特集
General
モータースポーツのそもそも論(2);より高効率のエンジンを目指して
モータースポーツに限らず、人々の生活に身近な存在の”エンジン”。そもそも、どんな構造になっていて、どんな役割を果たしているのだろうか?
松本 和己
編集: 2021/10/22 3:19
Copy link
Viberでシェア
Google検索でmotorsport.comをお気に入り登録

モータースポーツ好きだけに限らず、車を所有している人にとっても、エンジンは身近な存在だ。しかしガソリンを使って動力を生み出すことは分かっていても、その仕組みまで知らない方も意外と多いのではないだろうか?
motorsport.comはエンジンのスペシャリストに、改めてエンジンがどんな働きをしているのか、どんな開発が行なわれているのかを取材した。
今回話を伺ったのは、ホンダのエンジン開発部門の新里智則氏。1984年の入社から、ホンダでCIVICなどのエンジン開発に携わってきたエキスパートだ。
Read Also:
現代のエンジンにおいて、熱効率は重要なキーワードだ。熱効率とは、燃料が持つエネルギーのうち、どれだけの割合を“仕事”として取り出すことができたかを示す。
本来ならば、燃料のエネルギーを100パーセント全て使い切りたい。しかしレシプロエンジンでは、ピストンが下がり切った時点(下死点位置)で残っている圧力・熱エネルギーは排気バルブを開いて捨てなければならないため、熱効率は50パーセント程度が限界なのだという。
「ピストンが下がってくる膨張行程で動力を取り出すんですが、ピストンが下死点まで下がると、それ以上は下がれないので後はピストンが上がるしかありません。まだ中はすごく熱いし圧力も高く、エネルギーはいっぱい残っているんです。でもしょうがないので排気バルブを開いてエネルギーを捨ててしまいます。往復ピストン機関の宿命みたいなものですね」
そう新里研究員は説明する。
熱効率を上げるためには様々なアプローチが採られている。捨ててしまった熱を回収するのも手段のひとつだ。ターボチャージャーを回して空気を圧縮するエネルギーとして排気を活用したり、ターボ内のタービンの軸を発電装置に直結して電気エネルギーに変換したり(F1で使われているMGU-Hがこれだ)するのもこの領域に当たる。
新里氏は、その中でもエンジン自体の理論的な熱効率を底上げすることが基本だと語った。つまり、前述したようにノッキングを改善することができれば、圧縮比を上げることができ、より大きなエネルギーを取り出すことができる。
ホンダは1973年にCVCCと呼ばれる低公害エンジンをCIVICに搭載。当時世界一厳しく、パスすることは不可能とまで言われた米国のマスキー法という排気ガス規制を最初にクリアしたエンジンとなった。当時はリーン燃焼(希薄燃焼)させることで排出ガス中の有害物質を少なくしたのだ。
CVCCの仕組み
Photo by: Honda
これは副燃焼室に主燃焼室より濃い混合気を導入し、点火プラグで確実に着火。その燃焼火炎で、主燃焼室の希薄した混合気を燃焼させるという手法だった。
現在、当時の技術が全く違う目的から再注目され、ホンダはi-CVCCと呼ばれる副室燃焼技術の開発を進めている。これは副燃焼室のジェット噴流によって急速に混合気を燃焼させることで、ノッキングを低減することができるという。
また、新里氏はハイブリッドシステムもエンジンの熱効率向上に寄与していると話した。
ハイブリッドシステムはブレーキング時に熱として捨てているエネルギーを電気エネルギーに変換して再利用する他、エンジンが不得意な低回転域や最大パワー時にモーターによるアシストを行なうことができる。
さらに、エンジン出力を熱効率的に理想的な状態に調整したりもしているという。例えば、車のアクセルをわずかしか踏まずにクルーズ走行している時、エンジンは必ずしも熱効率としては理想的な状態ではないことがある。そこでハイブリッド車両では、よりトルクの高い理想的な状態でエンジンを回し、走行に必要ないエネルギーを充電に活かすといった調整ができるのだ。(次回に続く)
From the editor, also read:
- モータースポーツのそもそも論(3):エンジンの未来はどうなる?
- 今更聞けないタイヤのこと(1)タイヤ基礎編〜タイヤはゴムと金属と繊維でできている〜
- 環境対策は必須……ホンダF1の将来はどうなる?:ホンダ・モータースポーツ部長に訊く1
- ホンダ、レース中断期間に楽しめるコンテンツ「Virtual Motorsports Land」を公開
- HRD Sakura連載「テストベンチは面白い!」第1回:テストベンチの役割とは?
あなたの意見が聞きたい!
Motorsport.comで何を見たいですか?
5分間のアンケートにご協力ください。
- Motorsport.comチーム
コメントを読んで投稿する
関連ニュース :
記事をシェアもしくは保存
Copy link
Viberでシェア
前の記事 モータースポーツのそもそも論(1):エンジンって何なんだ?
次の記事 TAKUMA KIDS KART CHALLENGE、今年も開催へ「夢の大切さを、今だからこそ」
Top Comments
コメントはまだありません。 最初のコメントを投稿しませんか?
View More & Comment
More from
松本 和己

読みもバッチリハマった野尻智紀、2戦連続ポール獲得「かなり限界まで攻め切ることができた」
スーパーフォーミュラ
スーパーフォーミュラ
第8戦:SUGO
2 ヵ月前
読みもバッチリハマった野尻智紀、2戦連続ポール獲得「かなり限界まで攻め切ることができた」

36号車au、ウエイト40kgで予選2番手! 山下健太「まさか2番手になるなんて。これ以上は見えなかった」
スーパーGT
スーパーGT
第2戦:富士
5 ヵ月前
36号車au、ウエイト40kgで予選2番手! 山下健太「まさか2番手になるなんて。これ以上は見えなかった」

これがフォーミュラEの未来! 800馬力超えの四駆”モンスター”次世代車両『Gen4』正式お披露目
フォーミュラE
フォーミュラE 5 ヵ月前
これがフォーミュラEの未来! 800馬力超えの四駆”モンスター”次世代車両『Gen4』正式お披露目
最新ニュース

アントネッリの”悪癖”にウルフ代表もハラハラ「白線が見えていないみたいだから、お尻の下に枕でも挟もうか」
F1
F1 F1
シンガポールGP
13 時間前
アントネッリの”悪癖”にウルフ代表もハラハラ「白線が見えていないみたいだから、お尻の下に枕でも挟もうか」

スーパーフォーミュラ、SC絡みで物議のSUGO戦は「反省すべき点あった」と上野社長。FCY導入に向けた現状と課題は
スーパーフォーミュラ
SF スーパーフォーミュラ
第9戦・第10戦富士
13 時間前
スーパーフォーミュラ、SC絡みで物議のSUGO戦は「反省すべき点あった」と上野社長。FCY導入に向けた現状と課題は

F1がルワンダと10年契約を締結! 最短で2030年にレース開催へ。アフリカ大陸での開催は1993年の南アフリカGP以来
F1
F1 F1 14 時間前
F1がルワンダと10年契約を締結! 最短で2030年にレース開催へ。アフリカ大陸での開催は1993年の南アフリカGP以来

ノリス、土曜日の”致命的ミス”でこってり絞られた? 「もうあんなことしない……チームを失望させた」と態度変える
F1
F1 F1
シンガポールGP
14 時間前
ノリス、土曜日の”致命的ミス”でこってり絞られた? 「もうあんなことしない……チームを失望させた」と態度変える
Subscribe and access Motorsport.com with your ad-blocker.
フォーミュラ 1 から MotoGP まで、私たちはパドックから直接報告します。あなたと同じように私たちのスポーツが大好きだからです。 専門的なジャーナリズムを提供し続けるために、当社のウェブサイトでは広告を使用しています。 それでも、広告なしのウェブサイトをお楽しみいただき、引き続き広告ブロッカーをご利用いただける機会を提供したいと考えています。
次の 2 つのオプションがあります。
- サブスクライバーになります。
- 広告ブロッカーを無効にします。
購読中 すでに購読していますか? ここからサインインします
広告ブロッカーを無効にしましたか?
ページをリロード
お知らせの管理
登録