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F1“写真”に隠された物語1:偶然に計算そして辛抱……大ベテランの“特別な写真”とは

F1の世界の魅力を伝える写真。数多くのフォトグラファーがF1サーカスで撮影をしているが、今回は30年以上の経験を持つ大ベテランのスティーブン・ティーに、“お気に入り”の写真をピックアップして貰い、その背景を語ってもらった。

Michael Schumacher, Benetton B195

写真:: Steven Tee / Motorsport Images

 スティーブン・ティーは30年以上に渡り、F1の世界を代表するフォトグラファーのひとりであり続け、数多くの魅力的な写真を撮影してきた。

 今回はそんな彼にとって“特別な意味”を持つ写真を選んで貰い、そのわけを語ってもらった。

ロマン・グロージャン、2012年ベルギーGPの大クラッシュ
 私は習慣から抜けきれない人間だが、それには良いことも悪いこともある!

 何年もベルギーGPのスタートをラソース(ターン1)の内側から写真を撮ってきた。スタートラインから300mのところにあるヘアピンはユニークな場所で、そしてレース中そこにとどまっても良いフォトグラファーにとってはアクセスしやすい場所でもある。

 2012年のレースはその中でも際立ったもので、私はロマン・グロージャン(当時ロータス)の大クラッシュを特別なアングルから収めることができた。このショットは14mmの超広角レンズで撮ったもので、グロージャンがフェルナンド・アロンソ(フェラーリ)を飛び越えた時、彼から4フィート(約1.2m)も離れていなかったよ。

 私は小さなフォトグラファーのグループにいたんだが、このクラッシュの写真を撮って振り返ると、ひとりを除いて居なくなっていた。熱心でひたむき、もしくは愚かなのか……おそらく大なり小なりその両方なんだろうが、そのおかげでこうしてシェアする写真を手にしているんだ。

2010年日本GP、禅スタイルで集中するルイス・ハミルトン

 このルイス・ハミルトンの写真は2010年の日本GP、その予選中にマクラーレンのガレージ内で撮られたものだ。当時はマシンがコースへ出る直前に大雨に見舞われて、全員が雨が止み、走れるようになるのを待って、1時間を過ごしていた。結局その時は来ずに予選は日曜朝に実施されたがね。

 ルイスは辛抱強くマシンに座っていた。最終的にはヘルメットを脱いだが、彼はずっと集中力を保っていた。彼は“目出し帽”をかぶっている写真を嫌うことで知られていたが、その後この禅スタイルの写真を見せると、彼は喜んでいたよ!

ジェンソン・バトン、“ウェットマスター”の走り 2011年カナダGP

 仕事をしていて最も濡れ鼠になったのは1984年のモナコと、この2011年のカナダの2戦だと思う。

 この決勝日のように悪天候の際でも当然写真を撮り続ける必要があるから、機材を乾燥させて、機能させることが最も重要だ。私は2台のカメラを持ち歩いているが、雨が降っている時は1台を安全に保管し、バックアップとしてカメラバッグの中で乾燥させる。セーム革はモヤっぽくなるのを防ぎレンズを拭うのに優れた物で、常に持ち歩いている。

 荒れに荒れた2011年のカナダGPは、恐ろしいコンディションの中で彼の技術の素晴らしさが勝利をもたらしたことで有名だが、それを映し出すのがフォトグラファーの仕事だと思っている。

 この写真はコース上で最も濡れている最終コーナーで撮影したものだ。ジェンソンが私の横を通り過ぎると、レースディレクターのチャーリー・ホワイティングがレースを中断させた。光量の許す限り早いシャッタースピードに設定して、雨粒がコースを、マシンを叩く瞬間を切り取り、あのコンディションを浮き彫りにすることができたんだ。

アロンソ、フェラーリで初優勝! 2010年バーレーンGP

 最初にフェルナンドと会ったのは、彼がルノーF1の若いテストドライバーのときだった。2001年の12月、クリスマス前の1週間のトレーニング合宿のためにフラビオ・ブリアトーレの素晴らしい家に居たときだ。

 フェルナンドはレースで勝ったら、必ずビッグなセレブレーションをすると約束していたし、パルクフェルメでも表彰台でも勝利の喜びを示すための方法を考え出して、フォトグラファーを落胆させるようなことはなかった。

 2010年のバーレーンでは、彼がフェラーリで初めて勝利したときに彼の真上に位置していて幸運だった。この写真の形や線が私は大好きなんだ。フェルナンドはリオ・デ・ジャネイロのキリストの立像を模しているようだ。

アロンソは撮りそこねたけど……2016年アブダビGP、ハミルトンのドーナツターン

 ニコ・ロズベルグがチャンピオン獲得を決めた2016年の最終戦アブダビGP。私はマクラーレンとアロンソの両方と密接に仕事をしていて、F1レーシングからフェルナンドの特集をやらないかと言われて引き受けた。

 彼がスタート/フィニッシュラインを超えた後、ドーナツターンを始めると聞いていて、それを撮るにあたって完璧な場所を見つけていた。カメラマンはラスト1周からピットウォールへ入ることを許されて、私は70-200mmのズームレンズを持ってマクラーレンのガレージからタワーへと走ってアロンソを待った。

(優勝した)ハミルトンはラインを超えるとゆっくりとコースを下り、目の前に停まると、ドーナツターンを開始した。しかしフェルナンドが到着してパフォーマンスを開始するときには、彼の位置は私からは遠すぎ、そしてルイスの出す煙に包まれていた……。

 ほろ苦い経験だが、幸運なことに同僚がピットルーフからフェルナンドの完璧なショットを撮っていてくれたから写真は手に入れることができたよ!

スリーワイドはバルセロナの象徴。2019年スペインGP

 グランプリのスタートシーンを撮影するベストスポットはターン1のアウト側だと言われているし、私も何百回もそこにいたことがある。

 しかし時にはいろいろなことを試すのも良い。去年のスペインGPで撮ったこのショットはその良い例だ。

 バルセロナは冬季テストで走り込んでいるため、マシンはよく調整されていて、とても接近している。ターン1までは長い下り坂になっている。その組み合わせによって、こうした3台横並びがしばしば起きる。

 この絵はまさにそれで、ブレーキングポイントの直前で85mmのレンズで絞りは小さく、早いシャッタースピードで撮影している。これはバルセロナを象徴するもので、20台のマシンが何センチかを離れて接近しているのは、撮影するのにとてもエキサイティングな場所だ。

F1の未来を担う、若手ドライバーの団らん

 1984年から650戦以上のF1を取材してきたが、その間に素晴らしいドライバー、そしてライバルたちを目にしてきた。

 現在のF1はこれまでになく強さを増しており、今いる若手ドライバーによってF1は今後も話題にされ続けるのは間違いない。適切なタイミングに適切な場所に居たことで、ドライバーズパレード前に彼らがお喋りしている舞台裏の姿を捉えられたのは本当に幸運だった。

 マックス・フェルスタッペン、ランド・ノリス、ジョージ・ラッセル、アレクサンダー・アルボンにシャルル・ルクレール。幼い頃からカートやジュニアフォーミュラで競ってきた彼らが、F1でも続けていくことだろう。F1の未来は間違いなく明るい。

ルクレールとフェルスタッペン、“あの”オーストリアGP

 若手ドライバーからもう1枚だ。昨年のオーストリアGPでの写真で、シャルルがポールポジションを獲得した予選後の様子だ。2番手になったハミルトンがインタビューを受けている間、ルクレールとフェルスタッペンがスタートラインで活発に話し合っているところだ。ルクレールの”ガンマンポーズ”が良いだろう。

 この写真は次の日、ふたりがホイールトゥホイールの争いをし、フェルスタッペンとホンダが勝利したことから、更に重要なものになった。

アイルトン・セナ、シルバーストンの夏。1993年イギリスGP

 シルバーストンというのはF1マシンを撮るには常に難しいトラックだ。フラットな光、ごみごみした背景、熱狂的な観客とマーシャル、そしてマシンと我々との間の距離が非常に広いんだ。

 残念なことに今ではとっくに無くなってしまったが、旧コースにあったブリッジコーナーから来るマシンを撮る事ができる、最高のスポットがあったんだ。うつ伏せになって500mmのレンズを置いて、路面の頂点にピントを合わせる必要があったが、背景にはごみごみしたものは何も映らない。

 鋭いショットを撮るにはシャッターを押すタイミングを予測する必要があった。写真の1993年のセッションは灰色の空の下で行なわれ、太陽が顔を出しアイルトン・セナが頂上を超えてきた時には、クラブコーナーの向こうには雨雲が発生していた。

 この写真はデジタルではなくフィルムで撮ったもので、月曜日の朝になって初めて気分屋な空の下、クルマを適切な位置で撮れたことに気がついたんだ。

フェルスタッペン父のマシン炎上。1994年ドイツGP

 この写真は1994年に撮影して以来、あまりにも多く見られているのではと心配していて、リストに挙げるべきかどうか分からなかったんだが、これが私の最も有名な写真だから選ぶことにした。

 レースが落ち着くと私はベネトンのガレージ前からピットストップを撮影しようと決めた。ピットレーンでは既にメカニックが準備をしていて、レンズを70-200mmのズームからより広角な物へ交換する時間はなかった。すぐにヨス・フェルスタッペンのマシンが停止すると、私はサイドから撮影を開始した。

 すると、次の瞬間には炎の壁ができていた! 私は撮影を続けていたが、フィルムだったので何を撮っているかは分かっていなかった。そしてロンドンへ戻りフィルムを確認するまでは結果も分からなかったんだ。

 そこには4枚の炎上する写真があり、2枚はピントが甘く、1枚は及第点、そしてこれはシャープに決まっているものだった。

セナ、限界を探してデータを睨む。1993年カナダGP

 アイルトン・セナはすること全てで限界までプッシュしていた。そしてデータが自分のアドバンテージを見つける助けになることを理解した最初のひとりだった。

 ヨーロッパラウンドではこうした事は全てガレージの裏側で行なわれていた。しかしフライアウェイラウンドでは、特に公道サーキットではガレージが狭すぎてチームの設備を全て収めることができず、モントリオールではメインのガレージの後ろに各々がテントを張っていた。

 私がマクラーレンのパドックを通っていた時、突風でテントの側面が飛ばされ、アイルトンがひとりでデータを勉強しているところが見えた。そしてすぐにこのショットを撮った。

 この写真は自分の世界で画面上の数値に完全に集中しているアイルトンをよく捉えていると思う。そして写真中央で彼の姿が自然と浮かび上がっているのも、写真として良い仕事ができた。

嵐の前の静けさ。セナ、エストリル初優勝の“少し”前。1985年ポルトガルGP

 1984年に仕事を始めて、1985年は私が初めてF1のフルシーズン取材をした年だった。前年イギリスF3を勝ったアイルトンを追っていた私にとって、彼は私が知る唯一のドライバーだった。

 エストリルでは、アイルトンのマシンが技術的な問題によって止まってしまった。そこは私が岩陰から撮影しているところだった。彼はそこに登ってきて、おはようと挨拶を交わすと、他のドライバーのラインを見ることに集中していた。

 セッションが終わると、マーシャルが来て彼のマシンをトラックに戻し、アイルトンはマシンのそばに座って回収の車を待っていた。この後、彼がF1初優勝を挙げたのは有名だし、話題は攫われてしまったけど、この写真が彼がどんな人なのかを本当に示していると思えて、この写真が大好きなんだ。

ミハエル・シューマッハ、モンテカルロの木漏れ日。1995年モナコGP

 この写真は1995年のモナコGPの日曜朝、ウォームアップセッションのもので、私がお気に入りの写真のひとつなんだ。ミラボー・コーナーで撮ったものだが、思いがけない偶然が必要だった。

 早朝、日光がカジノガーデンの木々をすり抜け、ドライバーはイン側の前輪が持ち上がるほどプッシュしている。そしてカメラのフィルムはフジ・ベルビアが使われていて、これによって色とコントラストが強調されているんだ。

アロンソ、2度目のタイトルに向け超集中。2006年ブラジルGP

 2006年にルノーと働いていた時だ。アロンソは最終戦ブラジルGPにタイトル獲得の可能性が非常に高い状態で挑んでいた。

 サンパウロのピットやパドックはとても基本的なものだった。そして私はドライバーズルームが洋服のラックとキャンプベッドがある程度のちょっとした小部屋に過ぎないことに気がついた。それはF1の華やかな世界と対照的なものになるだろうと思い、フェルナンドにここで写真をとっても構わないか聞いたんだ。

 この写真は彼が2度目の世界タイトルを勝ち取るレースに挑む前に撮られたもので、彼の深い集中が現れている。

フェラーリを追いかけた報酬。ピットクルーの一員に? 2006年スペインGP

 このミハエル・シューマッハが2006年のスペインGPでピットストップした際の写真が大好きなんだ。なぜならこれを達成するためには、多くの交渉が必要だったからね。求めなければ何も得られないという事も証明しているよ!

 この写真はリモート撮影カメラで撮られたもので、フェラーリのエアガンのラインがのびている頭上の2本のガントリーの間に取り付けられた。14mmの広角レンズで、まるでピットクルーの間に立っているように見える。

 この仕掛けを許可してくれたクルーチーフのナイジェル・ステファニー、悲しいことに彼は亡くなってしまったが、彼には本当に感謝している。

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