激しく上下動する新F1マシン……“アクティブサスペンション”の復活がベストな解決策か?
メルセデスのジョージ・ラッセルは、F1にアクティブサスペンションが復活すれば、2022年マシンのポーポイズ現状を解決できると考えている。
写真:: Rainer W. Schlegelmilch
先日カタルニア・サーキットで行なわれたF1プレシーズンテストで浮き彫りになった、グラウンドエフェクト特有の症状であるポーポイズ現象。ダウンフォース量が急激に変化することでマシンが激しく上下動するこの症状には、各チーム多かれ少なかれ苦しんだ。
これは1980年初頭にグラウンドエフェクトカーがF1に導入された時にも見られた症状だ。グラウンドエフェクトカーはフロア内のベンチュリトンネルによって強大なダウンフォースを発生させるが、そこに流れる気流が路面の凹凸や空気圧の変化などで失われると、マシンは突如ダウンフォースを失って浮き上がる形となる。しかし浮き上がることで気流が再びベンチュリトンネルに流れ、ダウンフォースが復活。マシンは沈み込む。このサイクルが続いてしまうのだ。
これにより、マシンはストレート上で激しく上下動する。これはイルカが泳ぐ際に水面から顔を出したり沈んだりを繰り返す様と似ていることから、同様の行為を表す単語(porpoise)を用いて、現在のような呼び方をされている。
各チームは現在、開幕に向けてこの問題の解決に取り組んでいるが、F1がこれまで認められていた高度な油圧式サスペンションを禁止し、システムの簡素化に踏み切ったことも、この問題に拍車をかけている。
これに特に苦しめられたのがメルセデスだ。彼らは一時的な解決策として、フロアに補強用のステーを設けることで対応したが、同チームのジョージ・ラッセルは、新世代のマシンを長期的に改善するシンプルな方法はアクティブサスペンションの復活ではないかと考えている。
ラッセルは、シャルル・ルクレール(フェラーリ)のマシンが激しくピッチングする様子を捉えた動画について言及しつつ、こう述べた。
「それがどれだけ酷いものなのか、シャルルのビデオで見たはずだ」
「だから、解決策を見つける必要があると思う」
「アクティブサスペンションがあれば簡単に解決できるかもしれない。当然、マシンももっと速くなる」
「これは今後の課題だと思うけど、バーレーンを見てみるしかないね。各チームがこの問題に関して賢いアイデアを出してくるはずだ」
マシンの姿勢を制御するアクティブサスペンションは、1990年代には一世を風靡したものの、ドライバーを補助する装置を削減するという名目で1994年シーズンを前に禁止された。
ただ最近では、この技術を簡単に導入でき、費用対効果も高いことから、2014年には各チームが復活の可能性を模索していた。しかしそういった状況がありながらも、F1はアクティブサスペンションを認めないという方針としたのだ。
ラッセルは、アクティブサスペンションはラップタイムの短縮にもつながるため、現行マシンには適していると主張する。
「アクティブサスペンションがあれば、空力が同じでもマシンがかなり速くなるのは明らかだ。なぜなら、あらゆるコーナースピードに合わせて車高を最適化し、空気抵抗が最小になるようにできるからだ」
「だからそれが、マシンを速くするための簡単な方法なんだ。一方で安全面で言えば(改善の)余地はある。僕はエンジニアじゃないから、細かい制約のことは分からないけど、ストレートでこんな問題が起きないのは確かだ」
また、マクラーレンのテクニカルディレクターを務めるジェームス・キーも、アクティブサスペンションはF1が検討すべきものだと考えているひとりだ。しかし、現代のF1には予算制限が設けられていることから、実際に導入することは簡単ではないのではという見方を示した。
「アクティブ(サスペンション)はふたつの意味で役に立つだろう」とキーは言う。
「1周を通して、空力性能のピークを維持することが目指せる。それができれば素晴らしい」
「一方で、シャシーの上下動に関しても何らかの形で対応できるかもしれない。前にも言ったように、(上下動を)完全になくすことはできないが、改善に役立つのは間違いない」
「テクニカルディレクターとして、個人的にはアクティブサスペンションの復活を望んでいる。しかし、コストに上限があることを考えると、ベストなプロジェクトとは言えないだろう」
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