「今後も、スーパースポーツを生み出し続けなければ」成功するランボルギーニその”深層”

イタリアのスーパースポーツカーメーカー”ランボルギーニ”。彼らは、今後10年間で成功を収める準備が整っているように思える。その理由は……。

Lamborghini Aventador 2020

Lamborghini Aventador 2020

Divulgacao

 ここ数年、ランボルギーニは非常にうまく業務が進んでいるように思える。2019年は、同社の56年からなる歴史の中でも最も販売が成功した年であり、上半期を見ると、なんと前年比96%増のデリバリーを記録している。その大部分は、新型のSUV車”ウルス”の販売が好調だったせいでもある。

 ランボルギーニは、ニュルブルクリンクの量産車におけるレコードタイムを保持している。ファクトリードライバーであるマルコ・マペリが、アヴェンタドールSVJを駆って計測されたこのタイムは、6分44秒97。また、同社のレーシング部門は、2019年シーズンにはIMSAのGTDコンストラクターズタイトルと、インターナショナルGTオープンのタイトルを手にするなど、多くの業績を達成した。

 しかし他の多くの自動車メーカーと同様に、ランボルギーニも過去に多くの混乱に遭い、その都度乗り越えてきた。自動車産業のような競争の激しい業界では、成功は約束されたものではない。

 とはいえランボルギーニの現在の強みは、今後10年間、成功を手にするだけの様々な要因が整っているという点にある。それを見てみることにしよう。

■見た目以上のモノ

 1964年に、V12エンジンを搭載した350GTが最初に出荷されて以来、そのデザインと強力なパワートレインは、ランボルギーニの象徴となってきた。しかし700馬力のパワーを持つ”ファミリーセダン”が多く発表されると、スポーツカーメーカーと言えど、栄光にとどまることはできない。つまりウラカンEvo スパイダーなどであっても、そのシルエットと直線スピードのパフォーマンスにあぐらをかいているわけにはいかず、万能なパフォーマンス、そして日常の快適なドライブを実現できなければいけないのだ。

「これは根本的なことだ」

 ランボルギーニのチーフ・テクニカル・オフィサーであるマウリツィオ・レッジアーニは、昨年夏に我々に対してそう語った。

「車内のシステムにより、ドライバーが期待していることを、よりよく解釈できる。例えばスポーツドライブモードを選択した場合、何らか楽しいことを感じたいと思うはずだ。そのためリヤホイールのステアリングとトルクのベクトル化によって、ドライバーの要求に応じてマシンが制御可能なドリフト角を維持できるようにする。そしてこのシステムは、マシンをよりプッシュする時に自信をもたらすようにも設定されている。逆にドライバーがストラーダ・モードを選択した場合には、クルマを安定させ、マネジメントしやすいようにすることが考えられている」

 つまり、前後のトルク配分、サスペンション剛性、そして安定性など調整可能な特性の全ては、調整できるように整えられているのだ。

 自然吸気のV10やV12など、ランボルギーニが維持しようとする”神聖なモノ”がある。その一方で同社は、異なる形式のエンジンも試した。それが、ウルスSUVに搭載された、ツインターボを取り付けた4リッターV8エンジンである。このエンジンは650馬力を発生。ランボルギーニが市販車で、強制吸気のエンジンを採用したのは初めてのことである。ただ巧妙なトルク管理、そして10ピストンのフロントブレーキキャリパーや17.3インチのカーボンブレーキディスクを装備したことで、100km/hまでの加速はおよそ3.6秒、ノーマルのガヤルドよりも速いラップタイムを記録することができる。

 そう考えれば、ウラカンやアヴェンタドールなどの純粋なスポーツカー以上に、SUVのウルスが人気を博していることは、驚くべきことではない。そして実際に、販売の安定性とブランドの魅力を維持するために、今後数年は年間の生産台数を8500台に制限するという話もあった。

■イメージの共有

 説得力のある製品を作成するのは、ビジネスを成功させる上で重要なことのひとつだ。しかし、効果的にマーケティングをすることとは、まったく別の要素だ。

 ランボルギーニにとって幸運なことのひとつは、同社は自動車業界の中でも、ひときわ目立つ存在のひとつだということだ。「ランボルギーニ・リアル・ラバー」と呼ばれるこのような広告は、同社の魅力を示しながらも、人々の心の琴線を捉える……同社は、その広告を誰が見るのか、そしてなぜ彼らがそれほどまでにクルマを大切にしているのか、その感覚を強く持っていることを明らかにしている。

 ただその効果は、巧妙な戦略により実施されるコマーシャルを超越している。ランボルギーニは、インスタグラムに2460万人ものフォロワーを集めている。これはライバルメーカーであるフェラーリを30%以上上回る驚異的な数だ。彼らは人目を引きつけるデザインを活用しながら、レースドライバーやジェットセッターなど、魅力的な人物とブランドのイメージを結びつけることを可能にしている。

 また、ランボルギーニは関連商品も豊富だ。これは追加となる収入源だけとしてではなく、ライフスタイルを自動車と結びつけることを可能にしている。例えば最近ではレゴと提携し、ウルスとウラカンの2種類が発売されている。

■リーダーシップ

 こういった魅力的な製品は、実はランボルギーニには以前から揃っている。しかし現在の好調さは、会社の舵を取るCEO、ステファノ・ドメニカリの辣腕があってこそでもある。

 イタリアのイモラで生まれ育ったドメニカリは、幼少期の大半をエンツォ・エ・ディノ・フェラーリ・サーキット(イモラサーキット)で過ごし、レースの週末にはパドックでの業務を手伝ったりした。そして彼の履歴書には、フェラーリのF1チームを代表として率いた経緯も連ねられている。そして2014年からはアウディに移った。

「私にとってもっとも重要なのは、このビジネスの中にいる人たちなんだ。この会社は、信じられないほど情熱的で、献身的なチームなんだ」

 その2年後、ステファン・ウィンケルマンの公認として、ランボルギーニの舵取りの責を担うことになった。しかしそれは、あまりの重責だったに違いない。11年の在任中、ウィンケルマンは会社を着実に成功させ、最終的に年間の売り上げを倍増させたのだ。また、従業員の数も50%以上増やした。また現在の主力3モデルのうち、2種類の立ち上げを監督する立場でもあった。しかし記録的な売り上げを達成する前に社を離脱。ただそれを受けたドメニカリは、かなりうまく対処しているように思える。

「ウルスが生産台数の倍増に貢献することは、予想していた。そして我々は、これを実現するために順調に進んでいる」

 ドメニカリは昨年の4月にそう語っている。

「ただ個人的に言えば、それは常に人材についての話だ。我々は2018年の末までに1750人の従業員を抱えるようになった。そのうち70%は、過去5年間の間に採用された人々だ。それが我々のビジネスの中にいる人たちだ。私にとっては、最も意味があるね。そしてこのチームは、信じられないほど情熱的で、そして献身的なんだ」

■ランボルギーニの未来へ

 将来のことを考えるとアベンタドールの後継車となる全く新しいGTカー、そしてラインアップ全体のハイブリッド化が用意されているようだ。

「スーパーカーは、通常のクルマとは異なる。しかし、電動化とハイブリッド化は、我々の市場の一部になるはずだ。研究開発チームが、将来のクルマのためにこれらのことを研究している、それは基本的なことだ」

 そうドメニカリは説明する。

「電動化に向けた最初のステップは、ウルスと同様、次世代のスーパースポーツカーをハイブリッド化することにある」

 限定生産のシアンは、ランボルギーニの次のフラッグシップモデルを先取りしたモノではない。ただこのハイブリッド・パワートレインは、ランボルギーニの6.5リットルV12エンジンと48ボルトのハイブリッドシステムと組み合わせて、819馬力の出力を実現する。そういう意味では、中身のプレビューになる可能性もある。

 いずれにしても、今後もランボルギーニは、心を競わせ、目を見張るような製品を生み出すという、同社の伝統に従い続けることになるはずだ。

「将来も、我々のラインアップは、スーパースポーツでならなければいけないのだ」

 そうドメニカリは結論付ける。

「それは、我々が集中し続けなければならないことなのだ」

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