Nostalgia

F1 日本GP

あれから30年……セナ・プロの接触が世界に衝撃を与えた|1989年日本GP

1989年10月22日、モータースポーツ界を揺るがす大きな事件が起きた。マクラーレン・ホンダのアラン・プロストとアイルトン・セナが、日本GP決勝で同士討ち。FIAも関与する事態となり、数カ月間にわたる論争の引き金となったのだ。

Charles Bradley

Charles Bradley

編集: 2023/05/09 6:53

Copy link

Facebookでシェアする

Twitterでシェアする

WhatsAppでシェア

Linkedinでシェアする

Pinterestでシェアする

Viberでシェア

Google検索でmotorsport.comをお気に入り登録

Alain Prost, McLaren, Ayrton Senna, McLaren

 30年前の昨日、それは起こった。1989年10月22日(日)、鈴鹿サーキットで行われていたF1日本GPの決勝レース47周目、シケインでマクラーレン・ホンダのチームメイト同士、アイルトン・セナとアラン・プロストが接触したのだ。

Read Also:

 この事件はその年のタイトルを決するだけでなく、その後数年間にわたって巻き起こった論争の火種となった。

 何が起きたのか……単純に言えば、プロストが文字通り、セナをブロックしたということだ。しかしプロストのそのシケインでの動きは、セナ自身、あるいはミハエル・シューマッハーが後に見せたような”冷酷”とも言えるものだった。

 この事件には布石があった。4月に行われたサンマリノGPの決勝レースで、セナが事前の協定を破り、プロストを抜いてしまった。この件により、ふたりの確執は表面化したのだった。その前年、ポルトガルGPでは互いにマシンを寄せ合う”幅寄せ”事件も発生していた。才能溢れるふたりの関係は、悪化の一途をたどっていたのだ。

 現在の基準に照らし合わせれば、それほど大したことではないのかもしれない。しかし1988年、チームメイトに対するセナのコース上での動きは、容認される基準をはるかに超えるものだった。

 1989年の鈴鹿に話を戻そう。同年のプロストは、ドライバーズランキングで快適なリードを築いていた。セナはマシントラブルに見舞われることも多く、さらにポルトガルGPでは黒旗を無視して走り続けたナイジェル・マンセル(当時フェラーリ)と接触してリタイア……痛恨の無得点に終わるなど、プロストに16ポイント及ばない状態で日本GPを迎えた。

 しかし予選で圧倒的な速さを見せたのはセナだった。セナは同じマシンに乗るプロストに対し、なんと1.7秒もの差をつけてポールポジションを獲得。今年の日本GPで言えば、予選Q1で首位シャルル・ルクレール(フェラーリ)と16位ダニエル・リカルド(ルノー)の差が1.4秒……セナのアタックラップは、それ以上の差を2位に対して付ける、圧倒的な速さだったのだ。

 ただプロストは別のことを考えていた。週末の間中、予選のパフォーマンスは捨て、決勝に向けて最適なセットアップを探ることに取り組んでいたのだ。最高速を上げるために、リヤウイングのガーニーフラップを取り外すこともした。

 日本GPのポールポジションはイン側。そのためレコードライン上にあるのは2番グリッドの方だった。プロストはこれを活かし、スタート直後にセナの前に立つことに成功した。そしてセットアップが効果を発揮し、プロストが優位にレースを進めることになった……少なくともピットストップまでは。

 しかしセナは徐々に速さを取り戻し、レース終盤にはプロストの背後へ。そして、厳しいプレッシャーをかけた。

 ただ、プロストのマクラーレンMP4/5は、空気抵抗が少なく、直線スピードが伸びる。セナのように抜群のオーバーテイクセンスを持つドライバーであっても、攻略するのは至難の技だった。

 そして残り6周、セナの忍耐力が切れた。セナは長い距離が開いていたにも関わらず、シケインでプロストのインに飛び込み、フロントホイールをプロスト車のコクピットに並べた。減速率は両者ほぼ同じ……しかしプロストはシケインに向けて切り込んだ。プロストは自身の言葉に忠実に、マシンを動かしたように見えた。「もうドアを開けるつもりはない」と。

 2台のマシンは絡み合うようにしてシケインにストップ。プロストはサスペンションもしくはステアリングが壊れたのを確認し、すぐにマシンを降りた。一方のセナはフロントウイングにダメージを負ったものの、マーシャルにマシンを押すように促した。そして押しがけの要領でエンジンを再始動することができた。

 セナはシケインをショートカットする形にはなったものの、コースに復帰することができた。そしてフロントウイングを交換するためにピットストップを行わざるを得なかったものの、ベネトンのアレッサンドロ・ナニーニを抑え、トップチェッカーを受けることになった。

 しかしその勝利はスチュワードによって認められなかった。スチュワードは、シケインをショートカットしたセナを失格処分としたのだ。ショートカットしたことによるタイム短縮のメリットよりも長く、コース上に止まっていたにも関わらずだ。

 その週の英国Autosport誌の表紙には「世界タイトルをめぐる内紛」というキャッチが踊った。そして同誌に掲載されたナイジェル・ルーバックが寄稿したレポートの見出しも「ホンダランドの悪意」となっていた(鈴鹿サーキットの運営会社はかつて、ホンダランドという名称だった)。

 マクラーレンはこの裁定に抗議した。チームは、どちらかのドライバーの肩を持っていたわけではなく、あくまで勝利がかかっていたため、裁定に不服を申し立てたのだ。しかし結局は、プロストのチャンピオン獲得が決まっただけでなく、セナに罰金10万ドル(現在のレートで約1100万円)と、6ヵ月の出場停止処分が科される可能性もあった。

 セナはその裁定を「チャンピオンシップの恣意的操作」だと公然と批判。当時FIA会長を務めていたジャン-マリー・バレストルとの論戦へと発展した。FIAは1990年のセナへのスーパーライセンス発給をなかなか認めず、これも論争激化に拍車をかけた。

 結局セナはスーパーライセンスを手にすることができたものの、その1990年はふたりの間にさらなる事件が起きることとなる。しかも、またしても舞台は鈴鹿だった。その一件は、モータースポーツ界を再び揺るがすことになった……でもそれは、また別の話だ。

Read Also:

あなたの意見が聞きたい!

Motorsport.comで何を見たいですか?

5分間のアンケートにご協力ください。

- Motorsport.comチーム

コメントを読んで投稿する

関連ニュース :

記事をシェアもしくは保存

Copy link

Facebookでシェアする

Twitterでシェアする

WhatsAppでシェア

Linkedinでシェアする

Pinterestでシェアする

Viberでシェア

前の記事 F1メカ解説:メルセデスが鈴鹿で見せた”反撃”

次の記事 ルノー失格でクビアトが日本GP入賞、トロロッソがランク5位に接近。ルノーは控訴検討

Top Comments

コメントはまだありません。 最初のコメントを投稿しませんか?

View More & Comment

More from

Charles Bradley



ミカ・ハッキネンが生死を彷徨った30年前の大事故。速さは失わなかったが、短命F1キャリアのきっかけに「もう運試しはやめようと思った」

F1

F1 10 ヵ月前

ミカ・ハッキネンが生死を彷徨った30年前の大事故。速さは失わなかったが、短命F1キャリアのきっかけに「もう運試しはやめようと思った」



”空力の鬼才”の名は伊達じゃない! エイドリアン・ニューウェイが手掛けたF1マシン傑作選

F1

F1 2024/09/10

”空力の鬼才”の名は伊達じゃない! エイドリアン・ニューウェイが手掛けたF1マシン傑作選



目まぐるしく変わるアロー・マクラーレンのドライバー……悪評は全てパロウのせい? ブラウンCEOが指摘「あの契約問題で不当なレッテルがついた」

IndyCar

IndyCar 2024/07/30

目まぐるしく変わるアロー・マクラーレンのドライバー……悪評は全てパロウのせい? ブラウンCEOが指摘「あの契約問題で不当なレッテルがついた」

More from

Alain Prost



混戦のタイトル争いは面白い! F1史で12回あった三つ巴&四つ巴の最終戦……その結末を振り返る

F1

F1

アブダビGP

8 ヵ月前

混戦のタイトル争いは面白い! F1史で12回あった三つ巴&四つ巴の最終戦……その結末を振り返る



【F1特集】あなたはいくつ知っている? ブラジル最多12勝のマクラーレン、歴代勝利をプレイバック

F1

F1

サンパウロGP

10 ヵ月前

【F1特集】あなたはいくつ知っている? ブラジル最多12勝のマクラーレン、歴代勝利をプレイバック



FIAスレイエム会長、今もプロストに”毎日”寄せられる誹謗中傷への対処を約束「この状況を悲しく思う」

F1

F1 2025/03/10

FIAスレイエム会長、今もプロストに”毎日”寄せられる誹謗中傷への対処を約束「この状況を悲しく思う」

More from

マクラーレン



苦しむ今季のピアストリ……ノリスとは圧倒的な差。スペインGP予選でも完敗「リセットボタンを押してやり直したい」

F1

F1

スペインGP

1 日前

苦しむ今季のピアストリ……ノリスとは圧倒的な差。スペインGP予選でも完敗「リセットボタンを押してやり直したい」



ノリスの“最高傑作”が出た? 最速ではないはずのマクラーレンで鮮烈なPP。ステラ代表「450戦見てきた中で最も印象的」と絶賛

F1

F1

スペインGP

1 日前

ノリスの“最高傑作”が出た? 最速ではないはずのマクラーレンで鮮烈なPP。ステラ代表「450戦見てきた中で最も印象的」と絶賛



マクラーレン、スペインGP最大の問題はグレイニング? ピアストリ「タイヤマネジメントは悪夢だった」

F1

F1

スペインGP

1 日前

マクラーレン、スペインGP最大の問題はグレイニング? ピアストリ「タイヤマネジメントは悪夢だった」

最新ニュース



「無事に戻って来れてラッキーだった」ブレーキペダルが底に……ハミルトン、市街地コースで危険なトラブル発生。序盤にガレージへ

F1

F1 F1

スペインGP

4 分前

「無事に戻って来れてラッキーだった」ブレーキペダルが底に……ハミルトン、市街地コースで危険なトラブル発生。序盤にガレージへ



痛恨の転倒ベッツェッキ「本当に辛い。ミスで転んでしまった」タイトル争いは33ポイント差に後退

MotoGP

MGP MotoGP

サンマリノGP

1 時間前

痛恨の転倒ベッツェッキ「本当に辛い。ミスで転んでしまった」タイトル争いは33ポイント差に後退



ホンダ、F1パワーユニット開発体制を変更! 深尾洋一郎氏が新LPLに就任「次世代への技術継承を見据えた移行」

F1

F1 F1

スペインGP

1 時間前

ホンダ、F1パワーユニット開発体制を変更! 深尾洋一郎氏が新LPLに就任「次世代への技術継承を見据えた移行」



序盤の“2ポジション返還”がなければ、フェルスタッペンはマドリンク初代勝者になっていた? レッドブル代表は「今日は2位が最高の結果」と否定

F1

F1 F1

スペインGP

4 時間前

序盤の“2ポジション返還”がなければ、フェルスタッペンはマドリンク初代勝者になっていた? レッドブル代表は「今日は2位が最高の結果」と否定

Subscribe and access Motorsport.com with your ad-blocker.

フォーミュラ 1 から MotoGP まで、私たちはパドックから直接報告します。あなたと同じように私たちのスポーツが大好きだからです。 専門的なジャーナリズムを提供し続けるために、当社のウェブサイトでは広告を使用しています。 それでも、広告なしのウェブサイトをお楽しみいただき、引き続き広告ブロッカーをご利用いただける機会を提供したいと考えています。

次の 2 つのオプションがあります。

購読中 すでに購読していますか? ここからサインインします

広告ブロッカーを無効にしましたか?
ページをリロード

お知らせの管理

登録