欠きを設けることで、マシン後端のフロアを車体中心線と並行にできる。これにより、各チームのエアロダイナミキストは、以前と同様の処理を行なうことができるようになる。
この結果、前述の通りフロアの総面積は削減される。しかしフロアを斜めにすることで、気流やフロア下の圧力分布の方向性が誤っていれば、面積を広く確保できても、何のメリットもないわけだ。
AlphaTauri AT02 floor detail
Photo by: Giorgio Piola
昨年までは、各チームともフロアの端に様々な形のスリットを設け、ここに空気を通して、フロア下のダウンフォースを発生させるための気流を守るエアカーテンを生み出していた。しかし今季はレギュレーションによりこのスリットを設けることができなくなったため、様々な解決策を講じてきた。昨年と同じ幅のフロアが許されている前方部分には、各チームが様々なフィンを設けてきた。上のアルファタウリのマシンはその一例だが、これを活用して、フロア下の気流を保護しているはずだ。またZ字型になったフロアの尖った部分でも空気の渦を生み出し、エアカーテンと同様の効果を狙っているモノと見られる。
興味深いのは、フェラーリはフロアの細くなった部分に、フィンを立てていないことだ。一方で同じZ字型のフロアを使うウイリアムズは、細くなった部分はそれでも斜めの形状となっており、その中間地点にはフィンが複数立てられている。これは、望ましい空力効果を得るためには、このフィンがどうしても必要だったということなのだろう。なおウイリアムズのマシンには、Z字型に段差がつけられた部分にもフィンが存在しており、これが細かく3分割されている。
Z字型フロアと言っても、その解釈はそれぞれ。本稿のメイン写真をご覧いただければ、様々なアプローチが存在するのがお分かりいただけるはずだ。
Z字に切り欠いた後は、車体中心線と並行にフロアを構築しているチーム。Z字型のフロアを取り入れながらも、斜めの切り取り線がそのまま残されているチーム。フィンの数、その設置場所……それぞれのマシンが異なる解決策を見出してきている。
とはいえ少なくとも現時点では、Z字型のフロアがトレンドになりつつある。3チーム(マクラーレン、アルファロメオ、ハース)はまだこのZ字型を採り入れていないが、おそらく彼らも様々な検証を行ない、今後何らかの形でZ字型のフロアを投入してくることになるのではないだろうか?
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