【スーパーGT】ホンダ陣営、ホームのもてぎで“スープラ祭り”を阻止。細部に渡る開発がNSXの性能向上に寄与か
スーパーGTでホンダの車体開発責任者を務める往西友宏は、ホームコースであるもてぎ戦が“スープラ祭り”になってしまわないよう、「こんな細かいことは普段ならやらない」というところまで徹底し、NSX-GTのパフォーマンス向上に取り組んだようだ。
写真:: Masahide Kamio
ツインリンクもてぎで行なわれた2021スーパーGT第4戦は、前年王者である1号車STANLEY NSX-GTのポールトゥウィンで幕を下ろした。GT500を走る5台のNSX-GTは、64号車Modulo NSX-GTが接触によりリタイア、17号車Astemo NSX-GTがシフトに関する電気系統にトラブルがあり14位に終わったものの、残る3台がトップ5に食い込むなど高いパフォーマンスを発揮した。
「我々ホンダにとっても、山本(尚貴)選手にとっても、1号車のメンテナンスをしているATJ(オートテクニックジャパン)さんにとっても地元レースだったので、なんとか勝ちたいと思っていました。勝つことができてホッとしています」
そう語るのは、ホンダの車体開発責任者を務める往西友宏だ。彼らの脳裏に焼き付いているのは、開幕戦岡山。低速のテクニカルサーキットのため、NSX優位かと見られていたが、蓋を開けてみれば予選でトヨタGRスープラ勢がトップ5を独占し、決勝でも上位4台全てがスープラだった。
昨年NSXが強さを見せたもてぎでも同じ展開とならないよう、ホンダは車体パフォーマンスの底上げに取り組んできたようだ。
「開幕戦の岡山では“スープラ祭り”を見せられてしまったので、スープラに対抗するために何かやれることはないのかということで、取り組みを進めてきました」と往西。
「昨年調子の良かったもてぎでもスープラ祭りをされてしまったら情けないったらないので、気合いを入れ直してやりました」
無論、ホンダとしてはその開発の詳細について明かすことは難しいと言うが、往西の言葉を借りれば「『こんな細かいことは普段ならやらない』というところまで取り組んだ」とのこと。8月下旬に予定されている次戦鈴鹿に向けても力強いコメントを残した。
「どのサーキットに行っても、NSXの良さを活かせるような形になっていると思います。鈴鹿では昨年GT-Rさんに勝たれていますが、鈴鹿もホンダのホームコースなので何とか勝ちたいですね」
また、佐伯昌浩ラージ・プロジェクトリーダー(LPL)は今回のレースを通して、NSX-GTは燃費の良さが強みだと感じたという。
#17 Astemo NSX-GT
Photo by: Masahide Kamio
スーパーGTでは、最初のスティントを短くし、できる限り早いタイミングでピットイン&ドライバー交代するチームが多い傾向にある。レギュレーション上では、1名のドライバーが総計でレース距離の3分の2を超えて運転してはならないため、今回のもてぎ戦での実質的なピットウインドウは、63周のレースの21周が終了した時点からである。
しかし、もてぎは最も燃費が厳しいサーキットのひとつであり、21周でピットインしてしまうと、残る42周を走り切れるだけの燃料を搭載できない。そのためトヨタ勢、日産勢の計10台は24〜29周の範囲(平均26.8周)でピットに向かったが、ホンダ勢に関しては16号車Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT(32周)を除く4台が、23〜25周でピットに入っていたのだ。
「今日のレースを見ていると、燃費的に言えばホンダの方がピットウインドウが広いんだなと感じました」
そう佐伯LPLは語る。
「このサーキットはレース距離の3分の1でピットに入ってしまうと燃費が足りないサーキットですが、チームとしては、燃費的にミニマムの周回数でピットに入れて、クリアなところを走らせたいのかなと思います」
「燃費の面ではホンダに優位性があると感じました。もてぎのような燃費の悪いサーキットではこれが優位になるかもしれません」
次戦の鈴鹿は、もてぎ同様に気温・路面温度共に高くなる可能性が高いが、佐伯LPLは今回のコンディション下でブリヂストン、ヨコハマ、ダンロップ、ミシュランの各タイヤメーカーが安定したパフォーマンスを見せていたため、次戦も僅差のレースになるだろうと予想。「特に軽いクルマはこのあたりでポイントを稼いでいかないといけないので、頑張ってもらいたいなと思います」と締めくくった。
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