レッドブル、”コピー疑惑”のアストンマーチンに知的財産が流出?「データがダウンロードされた証拠がある」
FIAはアストンマーチンがF1スペインGPで投入したBスペックマシンは合法であると認めたものの、模倣されたレッドブルとしては知的財産の移転は「重大な懸念だ」とコメントしている。
写真:: Zak Mauger / Motorsport Images
アストンマーチンがF1スペインGPに持ち込んだ”Bスペック”マシンが、レッドブルのデザインと酷似しているにも関わらずその合法性がFIAに認められたことを受け、レッドブルはアストンマーチンに知的財産(IP)が流出した可能性を疑っている。
アストンマーチンはF1第6戦スペインGPに向けて、AMR22に大規模なマシンアップデートを投入したが、レッドブルRB18のサイドポンツーンとデザインが酷似していると話題になっている。
F1では、アストンマーチンの前身であるレーシングポイントが前年度のチャンピオンマシンに酷似したマシンを2020年に投入し物議を醸した「ピンク・メルセデス事件」以降、3Dカメラや高度な画像処理ソフトを使用してのリバースエンジニアリングが禁止されている。ただ、ライバルのマシンからインスピレーションを得ることは禁止されていない。
アップデートパーツのデータを提出されたFIAは、スペインGPを前にアストンマーチンに対して調査を実施。Bスペックマシンの開発プロセスを確認し、持ち込んだ全てのパーツはレギュレーションを遵守して開発されたモノだと発表した。
しかし”マネされた側”のレッドブルは、FIAの発表後も疑惑の目を向けている。
「FIAの声明について、関心を持って受け取った」
レッドブルは公式声明でそうコメントした。
「模倣は最大の賛辞ではあるが、デザインの複製は当然ながら”リバースエンジニアリング”に関するレギュレーションを遵守している必要がある」
「しかしIPの移転が行なわれた場合、それは明らかにレギュレーション違反であり、重大な懸念となる」
アストンマーチンのBスペックマシンは、レッドブルのRB18に類似していることから、既に”グリーン・レッドブル”と揶揄されている。スペインGPのフリー走行1回目では、レッドブルのピットウォールに座るメンバー全員が皮肉を込めてレッドブルの”グリーンエディション缶”を机の上に置いていた。
レッドブルがFIAの公式発表後も疑念を抱えているのには別の要因もある。というのも、アストンマーチンはトップグループの仲間入りを目指し、積極的なヘッドハンティングを行なっており、レッドブルからは元空力チーフのダン・ファローズが引き抜かれている。
ファローズはレッドブルで”ガーデニング休暇”を経た後、今年4月上旬からアストンマーチンのテクニカルディレクターを務めているが、彼の移籍については裁判沙汰にまで発展していた。
Lance Stroll, Aston Martin AMR22
Photo by: Carl Bingham / Motorsport Images
【写真比較】レッドブル『RB18』と”グリーン・レッドブル”アストンマーチン『AMR22』
レッドブルのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは、RB18の「信じられないようなコピーを行なうに至った経緯を明らかにすること」が重要だとSky Germanyに語った。
「現状では、(アストンマーチンの)コピーは許されている」とマルコは言う。
「しかし、7人ものスタッフが我々から引き抜かれ、我々の空力チーフが不釣り合いなほど高い報酬でアストンマーチンに引き抜かれたことも考慮しなくてはならない」
「まだ確認中の事実がある。詳しく調べていくつもりだ」
マルコは今回の件は「ダン・ファローズだけの」問題ではないとして、「データがダウンロードされた証拠がある」と主張した。
「ダン・ファローズは、ガーデニング休暇中だった」とマルコは続ける。
「彼の頭の中にあるモノ……模倣することは(開発)プロセスでは禁止されていない。しかし資料もなしにあんな詳細なコピーができるモノだろうか?」
一方、FIAの声明を受けてアストンマーチンの広報担当は次のように語っている。
「我々は、FIAの技術担当者と我々のアップデートの詳細を共有した。データとアップデートを作成するために使用されたプロセスを分析した結果、FIAは我々のアップデートが技術規則に従った、合法で独自の開発作業の結果として生まれたことを文書で確認した」
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