2022年F1の”飛び道具”はフレキシブルフロア? しかし悪用が疑われれば、FIAが対処に動くと警告
2022年のF1マシンのパフォーマンスを、ライバルに先んじて向上させるための”飛び道具”は、フレキシブルフロアなのではないかと言われる。しかしFIAは、悪用されていると感じた場合、それに対処するのを躊躇しないという。
写真:: Mark Sutton / Motorsport Images
FIAは、F1チームがレギュレーションの抜け穴を突き、それを悪用しているように感じられた場合には、その使用を禁止するよう規則を変更することを躊躇しないと語る。今シーズンの場合その”抜け穴”は、フレキシブルフロアなのかもしれない。
テクニカルレギュレーションが大変更された2022年のF1。今回のようにレギュレーションが大きく変わった場合には、その抜け穴を探し、パフォーマンス向上に活かそうとするチームが数多く出るものだ。
FIAやF1は、今回のレギュレーション変更では、そういった抜け穴はないはずだと自信を持っているものの、「絶対にないとは言えない」とも明かしている。
今シーズンの場合、その”抜け穴”はフレキシブルフロアにあるかもしれない。
今季のF1マシンは、レギュレーション変更によりフロアの形状が変化。昨年までのフラットボトムから、ベンチュリトンネルを備えた”グラウンド・エフェクトカー”に変わった。このベンチュリトンネルの空気を通すことで、多くのダウンフォースを生み出すわけだ。
各チームは新レギュレーションへの理解を深めていくに連れ、このベンチュリトンネル内の空気の流れをうまく活用することで、大きなメリットがあることに気付くことになった。
その解決策のひとつが、昨年までよりもはるかに硬いサスペンションのセットアップが必要であるということだった。
さらに何らかのトリックを使い、フロアの端を曲げることで、ベンチュリトンネルのパフォーマンスを向上させることができる可能性もあるということもわかってきた。フロアの端がマシンの側面方向にたわむと、フロア下を”密閉”することができ、より効率的にグラウンド・エフェクト効果を生むことができる。これは、1970年代のグランド・エフェクトカーが、車体側面のフロア部分にスカートを取り付けていたのと同じ考え方だ。
FIAは、一部のチームがこの部分の開発を進めてくる可能性があることを認識している。しかし実際に何が行なわれているかを常に監視し、不正が行なわれているのを見つけたらすぐに対応するとしている。
FIAのシングルシーター部門の責任者であるニコラス・トンバジスは、次のように語っている。
「ディフューザーやフロアの端を下に向けて曲げる場合、我々は常に、柔軟性の面に目を光らせている。そして必要に応じて、その影響を軽減するための検査を実施する」
「新しいレギュレーションが導入されたことにより、柔軟性の面では正しく予測できなかった領域がいくつかあるかもしれない。それは避けられないことだ。そしてそれが進行していくにつれ、我々は監視を強化しなければならないかもしれない」
「それについて躊躇することはない。レギュレーションでは、ある部分で悪用されているのを見つけた場合、我々が介入することが許されている」
F1のマネージングディレクターであるロス・ブラウンも、昨年起きたフレキシブル・リヤウイングのような問題が再び起きた場合、チームが巧妙なトリックを使って逃げ切る可能性は低いと考えている。
「空力での柔軟性の問題は、F1では避けられないことだと思う」
そうブラウンは語る。
「それは、とても長いこと存在し続けていることだ。エンジニアが、マシンの様々な部分に柔軟性を組み込むことで得られるパフォーマンスの向上について評価を始めた時からね」
「これはFIAが常に把握しなければならないことだ。そしてレギュレーションにより、FIAが迅速に対応することが可能になっている。また分析できる全てのことから、各チームが何をしているかをすぐに把握することができる」
「写真やビデオの分析、そしてその他あらゆる種類の物で、各チームはお互いを監視し合っている状況だ。これまでのシーズンでも、リヤウイングで様々な騒ぎが起きたのを思い出すと、彼らはお互いに、監視し合っているんだ」
「問題があると分かった瞬間、彼らはすぐに手を挙げてくれる。そのためFIAは、懸念があることをすぐに知ることができ、とても迅速に対処できると革新している」
前述の通り、グラウンド・エフェクトカーのパフォーマンスを発揮するためには、車高をできる限り安定させる必要がある。つまり、サスペンションのセッティングを非常に硬くしなければならない。これにより、ドライバーにかかる負担は相当なモノになる可能性がある。
しかしトンバジスは、これについてはあまり心配していないという。
「我々は、マシンが必要なパフォーマンスを発揮するためには、低く、路面に近づく必要があることを理解している」
そうトンバジスは語る。
「結果として、これまでのマシンよりも硬いサスペンションセッティングで走る必要がある。ただこれまでのマシンの何台かは、大きなレーキ角を持って走っていた。それはおそらく、過去のモノになるだろう」
「乗り心地や楽にドライブするということは、必ずしもF1で維持する必要があるモノではないと思う。我々はドライバーに、”違い”を生み出してもらいたいと思っているし、マシンもドライブが難しく、簡単ではないことを望んでいる。もちろん、これまでだって簡単にドライブできるモノだったわけではないけどね。マシンをもう少しアグレッシブにドライブするための側面は、とても重要だと思う」
「我々が目を向け続けていかなければならないことだとは分かっている。しかし、それが重大な懸念の原因になるとは思わない」
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