F1由来の超高性能市販車『メルセデスAMG ONE』の製造がスタート。熟練工の”手作業”で組み立てられる芸術品
メルセデスF1で開発された技術がふんだんに活かされた市販車”メルセデスAMG ONE”の製造がスタート。合計275台が、熟練の職人の手により組み立てられていく。
メルセデスAMGがフランクフルト・モーターショーで”Project One"のコンセプトを発表してから5年。この車両の生産がようやくスタートした。
ハイパーカー”メルセデスAMG ONE”は、合計275台の限定生産モデル。PU106Cと名付けられた、F1用パワーユニットをベースとした1.6リッターV6ターボのエンジンを搭載しているが、このエンジンを排ガスおよび騒音規制に適合されるのに時間を要したため、開発が遅れていた。しかしこのほど、ようやく生産がスタートした。
車両はイギリスのコベントリーにあるAMGのファクトリーで組み立てられ、その組み立ては全て手作業。4つの電気モーターを備えたハイブリッド・パワートレイは、ブリックワースのメルセデスAMG ハイパフォーマンス・パワートレイン部門(HPP)で製造されている。このHPPは、F1のパワーユニットの開発と製造を手掛けるのとまさに同じ部門である。
車両の組み立てにあたっては、メルセデスAMGはマルチマチックとの提携により、特別な生産施設を設立。50人のスタッフが生産に関わり、その工程で16の組み立てステーションとテストステーションを通過する必要があるという。
組み立てが完了したマシンは、隣接する試験場で走行試験が行なわれ、熟練のテストドライバーによってゴーサインを出すかどうかが判断される。
全てのテストに合格したマシンには保護ラップが巻かれ、トラックに積み込まれてAMGの本社に輸送される。車両のオーナーはここで実車の引き渡しを受け、専門家からのブリーフィングも同時に受けることになる。
メルセデスAMG ONEは四輪駆動であり、11,000rpmを誇るF1由来の非常に複雑なエンジンを搭載しているが、それでもEURO6の排ガス規制を満たした。このシングルターボV6エンジンは、単体で566馬力を発生。アイドリング時の回転数は1,200rpmである。F1マシンのアイドリング時の回転数は5,000rpmであることを考えれば非常に低い数値となっているが、ここが開発中の最大の頭痛の種だったようだ。ただ、最終的には開発の結果、アイドリング時の回転数を3,800rpm引き下げることに成功し、排ガス規制をクリアすることができたという。
4つのモーターのうちふたつは、左右の前輪にひとつずつ取り付けられている。このふたつで合計322馬力を発揮するようだ。3つ目のモーターはエンジンの隣にあり、161馬力をクランクシャフトに送るという。また、4つ目のモーターはターボチャージャーに接続され、121馬力をさらに加えるという。
これらのモーターで使われる電気エネルギーは、8.4kWhのリチウムイオンバッテリーパックに充電される。この電気エネルギーだけで、約18kmを走行できるようだ。またトランスミッションは、AMG One専用に開発された7速自動マニュアルトランスミッションである。
停止状態から100km/hまでの加速は2.9秒と、それほど印象的なものではない。しかしながら200km/hまでの加速は脅威の7秒! さらにその後もスピードは伸びていき、最高速は352km/hである。まさに脅威的なパフォーマンスであり、市販車でのニュルブルクリンク最速の座を手にするのも、時間の問題だろう。
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