”魔法のデバイス”は実在するのか? メルセデスのストレートスピード向上の秘密

メルセデスは、今季のマシン『W12』にリヤの車高をコントロールできるデバイスを搭載しているという噂を否定しているが、ストレートではリヤの車高が下がっていることが確認されている。

Valtteri Bottas, Mercedes W12

Valtteri Bottas, Mercedes W12

Charles Coates / Motorsport Images

 メルセデスF1の今季マシン『W12』はここ数戦、特にトルコGPで優れたストレートスピードを見せていた。レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は、メルセデス側が何か”飛び道具”を使っているのではないかと疑っている。

 これに対し、メルセデスのトト・ウルフ代表は、ストレートでのパフォーマンスは「小さな向上を積み重ねた結果」だと、特別なデバイスの存在を否定している。

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 しかしながらW12の走行映像を見ると、コースの高速エリアではマシンのリヤがわずかに沈み込み、コーナーに向けてブレーキをかけると車高が上がっているのが確認できるのだ。

 ライバルのレッドブルとは異なり、メルセデスはレーキ角(マシンの前傾角)の小さいコンセプトを採用。マシン後部の車高は元々低めになっている。

 ハイレーキ・コンセプトはフロア下の気流を加速させて圧力を下げ、フロア全体をディフューザーの延長として使うことで高いダウンフォースを生むことができるため、コーナーでは有利に働く。一方でリヤの車高が上がっているため前面投影面積が大きくなり、空気抵抗が増えてストレートでは不利となる。

 逆説的に、ストレートでリヤの車高を下げることができれば、空気抵抗を減らしてストレートスピードを向上させることが可能なはずだ。

 レーキ角が小さいマシンでも、その理屈は変わらない。メルセデスは加速時にリヤの車高を下げることでトップスピードを上げることができるようなセットアップを見出すことができたようだ。

 どのようにしてこの効果を生み出しているのかは今のところ不明だ。だが受動的なシステムだと仮定すると、リヤ部分で生まれるダウンフォースが大きくなると縮まり、ダウンフォースが小さくなると圧縮されなくなるようなスプリング設定のサスペンションを使うことで、それを実現することは可能だと思われる。

 ソフトなスプリングを使用すれば、トルコGPの舞台であるイスタンブール・パークの高低差にも対応でき、アメリカGPの舞台であるサーキット・オブ・ジ・アメリカズのバンピーな路面で、安定したグリップを得ることができる。

 またディフューザーの位置も低くなることから、一定の速度で意図的にディフューザーを”ストール”させることで加速の向上につなげている可能性もある。

 ブレーキングゾーンでマシンが自然なポジションに戻った際に、コーナリングで必要なダウンフォースを生み出せるよう、気流をうまくコントロールする必要があるが、W12はドライバーがアクセルを離すと徐々に通常のレーキに戻り、気流が望ましい位置に戻るようにできているようだ。

 メルセデスはこうしたセットアップ変更にかなりの自信を持っている様子。ここ数戦、彼らはパワーユニットの信頼性に問題を抱えている。それを踏まえると、パワーユニットからさらなるパワーを引き出すのではなく、サスペンション構成を工夫し、セットアップの”スイートスポット”を見つけたというチームの主張は間違いではないのかもしれない。

 

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