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変わりつつあるF1のスポンサー事情。広告塔の域を超えたより深いパートナーシップへ

かつてはタバコ広告などがマシンを彩っていたF1。しかしそれから数十年が経ち、スポンサーシップの形は新しい時代に突入しつつある。

Max Verstappen, Red Bull Racing RB16B

写真:: Steven Tee / Motorsport Images

 F1はいつの日からか、自分たちに寄せられる批判をなんとかしなければならないと自覚するようになった。増加し続けるコストはどうにもできず、大量にガソリンを消費するV8エンジンは資源の無駄遣いだとして格好の標的とされた。

 そういった流れの中でスポンサーたちは、観客動員数が減り、ソーシャルメディアでの露出も少ないF1への関心を失っていったように見えた。

 しかしここ数年、F1を取り巻く状況は大きく変わってきている。

 今季から予算制限が導入されたことにより、底無しに資金が投入される時代は終わりを告げた。そして2014年からハイブリッドシステムを搭載したパワーユニットの時代に突入したことで、F1は持続可能性を追求する方向に舵を取った。ソーシャルメディアでの発信も活発化し、“Netflix効果”なども相まって新たな層のファンを取り入れつつあるF1には、新たなスポンサーが殺到している。

 実際、F1は首脳陣の尽力の甲斐もあってか、少しずつ再流行の兆しを見せている。しかし、何よりチームにとって良いニュースなのは、大企業が大金を投じてF1に関わりたがっているということだ。

 ここ最近で特に目立っているのは、“ハイテクスポンサー”による新しい波だ。彼らはF1を利用して自社のブランドを宣伝し、認知度を高めようとしているだけでなく、チームが活用できる製品やシステムを提供したいと考えているのだ。

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 今季のF1チームに目を向けると、アストンマーチンはIT企業のコグニザントとタイトルスポンサー契約を結んでおり、レッドブルのマシンにもソフトウェア企業オラクルのロゴが掲示されている。王者メルセデスにも、クラウドテクノロジーの開発を手掛けるTeamViewerがスポンサーに付いている。この短期間の内にこれほど多くの大手テクノロジー企業がF1に参入したことは決して偶然ではなく、いくつかの要因があると考えられる。

 まず第一に、F1のハイブリッド規則が現実世界が求めるものと合致しており、技術と持続可能性の面で最先端を行くようになったことが挙げられる。メルセデスのチーム代表を務めるトト・ウルフは上記の要因から、ハイテク企業がF1の世界に引き寄せられることは必然だと感じている。

「F1というスポーツは歴史的な価値観に基づいていると思うが、それでもとてもハイテクな世界であり、最高のマシンに乗った最高のドライバーが勝つ」とウルフは言う。

「様々な技術が導入されたことによって、F1は剣闘士が戦うようなスポーツから、いつの間にか戦闘機で戦うようなスポーツに変化した。持続可能性に関する話は我々が誇れることであり、他の産業にイノベーションをもたらすことができる」

「その一方で、ハイテク企業が我々のパフォーマンスを加速させてくれるということもある。単にマシンにステッカーを貼るだけという領域を超えて、お互いが本当に信頼できる“共同ミッション”へと移行しているのだ」

Lance Stroll, Aston Martin AMR21

Lance Stroll, Aston Martin AMR21

Photo by: Zak Mauger / Motorsport Images

 ウルフがそう語る通り、F1チームとハイテク企業との契約には、ハイテク企業が持つ新しい技術やアイデアをF1チームが活用するということも含まれている。アストンマーチンはコグニザントと協力してITインフラを強化。メルセデスはTeamViewerを利用してAR(拡張現実)の可能性を検討している。そしてレッドブルはオラクルと契約してAI(人工知能)や機械学習にこれまで以上に目を向けている。

 F1の世界ではデータが非常に重要であることから、データをうまく活用したチームが優位に立つことができる。このことについて、レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は次のように語っている。

「データとその運用方法は、我々の生命線である。レースの運営方法、マシンの開発方法、ドライバーの分析や選考など、我々が行なうあらゆることに影響を与えている」

「F1は進化しており、タバコ企業の時代は終わった。今ではOEM(他社ブランドの製品を製造する企業)の数も少なくなっている。F1は技術の最先端を行っており、このような技術的なパートナーシップがF1にやってくるのは素晴らしいことだ。その中でも最大の“大物”がオラクルなはずだ」

 F1がこのように幅広い技術分野に進出していることは注目に値する。英国プレミアリーグに所属するサッカーチーム、マンチェスター・ユナイテッドのスポンサーにもなったTeamViewerのCEOを務めるオリバー・スティールは、様々なケースで技術を応用できることがF1の魅力だと語った。

「F1のスポーツとしての本当の魅力は、多岐にわたる(技術の)用途だと思っている」とスティール。

「製造、デザイン、流通、監視、分析など、テクノロジー企業を惹きつけるものがあると思っている。つまりF1における(技術の)活用可能な部分の幅広さは本当に目を見張るものがある」

 とはいえ、いくらF1マシンが“戦闘機”のようなテクノロジーの結晶だったとしても、F1自体の人気上昇なしにはこのようなパートナーシップは実現しなかっただろう。

 先日行なわれた2021年シーズンの開幕戦は多くのスポーツチャンネルで記録的な視聴者数を叩き出しているし、それは現在のF1が多くの関心を集めていることの証明でもある。また、Netflixが手がけるドキュメンタリー『Formula1:Drive to Survive(邦題:栄光のグランプリ)』がもたらした影響も無視できないだろう。

 オラクルのチーフ・マーケティング・オフィサーを務めるアリエル・ケルマンは、Netflixの番組がもたらした影響と、最近のアメリカ企業とのスポンサー契約増加には関連性があると考えている。

「個人的に、アメリカ国内におけるF1の盛り上がりを目の当たりにしてきたので、アメリカのテクノロジー企業が(F1チームとの)より深い関わりを望んでいるのはごく自然なことだと思っている」とケルマンは言う。

「データ分析や機械学習に長けていることは、今や全てのF1チームにとって重要な資質となっている。このコンビネーションは、洗練された技術の活用を促進する優れたプラットフォームだ。また、F1は既に世界中に多くのファンを抱えているが、“Netflix現象”をはじめとする様々な理由から、アメリカにおいても急速に成長している」

「だからこそ、多くのテクノロジー企業が(F1を)企業戦略の重要な部分として捉えることになったのだと思う」

 そしてF1が世界に幅広く露出するグローバルなスポーツであることも、スポンサーの関心を集める理由となっている。そのため、前述の大手テクノロジー企業だけでなく、世間からあまり知られていないサイバーセキュリティ企業や暗号通貨取引所などもF1に参入している。

 マクラーレンのCEOを務めるザク・ブラウンは、これまでのキャリアで数多くのスポンサー契約を取り付けてきたが、企業にとってF1は、ブランド名を多くのファンに覚えてもらえるという点で魅力的だと語った。

「F1で見られる傾向のひとつとして、新しい技術や企業にとっての、言うなれば“早く有名になる”ためのプラットフォームになっているということだ」

 そうブラウンCEOは語った。

「認知度の高いブランドのいくつかは、これ以上の認知度を必要としないところもある。そんなブランドが求めているのは、このスポーツやドライバーが生み出す付加価値的なコンテンツだ」

「我々の新しいパートナーに目を向けても、彼らは急速に成長しており、自社とその能力が日の目を見るためのグローバルなプラットフォームを求めている」

「従来のメディアを通してもそれは可能だが、それにはかなりの費用がかかる。F1が2週間ごとに数百の国で数億の人に向けて配信されていることを考えると、(F1チームへのスポンサードは)非常に速く多くの注目を集めることができるため、かなり効率的な方法だ」

 F1とハイテク産業は今、まさにwin-winの関係にあると言えるだろう。

 

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