MotoGPコラム:開発競争に乗り遅れるな! “ドゥカティ発想”の取り入れ進めるスズキとヤマハ
MotoGPの技術開発で斬新なアイデアを取り入れるドゥカティ。2020年シーズンはヤマハとスズキといったライバルメーカーがドゥカティの後を追うような形で、“ホールショットデバイス”を導入する姿が見えた。
写真:: Gold and Goose / Motorsport Images
2019年シーズンは、開幕戦のカタールGPでドゥカティがスイングアーム下部に「タイヤ冷却用」のアタッチメント(通称スプーン)を装備したことが議論を呼び、他メーカーがこれに対して抗議を行う騒ぎへと発展した。だが、最終的にはこれら抗議を行った他メーカーも同様のアタッチメントを自分たちのマシンに装備してドゥカティのアイデアに追随する格好になった。
フロントフェアリングのエアロパーツといい、スイングアームアタッチメントといい、ドゥカティが先鞭をつけた狡智でユニークなアイデアは、賛否両論の議論を生みがちな反面、技術的な仕様という面ではひとつの潮流を作り出しているのも事実だ。
2020年のシーズン初頭に、これらの潮流に加わりそうな発想(と機構)が“ホールショットデバイス”だ。
技術的には特に斬新なものではない。レーススタート時にサスペンションの動きを固定して重心を低くすることでウィリーを抑止し、駆動力を効率的に路面に伝える機構で、モトクロスでは以前から導入されている。MotoGPではドゥカティが採用したことで、注目を集めることになった。ドゥカティファクトリーチームがこの機構を採用したのは昨年の開幕戦だが、それに先んじてサテライトチームのジャック・ミラー(プラマック)が2018年の日本GPから採り入れていたことも認めている。
MotoGPのテクニカルレギュレーションではサスペンションの動作を電気的に制御することは禁止されているため、これらのデバイスは機械的/油圧の調整でコントロールされている。上記のドゥカティの場合は、トップブリッジとダッシュボードの間にあるノッチをライダーが操作してリヤサスを縮めている。また、アプリリアの場合は昨年の後半戦からこのデバイスを導入しているが、こちらはモトクロスのようなフロントサスを固定する方式を採用してるようだ。
今回のセパンテストでは、マーベリック・ビニャーレスやテストライダーの野左根航汰がスタート練習を行った際にバイク後方が沈みこむ様子が確認されており、どうやらヤマハもこの装置の導入へ向けて本格的に乗り出した模様だ。
デバイスのテストについて訊ねられた際、ビニャーレスは笑いながら「ぼくは身長が低いからね。いままでは大変だったけど、これでバイクをしっかりホールドできるようになるから助かるよ」と質問内容をはぐらかすようなコメントを述べるにとどまった。
また、バレンティーノ・ロッシは「悪くないけど、使うまでにまだいろいろ確認しないと」と話し、ファビオ・クアルタラロ(ペトロナス・ヤマハSRT)は「ヤマハがいま取り組んでいるところなので、100パーセントの状態になったら使うことになると思う」とコメントした。
スズキも、ホールショットデバイスの導入に向けて検討を開始しているようだ。アレックス・リンスは、テスト最終目の走行後に「次のカタールテストではまだ入らないけど、開幕戦では装備すると思うよ」と言い、「ヘレスでは、全員が装備しているかもしれないよね」と笑った。
リンスが言うとおり、2メーカーがすでに使用し、さらに2メーカーが導入を開始することで、ホールショットデバイスの使用がグリッドの主流派になってゆけば、まだ採用していないホンダとKTMも座して不利な状況に甘んじつづけるわけにはゆかず、やがて本格的な採用検討を余儀なくされるかもしれない。
ホンダは以前、この機構を採用していたともいうが、新たに現在のマシンへホールショットデバイスを導入するのであれば、負けず嫌いのこのメーカーのことだから他メーカーの技術を安易に模倣するのではなく、さらに洗練されたなにか独自の工夫を施してくるのではないか、という気もする。
KTMの場合は、オーリンズを使用するライバル他メーカー勢と違い、WPというインハウスブランドを持っていることもあり、導入の検討が始まれば一気呵成に開発が進みそうだ。また、テストライダーが軽量短躯で現役時代にはスタートに苦労を強いられてきたダニ・ペドロサであることも、ニューデバイスの開発にとっては有利な材料になるだろう。
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