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インタビュー

現世界王者のジョアン・ミルが今シーズンタイトル防衛の可能性がまだある訳

2020年世界王者のジョアン・ミルは今シーズン第9戦を終了した時点で未だ目立った成績を収められていない。それにも関わらず、タイトル防衛の可能性はまだ十分にあると、motorsport.com独占のインタビューでその理由を語った。

Joan Mir, Team Suzuki

Joan Mir, Team Suzuki

Dorna

現世界王者のミル、「僕はメディア向けな人柄ではない」

 motorsport.comは2020年シーズンのMotoGP世界王者であるジョアン・ミル(スズキ)に対し、昨年タイトルを獲得した11初旬から3回に渡り、1対1でのインタビューを行なってきた。その中で2021年シーズンに対して厳しい質問が飛ぶと、「期待外れだった」とミルは語った。

 ミルは典型的なチャンピオン像ではない。このことは昨年チャンピオンを獲得した際に本人も明言している。彼は自分の感じるプレッシャーは新型コロナウィルスのパンデミックで苦しんでいる人々とは比べものにならないとその質問をはねのけた。

 数々の賞を受賞し、メディアに取り上げられるようになっても彼のプロフィールはその功績からしては、かなり地味なものである。

「僕はメディア向けな人柄ではないんだ」

 ミルはこのように第9戦オランダGPで口にした。

「僕は名声を得ることに興味はないし、その類のものは好きではない。僕はただバイクに乗ることが好きなだけだ。僕は僕の仕事をして、家に帰り、またトラックへ戻ってくるためにトレーニングをする。だからモナコでのF1に行ったりするようなことは好きじゃない」

「もちろん、そこへは行きたいけど、自分のことを優先にしたいし、生活を大切にするね。僕はまあ結構変わった性格で、メディアも必要とはしていない。そうした一面を周りも尊重して欲しい。誰しもが有名になりたいわけではないんだ」

 ミルにとってメディアは必要ないかもしれないが、彼はメディアの使い方を知っている選手だ。彼の言葉は疑う余地がなく、そのような選手は世界のスポーツ界を見ても稀である。彼は正直であるが、あきあさまに率直に述べたりはしない。いつも記事の大きな見出しになるようなことをいう訳ではないが、自分の言いたいことを伝える方法を理解している。

 それは2021年シーズン前半戦のスズキについての発言をみれば明らかである。

 2021年シーズンの初表彰台は第3戦でのポルトガルGPでの3位で、2007年のニッキー・ヘイデン以来となる開幕戦で表彰台を逃したチャンピオンとなった。その後の表彰台といえば、第6戦イタリアGPと第9戦オランダGPでの3位のみとなっている。また、ポイントランキングにおいてはトップのファビオ・クアルタラロ(ヤマハ)から55ポイント差の4番手でシーズン前半を折り返した。

 第7戦カタルニアGP予選を10番手タイムで終えた後、ミルはメディアに対し、“2021年のスズキのバイクは進歩していない”と語った。また、第8戦ドイツGPではスズキ向きのコースとされる中、予選では13番手、決勝レースでは9位と低調な結果に。そのレース後にミルは、『スズキのライバルメーカーは良くなっている』と述べた。そして第9戦オランダGPで表彰台を獲得した際には、世界中へ配信される記者会見で、現在持つパッケージではタイトル争いをするのに十分ではないと語った。

「他のメーカーがこれほど大きな進歩を遂げるとは思いもしなかった。おそらくスズキもね。これでは少し難しいかもしれない」

今シーズン苦戦するスズキ、その原因は

 ミルはスズキの哲学である革命よりも進化を求めることに理解を示し、新型コロナウィルスの世界的パンデミックにより、2021年シーズンのパッケージに対しコスト削減の余地しかなかったことへも賛同している。だが、このコメントは彼が必要としているものを少しでも早く手に入れようとしているようにも見受けられた。

「彼ら(スズキ)がこの冬にマシンを改善するための大きなステップを踏めなかったことが原因だ」

 motorsport.comがミルに対しマシンが必要なステップを踏んでいないというコメントについて詳しく問うと以下のように答えた。

「僕が思うに、これが真の問題なんだ。スズキの哲学は僕と共有できている。普通、彼らは新しいバイクを持って来たりはしないんだ。プレシーズンテストでは、ホンダ、ヤマハ、ドゥカティ、そしてアプリリアとKTMは様々なマシンを用意していた。でもそこでスズキはいつも新しいマシンを用意しないんだ。マシンではなく、新しいシャシーやスイングアーム、エンジンを用意し、一歩ずつバイクを作り上げていく。通常このことは上手くいくが、何かを持ちこまなければならない。それから、他メーカーがこれほどまでに進化を遂げるとは思いもしなかったね。それはスズキも同じだろう。2021年シーズンのエンジン開発が凍結されている中で2020年シーズンからこれほど進歩するとは劇的なことだ」

 ヤマハは2020年型よりもはるかに安定したYZR-M1を開発し、ドゥカティはカレンダー上のあらゆるコースでほぼ機能するバイクを手に入れた。また、アプリリアはコンセッション(優遇措置対象)メーカーであるため、オフシーズン中にまったく新しいバイクを開発することが可能で、2021年は大きな進歩を示している。また、KTMはイタリアGPで新シャシーを持ち込んだことで、シーズン開幕時から抱えていた問題を解決することができた。

「僕が思うに彼らは昨シーズンより素晴らしいことをしたわけではない」と、ミルは言う。

「失敗からは学んで、成長することができるが、重要なことは自分の持っているパッケージだと思う」

「昨シーズンはこのパッケージで(ほとんど)全てのレースにおいて表彰台に登れた。今シーズンはそれができていないんだ。他のライダー達も同じように、同等の努力をすれば、昨年はできなかった表彰台に近づくことができると思う。これは彼らが良くなった、悪くなったという問題ではない」

オフシーズンにはチーム体制に大きな変革

 またスズキは、オフシーズン中に大きな変革に見舞われた。チームマネージャーであるダビデ・ブリビオがアルピーヌF1チームに移籍するために退職し、スズキは彼の後任を立てなかった。

 スズキはブリビオに代わるチームマネージャーを決めることはせず、佐原伸一プロジェクトリーダーが事実上のトップとなり、さらに7名のチーム上層メンバーで統制を図ることとなった。また、motorsport.comの取材に応じた佐原プロジェクトリーダーはスズキがこの体制を今年中に変えることはないと明言している。

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「今シーズンに新しいチームマネージャーを迎えないことは明らかで、それは多くの思考と計画を必要とすることです。ほんの数ヵ月前にダビデが退任を発表したときにも、直前になって急な決定をしたため、今回はもっとゆっくりと進めたいと思っています」

 そう佐原プロジェクトリーダーは語る。

「私としては、チームの力学をもっと理解するための時間が必要です。マシンの技術的な部分を変更した場合、それが良いか悪いかはすぐにわかりますが、マネジメントの変更となると話は別で、その効果を実感し、状況を判断するにはかなり時間がかかります」

「来年に向けて何かを変える必要があるかどうか、どのように変えるべきかを判断するために、夏休みを利用してシーズン前半の評価をしたいと思います」

 ブリビオが去ってからは、いくつかの問題も生じている。第2戦ドーハGPではミルとジャック・ミラー(ドゥカティ)の間で接触が発生したが、レースディレクションは審議もペナルティは科さなかった。そしてスズキ側もそれに対して、抗議を行なっていなかった。

 ミルのマシンに対する不満は、ある重要な要素が欠けていることに起因している。スズキは、現在のグリッド上で唯一、“ライドハイトアジャスター”が装備されていないバイクとなっている。

 これは、ライダーがコーナー立ち上がりの際にバイクのリアを下げるために使用するもので、スタート改善を目指すホールショットデバイスに似たモノだ。チームメイトのアレックス・リンスによると、これはコースによって効果は変わってくるが、オランダGP(アッセン)では、このデバイスの有無で1周あたり少なくとも0.2〜0.3秒の違いがあったと言う。またカタールでは最大で0.5秒の違いがあったと考えているようだ。

 そしてスズキ勢はこのデバイスを備えていないことで、それだけのタイムを無駄にしていると言える。

 ミルは、サマーブレイク明け、後半戦の緒戦となる第10戦スティリアGPを真の意味でのシーズンスタートと考えており、そのためには同デバイスの有無はより重要になってくるはずだ。

 ブリビオがチームから離れたことで、バイクの開発に支障が出ているのではないかという疑問も浮上している。彼はイタリアのレースチームと日本のファクトリーとのコミュニケーションの橋渡し役として、重要な役割を果たしていた。

 そのことに対してミルは以下のように答えた。

「そうは思わない。確かに、ダビデはスズキで本当に素晴らしい仕事をしていたと思う。だけど、技術的な改善では他のチームのような大きなステップは見つけることができなかったと思う」

「だからといって、スズキが仕事をしていないということではない。そしてダビデはスペックを作っている人ではなかった。他のチームが進歩しているのを見て、僕たちも進歩し続けなければならない」

「日本スタッフも僕らが何を必要としているかをよく理解していると思う。ダビデがいることでアップデートが早くなっていたとは思わない。でも確かにアップデートが早くなることにこしたことはないよね。でも、彼ら(日本人)はそれをやっていると思うよ」

 今のところ、ミルは佐原プロジェクトリーダーのマネジメント手法を「信頼」していると話す。また、バイクへの失望を隠さないミルではあるものの、それ以上の言動はない。彼は冷静に対応し、スズキが技術的に上位に食い込んでくることを信じているのだ。

シーズンのカギは後半戦にあり!ミルがタイトル防衛の可能性を残す訳

 シーズンのカギは後半戦だとミルは言う。

「今できる限り接近することが重要だ。マシンを改良すれば彼らに近づくことができるからね。僕たちは素晴らしい結果を出せると思うし、楽しみだ」

「僕は強いし、チームは良い結果を出したいと思っている。これはいつでも大切なことだ。みんな一生懸命働いているから、確かに難しいことだけど、僕たちも負けてはいない」

 ミルはKTMのミゲル・オリベイラが比較的小規模なアップデートの助けを得て、ムジェロでの表彰台、カタルニアでの優勝と調子を取り戻したことも引き合いに出し、スズキが夏休み明けに成果を出すことができれば、タイトル争いはまだ終わらないという自信を見せている。

 後半戦に入ると、レッドブル・リンク、シルバーストン、アラゴン、ミサノ、COTAと、スズキ向きなサーキットが続く。またチームメイトとの争いという面でも、リンスは前半戦で転倒が続きランキングで低迷していることもあり心配事にはならないだろう。

 ミルは、自分が世界チャンピオンであることにこだわるのは「あまり生産的ではない」と感じている。

「チャンピオンになっても、プッシュしなければ再びチャンピオンにはなれない」

 また2021年シーズンのミルを見て、彼がプッシュしていないとは言えないだろう。これまでのところ、9番グリット以上でのスタートは無いものの、9戦中6度トップ5入り果たしている。ミルは2020年のチャンピオンシップにおいても安定した成績を記録することでタイトルをものにした。そのこともあり、8月に再開されるスティリアGPをシーズンの実質的なスタートと考えているミルにとっては後半戦の初戦となるこのGPは重要な意味を持つ。そして、その一貫性は今も失われていないようだ。

 もし、スズキがライドハイトアジャスターを近いレースで完成させ、ライダーたちがその点で失っていたタイムを取り戻すことができれば、他のライバルを心配する必要はなくなるだろう。なぜなら、ミルは彼の考え方とマシンの両方でチャンピオンの資格を証明し続けているからだ。

 

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