サインツJr.、猛チャージもF1初優勝にあと1歩届かず。しかし「僕の全てを出し切れた」と前を向く

　ジル・ビルヌーブ・サーキットで行なわれたF1カナダGPの決勝レース。フェラーリのカルロス・サインツJr.は、レース終盤トップのマックス・フェルスタッペン（レッドブル）に猛チャージをかけるも抜くに至はらず、2位でチェッカーを受けた。

　敗れはしたものの、サインツJr.はこの結果を前向きに捉えている。

　レースはポールシッターのフェルスタッペンが序盤から支配していた。しかしレース終盤に差し掛かったタイミングで、角田裕毅（アルファタウリ）がクラッシュしたことで流れが変わった。

　サインツJr.はクラッシュより導入されたセーフティカーのタイミングでピットイン。フェルスタッペンよりも5周フレッシュなタイヤで、その後ろ2番手にタイム差なく並んだ。

　再スタートが切られるとサインツJr.が猛攻を開始。DRSも活用しフェルスタッペンを上回るペースで前を伺ったものの、直線スピードやロングストレートに向けてのヘアピン立ち上がりで勝るフェルスタッペンを抜きあぐねた。

　サインツJr.はバッテリーの充電ラップとアタックラップを交互に続けてプレッシャーをかけたが、フェルスタッペンはトップを死守しキャリア26勝目を挙げた。

　サインツJr.は、フェラーリの伝説的存在であり、このサーキットの名にも刻まれているジル・ビルヌーブの没後40年という節目にF1初優勝を狙ったが、その夢はまたもお預けとなった。

「僕は全力でプッシュし続けたんだ」とサインツJr.はレース後に語った。

「ブレーキングで壁スレスレまで攻めたんだ。バッテリーも含め、僕の全てを出し切った。マックスを抜くために何でもやったよ」

「ただ今回は、ヘアピンで彼に迫って、シケインで別のラインを走れるほどのペース差は無かったんだ」

「でもポジティブなのは、レース中ずっと僕らは速かったということだ。ここでオーバーテイクするためには、あともう少し（ペースが必要）だったんだ」

Max Verstappen, Red Bull Racing RB18, Carlos Sainz, Ferrari F1-75

Photo by: Mark Sutton / Motorsport Images

　フェラーリはモナコGPで勝てるはずだったレースをピットタイミングで失うなど、戦略面での荒さが度々指摘されてきた。しかしカナダでは、レースペースに加えて、最終ラップまでフェルスタッペンと真っ向から渡り合えた戦略をサインツJr.は高く評価している。

「レースペースや、レース中マックスにプレッシャーをかけ続けられた（レース）マネージメントについて、僕は特に満足している。ピットストップのタイミングも適切だったと思う」とサインツJr.は続ける。

「正直なところ、僕らは全てを試した。あと少しで勝てるところまで行ったんだ。だからそれをポジティブに捉えて、次のレースも頑張るよ」

　一方でサインツJr.から攻め立てられたフェルスタッペンは、セクター1と2で前のマシンを追うのが難しいことを理解していた。

「セーフティカーは助けにならなかった」とフェルスタッペンは言う。

「全体として、レースでは彼らがとても速かったと思う」

「僕だったら、フレッシュなタイヤでも最後にあの差を縮めるのは本当に大変だったと思う。でも知っての通り、セーフティカーが出て、彼らはフレッシュなタイヤを履いた」

「守るよりも攻める方が好きだなっていう感じだったけど、運良く上手くいったよ」

「ここで前のマシンを追いかけるのはトリッキーなんだけど、彼がプッシュして、充電してまたプッシュしてくるのが見えた。だから、最後の数周はとても楽しかった」