クラッチロー、出場停止中のビニャーレス再び擁護「彼は危険なライダーじゃない」
ヤマハのテストライダーであるカル・クラッチローは、現在レース出場をヤマハから停止されているマーベリック・ビニャーレスについて、“危険なライダー”だとは思わないとした上で、再度その才能が素晴らしいものだと語った。
写真:: Gold and Goose / Motorsport Images
MotoGP2021年シーズン後半戦は、バレンティーノ・ロッシの引退発表という衝撃的な形で幕を明けたが、その1週間後のオーストリアGPではマーベリック・ビニャーレスが所属するヤマハから出場を止められるという別の衝撃的な事態となった。
ヤマハは前戦スティリアGPの決勝レースにおいて、ビニャーレスがエンジンを故意にオーバーレブさせ、破損させようとしていたとテレメトリーなどの分析から認定。自分だけではなく、周囲のライダーも危険に晒す可能性があったとし、一連の処分を行なった。
発表以来口を閉ざしたままだったビニャーレスだが、翌14日に彼はチームに対し謝罪。ただ他のライダーを危険に晒す意図はなかったと釈明もした。ビニャーレスは既に2021年限りでのヤマハ離脱を公表済みだったが、スティリアGPやここ最近の全体的な状況にフラストレーションが溜まっていたと口にしている。
今シーズンからヤマハのテストライダーに就任したカル・クラッチローは、今後ビニャーレスの代役になるのではないかとも囁かれていたが、現時点で確約されたモノは無いと噂を否定した。
クラッチローはさらに、“感情を抑えるのに苦労しているライダー”と一緒にコースを走っても、問題ないと感じるかどうかと尋ねられた。ただこの点については、クラッチローはビニャーレスを擁護している。
Maverick Vinales, Yamaha Factory Racing
Photo by: Gold and Goose / Motorsport Images
「まあ当然、マーベリックについての話になるわけだけど……僕は大丈夫だと信じている。マーベリックが来週バイクに乗っても、彼は普段通り速いだろう」
クラッチローはそう語る。
「それが現実なんだ。彼は突然『よし、ブレーキを10メートルか20メートル遅らせよう』なんて言う人間じゃない」
「彼は危険なライダーではない。良いライダーであるのは確かだ。別の所でも話をしたけど、彼はチャンピオンシップでもトップ3に入る才能あるライダーで、何年もそうだった」
「彼が何をすべきか、それは僕が口を挟むべきことではない。でも僕が彼とまたコース上で(一緒に走って)快適に思えるか? そう訊かれたら答えはイエスだ」
またクラッチローはMotoGPで走るライダーが感じている重圧についても言及しており、誰もがフラストレーションを抱えていると語った。
「MotoGPでレースをするのは、いつだって特権的なモノだ。僕らはここで走る栄誉を得ている。それはパドックほぼ全体が感じているだろう」
「MotoGPで走るチャンスを得ているライダー達は、誰よりも栄誉を受けている。僕も長年それを楽しんできた」
「ただ、僕らはみんなフラストレーションも抱えている。この仕事は世界でも最高の仕事だけど、最も厳しい仕事でもある。多くの場合、プレッシャーは自分自身から来ている」
「だけど周囲の人々などからプレッシャーがかかるようになると、10倍は悪化する。ライダーとして最も批判的なのは自分自身なんだ」
「だからそうした状況にも対処しなくてはいけない。感情や他のことをマネジメントしなければいけないんだ」
「でも時には自制心を失って、ヘルメットも何もかも投げ捨ててしまうことがある」
「だけどそれは人に対してじゃない。状況に対してなんだ。僕らはコース上では互いにリスペクトしているからこそ、難しい状況だ」
「僕らは互いに争っていることを理解しているし、ハードな動きもする」
「でも一緒にレースをしているライダーとは安心してやっていくことが必要だ。僕はMotoGPのグリッドを一瞥して、『コイツが後ろに、前に居たらやだな、バトルしたくないな』とか考えたことは一度もない。僕らは自分たちが何をしているのかを分かっているし、信じているからね」
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