F1メカ解説|スペシャルパーツはないけれど……特別なモナコで求められる特別な対策
モナコGPの舞台である市街地コースで成功を収めるためには、そのユニークなコース特性に合わせた変更が必須となる。
写真:: Giorgio Piola
2022年のレギュレーションでは、予算制限の影響で”モナコスペシャル”のようなワンオフ空力アップグレードを行なうのはほぼ不可能となった。そのため、多くのチームはF1モナコGPを戦う上で、前戦スペインGPに持ち込んだハイダウンフォース仕様のパーツを使用した。
しかし、バリアに囲まれたモンテカルロ市街地コースに対応するためには、他のカレンダーにはない多くの変更が必要だった。
特にステアリングとフロントサスペンションは変更が必要なエリアだ。フェアモント(旧ロウズ)・ヘアピンを含む、このコースに対応するため6チーム以上が新しいコンポーネントを設計している。
Red Bull Racing RB18 steering assembly (ARROW)
普段はカーボン製のカバーに覆われている、レッドブルのステアリングアッセンブリーの貴重なショット。このレイアウトを実現するために、ノーズコーンを切り欠いている(挿入図、黄色のライン)。
これはモナコ独特というわけではないが、各F1チームはフロントウイングおよびノーズが破損してもすぐに交換できるように工夫を凝らしている。
赤い矢印は、シャシー側のバルクヘッドにつけられているスタッドと、ノーズ側にあるカム式の固定具を示している。メカニックは工具を使って固定具を回転させ、ノーズの脱着を行なっている。
昨年まで、フロントにプッシュロッド式のサスペンションを採用していたレッドブルは、サスペンションのロワーウィッシュボーンがステアリングアッセンブリーの下を貫通していた。
今季のRB18はプルロッド式のサスペンションをフロントに採用したが、アッパーウィッシュボーンの前方アームにその特徴が活かされている。
Red Bull Racing RB16 front suspension
Photo by: Giorgio Piola
冷却対策もモナコ仕様に
モナコは低速サーキットであるため、マシンに当たる風も少ない。そのため、冷却に関してもチャレンジングである。
レッドブルの場合、フロントブレーキダクトのインレットを拡大し、冷気の流入量を増加させた。2022年のレギュレーションで新設されたリヤのアウトレットも、内部で発生する熱を排出しやすくするために拡大された。
メルセデスも同様で、アウトレットのサイズを変更することでアセンブリ内の流量を増やし、低速走行時のブレーキディスクとキャリパーの冷却に役立てた。
Red Bull Racing RB18 extra brake cooling detail
Photo by: Giorgio Piola
Mercedes W13 brake duct exit detail
Photo by: Giorgio Piola
多くのチームがフロントの冷却性能向上に注力する中、マクラーレンはリヤブレーキのダクトを変更し、発生する熱の排出を改善した。そのため、フリー走行では緑のフロービズペイント(下図)を塗って、期待通りのパフォーマンスを発揮しているかを確認した。
しかし、マクラーレンが冷却に関して用意したのはこれだけではなかった。マクラーレンはイベント前のマシンプレゼンテーションの資料で、2種類のルーバーパネルを評価することを明記していたのだ。
Daniel Ricciardo, McLaren MCL36
上の画像でわかるように、チームはマイアミGPの時(図の円内)よりも大きなルーバーパネルをコックピットの横に使用している。チームはボディーワークを置き換えることで、冷却性能と引き換えにどれだけ空力効率を高める用意をしているかが分かるだろう。
冷却パネル内側の角に合わせるように、コックピット前方のガイドベーンが設けられているのが分かる。両者が一体となって気流をコントロールし、サイドポッド内部から空気を引き抜くことで熱を奪っていることにも注目すべきだろう。
McLaren MCL36 cooling panel comparison
また、レッドブルはモナコGPでは冷却ルーバーのパネル全体をオープンにした(トップ画像)のに対し、マイアミGPではフロント部分をブランキングパネルで塞いでいる(下)。これはチームにとって空力性能と冷却性能のトレードオフがいかに重要かを示している。
Sergio Perez, Red Bull Racing RB18
Photo by: Glenn Dunbar
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