F1、大クラッシュを受け2023年のロールバーのテスト強化へ。FIAは事故の分析を完了
FIAは、F1イギリスGPで発生した周冠宇(アルファロメオ)の大クラッシュを受け、2023年からマシンのロールバーに関する要件を強化することを発表した。
写真:: Mark Sutton / Motorsport Images
FIAはF1イギリスGPで発生した大クラッシュを発生を受け、2023年のマシンのロールバーに対する要求を高めることを発表した。
決勝レースのオープニングラップで、周冠宇(アルファロメオ)のマシン右側に、ピエール・ガスリー(アルファロメオ)と接触しコントロールを失ったジョージ・ラッセル(メルセデス)のマシンが衝突。この衝撃で周のマシンはひっくり返り、コース上を滑走……ターン1のグラベルで飛び上がり、タイヤバリアの上を飛び越えた。
周はヘイロー(HALO)に守られたものの、エアインテークのあるロールバーは路面で”擦り下ろされ”ており、その安全性が疑問視されていた。
2022年のクラッシュテストには無論合格しているデザインではあるが、アルファロメオは今季唯一「ブレード型」のロールバーを採用している。
ブレード型のロールバーは、2010年に初めてメルセデスが採用。アルファロメオは2019年でもこのデザインを取り入れている。過去のマシンを振り返ると、F1チームはしばしば空力的な利点を求めてこのデザインアプローチを採ってきた。
FIAはクラッシュ後すぐにアルファロメオと調査を開始。7月14日(木)に行われたFIA技術諮問委員会(TAC)のF1チームテクニカルディレクター会議では、ポーパシング&バウンシング問題と並んでこの件が議題に挙げられた。
この会議について、FIAは翌15日(金)にこう記している。
「TACでは、シルバーストンで発生した周冠宇の深刻なインシデントについても議論が行なわれた」
「各チームは2023年に向けて、より厳格なロールバーを投入することに承諾した。FIAには関連する分析を完了し、ロールバーの安全性に関する新たな要件をチームに伝えると決めた」
Alfa Romeo C42 of Zhou Guanyu after his crash
Photo by: Mark Sutton / Motorsport Images
2022年のF1技術規定の当該条文である第12章4.1条には、次のように記載されている。
「主要構造は、詳細が第13章3.1条に記載されている静的荷重テストに合格する必要がある。さらに、各チームは縦方向の力が前方から加えられた際に同じ荷重に耐えられることを明確に示す詳細な計算結果を提出する必要がある」
なお、その第13章3.1条には、ロールバーテストの実施方法と、耐えるべき荷重に関する詳細が広範囲に渡り記載されている。
FIAの調査の結果、ブレード型ロールバーが禁止される可能性があるかどうかは、まだ分かっていない。しかしレギュレーション変更に関して、今年ブレード型のロールバーを採用していないチームもこの件には注視している。
ロールバーのテスト強化に関してコメントを求められたアルファタウリのテクニカルディレクター、ジョディ・エジントンは、オーストリアGPの際次のように語っていた。
「本当に歓迎すべきことだと思う。次のTACではじっくり検討することになり、FIAとアルファロメオもフィードバックをくれるだろう」
「賢明な議論が行なわれ、我々がどういう方向性に進みたいのかが見えてくるだろう」
アルファロメオがブレード型のロールバーを採用したことについて、エジントンは次のように語っている。
「最後に私があのようなロールバーで走らせるプロジェクトに関わったのは、2011年だったと思う。その理由は具体的なモノだったと記憶している」
「もちろん、我々はみんな同じテストを受けて合格している。それが条件だ。しかし、これらはTACで提起される議題で、今後どう展開していくのか、FIAの見解はどうなのかを見ることになる」
またレッドブルのチーフエンジニア、ポール・モナハンは、イギリスGPでのクラッシュから全てのチームが学びを得る部分があると語った。
「この件に目を向けないのであれば、少しばかり愚かなことだ」とモナハンは言う。
「我々は来るTACに参加するが、FIAはおそらくアルファロメオの協力を得て調査を行なったはずだ」
「このスポーツのために、この件に関する質問を受け付けているし、できる限り貢献したいと考えている。その時点ではそれが唯一の関心事という訳でもないだろう?」
「むしろ、荷重が蓄積していった時に何が起こったのか、アルファロメオだけではなくFIAもデータを共有してくれるのを待ちたい。全てのマシンを公平に評価する基準はあるのか? 全てのマシンがそれに耐えられるのだろうか?」
「それを推測する前に、徹底的に検証しなければならないことだ。我々のやり方と他とが違うというのは、少し間違っていると思う」
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