F1 オーストリアGP

モナコGPの結果はまだ決まらず……マクラーレンとレッドブルが申し立てた再審請求は、どんな手順で行なわれるのか?

マクラーレンとレッドブルは、F1モナコGPの決勝レースでピエール・ガスリー(アルピーヌ)に科されたペナルティが取り消されたことについて控訴している。この件は、どんな問題をはらんでいるのであろうか?

Filip Cleeren

Filip Cleeren

編集: 2026/06/25 9:31

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Lewis Hamilton, Ferrari, George Russell, Mercedes, Pierre Gasly, Alpine

 F1モナコGPでは、3番手でフィニッシュしたアルピーヌのピエール・ガスリーが、レース後に5秒加算ペナルティを2回分科されたことで7位に降着となった。アルピーヌがこれに抗議し、最終的にペナルティが撤回……3位を取り戻すことになった。しかしマクラーレンとレッドブルは、ガスリーのペナルティが取り消されたことに対して異議を申し立て、現在はその審理の日程を待っているところだ。

 今回の件は今後どんな経緯を辿っていくのか? そしてどんな問題を秘めているのだろうか?

■今回の一件の経緯

 2026年のF1モナコGPでは、ピットレーンの制限速度を違反したとして、複数のドライバーにペナルティが科された。ペナルティ対象となったのはガスリー、フランコ・コラピント(アルピーヌ)、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)、ジョージ・ラッセル(メルセデス)、ルイス・ハミルトン(フェラーリ)である。このうちガスリーは、ピットレーンの制限速度を2回違反したとして、合計10秒(5秒2回)のタイム加算ペナルティを受けることになった。

 ガスリーはこの結果、3番手でフィニッシュしたものの7位に降着となった。

 アルピーヌはガスリーが速度違反を問われ、ペナルティを科されたことに対して抗議。検証の結果、ピットレーン入口における速度計測にミスがあったことが発覚し、スチュワードはガスリーに科されたペナルティを取り消すことを決定。結局ガスリーは3位に復帰し、レッドブルのアイザック・ハジャーは4位に後退することとなった。またピアストリも、ペナルティを消化したことで順位を落とした。

 この結果レッドブルとマクラーレンは、ガスリーへのペナルティが撤回されたことについて控訴する手続きを開始することを決めた。

■マクラーレンとレッドブルは、どういう点について控訴したのか?

Oscar Piastri was bumped down after Pierre Gasly's penalties were rescinded

Oscar Piastri was bumped down after Pierre Gasly's penalties were rescinded

Photo by: Alastair Staley / LAT Images via Getty Images

 マクラーレンは6月16日(火)に、モナコGPのスチュワードによるガスリーへのペナルティの撤回およびレース結果とランキング順位の更新に関する文書99、100、101に対して異議申し立てを行なうことを発表した。

 今回スチュワードがペナルティを撤回したことで、ガスリーがレース中にペナルティを消化しなかったことが利益に繋がった一方で、ピアストリをはじめとしたドライバーたちがレース中にペナルティを消化したことで、ペナルティ撤回の対象にならなかったという点を問題視している。

「我々はFIAの司法手続きとスチュワードの役割について全面点に尊重する。しかし今回の件は、このスポーツの公平性、規則の一貫性、そして競技の公正性に関して重要な問題を提起するモノだと考えている」

 マクラーレンは声明でそう述べている。

「ペナルティが取り消されたことで、ルールとスチュワードの決定に従って行動した一部の競技者が不利な立場に置かれる状況が生じている。このような結果は、競技の上での不公平性を生み出し、FIAの競技規則の一貫した適用に対する信頼を損なう恐れがある」

 レッドブルも、スチュワードによる”ペナルティ撤回”という決定がF1に及ぼす影響を懸念し、修正されたレース結果に異議申し立てを行なった。

■この2チームの異議は、メルセデスの再審請求とは何が違うのか?

George Russell, saw his Monaco Grand Prix derailed after failing to serve his speeding penalty.

George Russell, saw his Monaco Grand Prix derailed after failing to serve his speeding penalty.

Photo by: Anni Graf - Formula 1 via Getty Images

 今回の裁定に懸念を抱いているのはマクラーレンとレッドブルだけではない。他の複数のチームも、ガスリーへのペナルティが撤回されたことによって生じた混乱に対して、公式/非公式問わず不満を表明している。

 モナコGPの件を受け、ピットレーンでの速度違反やその他の違反でペナルティを受けた場合、レース中に消化しないことを決断するドライバーが増えるのではないかと考えているのだ。これは、レース戦略にも大きな影響を及ぼすことだ。

 メルセデスは6月15日(月)、ラッセルが”不当な”タイム加算ペナルティを受けたことによって大混乱に陥って入賞圏外に終わったことを受け、独自の審査手続きを申請した。ラッセルはピットレーンの速度計測が誤っていたことで5秒のタイム加算ペナルティを受けたが、次のピットストップ時に正しく消化できなかったとしてドライブスルーペナルティを科されたのであった。メルセデスはこれを撤回する手段は何かないかと検討した。

 ただこの手続きと控訴とは異なり、当該チームは当時入手できなかった重要かつ関連性のある証拠を新たに提出しなければならない。

 メルセデスはFIAやF1の首脳陣と協議を行なったが、ラッセルに対するペナルティを撤回させるのは不可能であると判断し、申し立てを取り下げることになった。

「FIAおよびF1とその後の協議において、モナコGPで生じた特異な状況を検証し、その原因となった要因に積極的に対処するという彼らの強い決意が明らかになった」

 メルセデスはそう声明を発表した。

「この明確な意思を受け、我々は再審請求を継続することはチームにもこのスポーツにとっても決して利益をもたらさないと判断したため、申請を取り下げた」

■国際控訴裁判所とは?

 マクラーレンとレッドブルは、スチュワードによるガスリーへのペナルティ撤回という決断に対し、さらに一歩踏み込んだ控訴手続きを開始した。最初の一歩は控訴の意思表明を行なうことであり、それは最初の決定から1時間以内に行なわれなければいけない。その後両チームは、正式に控訴するかどうかを96時間以内に決めなければいけない。

 そして両チームは正式に控訴することを決め、5000ユーロの控訴手数料と、2万ユーロの保証金を納付して、スイス・ジュネーブにあるFIAの国際控訴裁判所へと持ち込んだ。

 この国際控訴裁判所は、モータースポーツにおける独立した控訴審機関として機能している。この裁判所は、スチュワードによって下された裁定を承認、変更、または撤回する権限を持っている。

 FIAのWEBサイトでは、次のように説明されている。

「世界中のモータースポーツ国内競技統括段階、またはFIA会長によって提起された紛争を解決する。また、FIAに加入する各国内の自動車団体によって提起された非競技上の紛争も解決することができる」

■審理はいつスタートするのか?

 本件の原告、すなわちマクラーレンとレッドブルは、上訴の理由書を15日以内に提出する必要がある。この上訴理由書は、フランス語と英語の両方で作成し、郵送および電子メールで送付しなければいけない。また主張内容、求める救済措置、提出予定の証拠およびその他の裏付けのための書類の一覧も記載することが求められる。

 この上訴理由書に関しては、すでに提出されたようだ。

 一方で被告側(今回はモナコGPのスチュワードを任命したFIA)は、その後15日以内に、答弁書を提出することが求められる。

 答弁書の提出から審理までには、少なくとも15日間の期間が設けられる。マクラーレンとレッドブルは、まだ召喚されていないため、審理の実施は7月中になると見込まれる。

 公開審理では、両当事者がそれぞれの主張を述べ、必要に応じて裁判所は関連する証人や専門家の証言を聞いた後、両当事者に最終弁論を求める。その後裁判所は、判決を発表する予定日時を通告し、裁判官たちは非公開での審議を行なう。

 そして最終的な決定は多数決で決められ、同数だった場合には裁判長が決定票を投じることになっている。そしてその後、最終決定がFIAと関係当事者に通知されることになる。

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