分析
F1 カナダGP
ポーパシング対策のルール調整がメルセデスにとって逆効果になる理由とは?
FIAはドライバーへの身体的な影響を理由にポーパシング&バウンシング対策に向けた介入を決定。ここまでそれを要求してきたメルセデスだが、この介入がむしろ逆効果となる可能性もあるようだ。

Jonathan Noble
編集: 2022/06/17 20:07
Copy link
Viberでシェア
Google検索でmotorsport.comをお気に入り登録

FIAがドライバーへの身体的な影響を理由にポーパシング対策に向けて介入を決めたことは、一見するとレギュレーション変更を求めてきたメルセデスにとっての”勝利”に見えるかもしれないが、むしろ競争力が削がれる可能性もあるようだ。
アゼルバイジャンGPの定例ブリーフィングでは、メルセデスのジョージ・ラッセルはポーパシングによる振動がドライバーに健康被害を与える可能性があるのではないかとして、FIAに抑制に向けたレギュレーションの調整を促し、チームメイトのルイス・ハミルトンは振動により背中が「表現できないほど」痛かったと決勝レース後に語った。
Read Also:
メルセデスは10チームの中で最も、フロアのダウンフォース量の変化によりマシンが上下に高速で振動するというポーパシングに苦慮。車高を上げることでこの問題は解消できるが、フロア面で稼ぐことができるダウンフォースが減少するため、パフォーマンスが犠牲になることとなる。
スペインGPでは大規模アップデートを投入し、ポーパシングを解消したようにも思える快走を見せた。しかし続くモナコGPとアゼルバイジャンGPでは、再びマシンが跳ね始めた。ただこれに関しては”空力由来の”ポーパシングではなく、路面の凸凹にマシンが過敏に反応してしまうことで発生するバウンシングだとチームは説明している。
マシンが跳ねる現象を解消できるのであれば、メルセデスにとってみれば今回のFIAによる介入は”お得”でしかないようにも思えてくる。
仮に全チームがポーパシングやバウンシングのリスクがないようなセットアップで一律に走ることを強いられれば、少なくともメルセデスは他チームとの開いていた差を埋めることができるかもしれないからだ。
ただ、もしくはその問題を既に解消している他チームにとっては許し難いというのがレッドブルのクリスチャン・ホーナーの意見。アゼルバイジャンGPの決勝レース終了後に、この問題に苦しんでいないチームにとっては「不公平」だと示唆していた。
しかしカナダGPに先立ちFIAが発表した技術指令から、彼らが進める計画を深く掘り下げて見ると、ホーナーが懸念していた一律の調整というモノとは若干異なるアプローチであることが見えてきた。
短期的な対策を見てみると、実際はメルセデスの競争力を高めるどころか、むしろ競争力を削ぐようなレギュレーション調整となる可能性もあることが分かる。
FIAの新たな技術指令で特筆すべき点は、ポーパシングやバウンシングによる垂直振動の許容レベルを設定するために、マシンの垂直加速度荷重に基づいた指標を作成しようと動き出していることだ。
Lewis Hamilton, Mercedes W13
Photo by: Steve Etherington / Motorsport Images
FIAの計画の詳細や最終的なレギュレーション調整についてはまだ公表されておらず、カナダGPはデータ収集の機会に充てられる。
カナダGPのフリー走行1回目から、FIAはテレメトリーデータを確認し、ポーパシングやバウンシングの影響を深く理解するために、マシンとその挙動のより詳細な技術評価を行なうこととなった。フロアに備え付けられているスキッドブロックの摩耗度合いもその調査対象となる。
このデータをもとに、コース上のマシンに厳格なGフォース制限や振動数制限などが課されることとなり、ハミルトンが背中を痛めることもなくなるはずだ。
こうした制限が設けられたとしても、ポーパシングやバウンシングといった問題に見舞われることなくマシンを低い車高で走らせることができているチームは、マシンに変更を加える必要はない。
しかしメルセデスを筆頭に、マシンの車高を下げることで問題が増幅しているチームにとっては、頭痛の種となるだろう。
FIAがポーパシングやバウンシングによりフロアが路面に当たる許容指数を設定すれば、ポーパシングの発生を承知で車高を下げてパフォーマンスを引き出していたチームは、遵守するためにセットアップ変更を余儀なくされる。
つまり、それは”マシン的に”理想なセットアップの枠から外れることを意味する。レギュレーションを遵守するため、ひいてはドライバーがポーパシングやバウンシングによって健康被害を受けることを回避するために、パフォーマンスを犠牲にすることとなるわけだ。
現時点でポーパシングやバウンシングに最も苦しんでいるドライバーたちにとってみれば、マシンの振動はなくなりスムーズな走りができるようになるかもしれない。ただその反面、ラップタイムは落ちることとなり、結果的に順位を下げてしまうこととなるかもしれない。
ただ、ポーパシングやバウンシングを解決できていないチームは短期的な痛みを伴うかもしれないが、来年以降に向けてはより良い解決策がFIAから講じられる可能性も残されている。
アゼルバイジャンGPでのラッセルの訴えは、今後数年に渡りF1はポーパシングに悩まされ続けるのかというモノだった。そしてFIAは F1チームと協力しながら、この問題の根絶に向けた中長期的な対策検討に乗り出すことを示唆している。
「 FIAはチームと技術会議を開き、中期的にこの現象を引き起こすマシンの傾向を抑えるための対策を確立する予定だ」
FIAは技術指令の中でそう述べている。
将来的には、F1からポーパシングやバウンシングを完全に排除できるように、レギュレーションに微調整が加えられることとなる。今年から簡素化されたサスペンションアッセンブリに関する規制事項が見直され、マスダンパーやアクティブサスペンションの合法化も検討されることだろう。
こうした変更は、レッドブルやフェラーリのトップ2強から大きく離されている今のメルセデスにとって、復活に向けた救いになるだろう。
Read Also:
- ポーパシングを止めたいなら、車高を上げればいいじゃない! メルセデス”以外”のF1チーム、ルール調整に否定的
- レッドブル代表、ポーパシング対策でのルール変更に反対「まともな仕事をしてきたのに」
- “ポーパシング”と“バウンシング”は同じではない? バクーで起きていたのは「バウンシングの方」とメルセデスが説明
- 使用禁止になった”画期的”デバイス3:抜群の安定感を実現させた『マスダンパー』
- ポーポイズ現象の解決策に最適? アクティブサスペンションとは何か
あなたの意見が聞きたい!
Motorsport.comで何を見たいですか?
5分間のアンケートにご協力ください。
- Motorsport.comチーム
コメントを読んで投稿する
関連ニュース :
記事をシェアもしくは保存
Copy link
Viberでシェア
前の記事 ウイリアムズ、大規模アップデート準備中。マシンの見た目は”目に見えて”変わる!?
次の記事 ポーパシング&バウンシング解決の先を見据え……メルセデスが”将来のため”に施すアップデート
Top Comments
コメントはまだありません。 最初のコメントを投稿しませんか?
View More & Comment

More from
Jonathan Noble

大きく前進を果たせなければ、F1タイトル5連覇は目指せない……フェルスタッペン、レッドブルに警鐘鳴らす
F1
F1 2024/12/29
大きく前進を果たせなければ、F1タイトル5連覇は目指せない……フェルスタッペン、レッドブルに警鐘鳴らす

ハミルトンのメルセデスF1最終年度での苦戦、その原因は? エンジニアリング統括が明かす
F1
F1 2024/12/27
ハミルトンのメルセデスF1最終年度での苦戦、その原因は? エンジニアリング統括が明かす

僕にできることはある……ボッタス、“最悪のシナリオ”でF1シート喪失も闘志は消えず。酒の勢いで始めたおバカ挑戦で再認識
F1
F1 2024/12/25
僕にできることはある……ボッタス、“最悪のシナリオ”でF1シート喪失も闘志は消えず。酒の勢いで始めたおバカ挑戦で再認識
最新ニュース

アロンソの現役続行、かつての好敵手ハミルトンが歓迎「才能という面では、彼に敵わないドライバーはたくさんいる」
F1
F1 F1
バーレーンGP
1 時間前
アロンソの現役続行、かつての好敵手ハミルトンが歓迎「才能という面では、彼に敵わないドライバーはたくさんいる」

先入観で仕事しちゃだめよ! もてぎ戦で起きたハードタイヤ騒動、チーム&ライダーに教訓残す
MotoGP
MGP MotoGP
日本GP
14 時間前
先入観で仕事しちゃだめよ! もてぎ戦で起きたハードタイヤ騒動、チーム&ライダーに教訓残す

2戦連続表彰台も見えていたが……ハジャー、グリップと電力を失い5位に沈む「速さはあったのに。冗談みたいだ」
F1
F1 F1
バーレーンGP
15 時間前
2戦連続表彰台も見えていたが……ハジャー、グリップと電力を失い5位に沈む「速さはあったのに。冗談みたいだ」

MotoGP日本GP、無視されていたハードタイヤが実は”最高の”タイヤだった!? 決勝経て評価覆る「驚きだった」「後悔してる」
MotoGP
MGP MotoGP
日本GP
15 時間前
MotoGP日本GP、無視されていたハードタイヤが実は”最高の”タイヤだった!? 決勝経て評価覆る「驚きだった」「後悔してる」
Subscribe and access Motorsport.com with your ad-blocker.
フォーミュラ 1 から MotoGP まで、私たちはパドックから直接報告します。あなたと同じように私たちのスポーツが大好きだからです。 専門的なジャーナリズムを提供し続けるために、当社のウェブサイトでは広告を使用しています。 それでも、広告なしのウェブサイトをお楽しみいただき、引き続き広告ブロッカーをご利用いただける機会を提供したいと考えています。
次の 2 つのオプションがあります。
- サブスクライバーになります。
- 広告ブロッカーを無効にします。
購読中 すでに購読していますか? ここからサインインします
広告ブロッカーを無効にしましたか?
ページをリロード
お知らせの管理
登録