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欧州で勝てる”ダイヤの原石”を見つけ出せ。日本カート界に新風を吹き込む「EXGEL OK CHAMP」の取り組みに迫る

FIAが定めるカート最高峰カテゴリー”OK”に新風を吹き込む「EXGEL OK CHAMP」。タイトルスポンサーを務めるEXGELの小川要社長は、シリーズの大きな目標として「ヨーロッパで勝てるドライバーを送り出すこと」を挙げている。その理由とシリーズ発足に至るキッカケを訊いた。

グリッドの様子

写真:: EXGEL Motorsport

 四輪モータースポーツキャリアの出発点は? そう訊かれた際、多くの人が脳裏に思い浮かべるのはカート(Kart)だろう。F1ドライバーからラリードライバーに至るまで、現在では四輪トップカテゴリーを戦うドライバーのほとんどが、その出発点としてカートを経ている。

 モータースポーツの本場であるヨーロッパから遠く離れた日本、フォーミュラを始めとする上位カテゴリーへの入り口として様々なカートシリーズが存在してきたしかし、長らく界を牽引してきたブリヂストンがカートタイヤの供給を2022年限りで終了するなど、日本のカート界は大きな変革期の中にある。

 ただ、その中にひときわ異彩を放つカートレースがある。それがヨーロッパ志向強い「EXGEL OK CHAMP」2023年シーズンはカートの最高峰カテゴリーであるそのOKクラスに加え、よりベーシックなエンジンを使用した「MOTUL KT CHAMP」も併催し、『チャンプカートシリーズ』として発展を遂げようとしている

「ヨーロッパで勝つまで、諦めずにドライバーを発掘していきます」

 そう力強く語るのはシリーズの発起人であり、タイトルスポンサーという形でチャンプカートシリーズを全面バックアップするEXGELの小川要社長だ。

 EXGELは島根県に拠点を置く株式会社 加地が展開する車いす・介護用クッションやデスクワーク用クッションといった商品を展開する、ヘルスケア用品が主力のブランドそうした企業の社長がなぜカートシリーズを始めるに至ったのか、その経緯を尋ねると次のような答えが返ってきた。

医療・福祉分野からスタートした我々は元々、自社開発素材である”EXGEL(エクスジェル)”の可能性を追求する中でモータースポーツ分野に参入し、20年近く前から商品をリリースしてきました」

「それをプロモーションするひとつの手段として、カートレースへの協賛活動が始まりました。その中から福住仁嶺選手のような是非応援したいと思わせてくれる抜きん出たドライバーが出てきて、その子たちをヨーロッパに送り出すサポートしたところが現在に至るキッカケでした」

「彼らの活動を支援する中で、ヨーロッパのカートレースは日本のモノとは相当違うということも自分自身学んできました。そして、これから日本の若い子たちがヨーロッパへ出ていくためにどういうことができるかと試行錯誤してきました

「大きな目標としてヨーロッパで勝てる子たちを輩出していきたいですし、そういう子たちが成長過程において健全に競えるカテゴリーはやはり必要です」

決勝レースの様子

決勝レースの様子

Photo by: EXGEL Motorsport

 EXGELはEXGEL OK CHAMP発足に至るまでに、カート体験イベントやOKクラスの登竜門となるカートシリーズへの協賛、福住や笹原右京、佐藤蓮といった新進気鋭の若手ドライバーを支援してきたまたドライカーボンベストを始めとするカート用品に加え、ドライバーの首を保護するHANSデバイスのパッド展開し、現在では日本のみならず海外ドライバーからも注目されている

 小川社長自身幼少期をモトクロスと共に過ごし、学生時代はカートレースに明け暮れた人物。カートシリーズを始めたもうひとつの理由として、カートレースを観る・走る楽しさを広く周知したいという想いがあったという。

「カートという乗り物の面白さをもっと知ってもらいたいという想いがずっと根底にありました」

「カートというのは四輪モータースポーツの原点であり、到達点でもあります。モータースポーツの本質的な面白さが全て凝縮されている乗り物であり、競技だと思いますF1ドライバーもトレーニングでカートに乗ったり、自分のチームやブランドを立ち上げることも多いですね。頂点を極めたドライバーもみんなカートが大好きで、カートに戻ってくる。だからカートは到達点でもあるんです

また、モータースポーツへの恩返しと思っている部分もすごく大きいですね。自分自身何かしらの形でモータースポーツにずっと関わってきましたが、若い頃カートのチームに入ってレース活動を行った経験が、自分自身を大きく成長させてくれたという想いがあります。自分が得たモノは何倍かにして返していかないといけないと真剣に考えています

「速い奴はどのタイヤを履いても速い」あえて低グリップのタイヤを採用する理由とは?

支給されたタイヤを運ぶロニー・クインタレッリ

支給されたタイヤを運ぶロニー・クインタレッリ

Photo by: EXGEL Motorsport

 日本のカート最高峰シリーズである全日本カート選手権は2022年まで長きに渡りマルチメイクのハイグリップ“スペシャル”タイヤで競われてきた。それに対し、EXGEL OK CHAMPではグリップ力では劣る市販スペックのタイヤワンメイク指定している

 ここにはある意図がある。日本のカートコースは比較的路面コンディションが良く、使用されるタイヤもハイグリップのモノであるケースが多かったため、それに適したドライビングスタイルが身につく一方ヨーロッパではカートのトップカテゴリーもワンメイクタイヤが使用され、日本ほど整備されていない路面も多い。この違いが、日本からヨーロッパに挑戦するドライバーの最初のハードルになることも少なくなかったという。

 そこでEXGEL OK CHAMPでは、ブリヂストン、ダンロップ、ヨコハマと市販タイヤ銘柄3種各ラウンドごとに供給(ブリヂストンはカートタイヤの供給を終了も、EXGEL OK CHAMPは2023年使用分を昨年の段階で確保)。「速い奴はどのタイヤを履いても速い」という声が関係者から挙がる通り、この市販タイヤで走ることで、ヨーロッパでのレースに向けた事前準備と各ドライバーの純粋な速さを引き出すことができるフォーマットとなっている。

「タイヤは大事なパーツですが、どんなタイヤを履いてもすぐに速く走れるということがステップアップしていく過程で重要になます」と小川社長は説明する。

「ヨーロッパの選手は日本ほど環境が整っていない中で競争しなければいけないことがあります。日本人のドライバーが全くグリップしないと感じるようなコンディションに、元々ヨーロッパのドライバーは慣れているんです

例えば極端に気温が低いウェット路面などでも、ヨーロッパの選手はアウトラップからものすごいスピードでコーナーに進入していきます。それによりコースアウトなども多く目にしますが、まず最初に限界を越えてみて、そこから引き算でアジャストするドライバーが多いですね。それに対し日本人ドライバーはグリップするまで待って、少しずつペースを上げていく……ここで大きな差がついてしまうシーンを、私自身何度も見てきました。日本ではせいぜいコンマ2〜3秒の差しか経験してこなかったドライバーが、ヨーロッパではいきなり2〜3秒置いていかれるといったこともあります

「だからこそ、ヨーロッパからそう遠くないことを日本でもやっておく必要があレギュレーションや色々なマテリアルの選択も含めて工夫してきた結果、EXGEL OK CHAMPの形が出来上がってきたのです

ダイヤの原石をヨーロッパへ。EXGEL OK CHAMP王者に与えられる挑戦の機会

2022年のEXGEL OK CHAMP王者の加藤大翔

2022年のEXGEL OK CHAMP王者の加藤大翔

Photo by: Motorsport.com / Japan

 また、EXGEL OK CHAMPではシリーズのスポンサーから様々なスカラシップが与えられることも若手ドライバーを惹き付ける大きな特徴のひとつ。フォーミュラカーでのプライベートテスト支援に加えて、EXGELからは世界選手権クラスのカート大会参加の”切符”が手渡される。直近では、2022年EXGEL OK CHAMP王者加藤大翔イタリアのサウスガルタ・ウィンターカップへ参戦している

「我々としてはヨーロッパで本当に勝てるレベルのドライバーになってもらうための経験を積んでほしいという想いがあります。そのため、ヨーロッパで出場させるレースも世界選手権やそれに准ずるメジャーレースになります」

 小川社長はそう言う。

「日本でトップの子でもヨーロッパに渡るとレベル差があるというのが現実です。しかし、私は勝つまで諦めずにドライバーを発掘していきたいと思います」

「ウィンターカップはマックス・フェルスタッペンやシャルル・ルクレール、ジョージ・ラッセルなどのF1ドライバーが過去に勝っています。全員がF1へ行ける訳ではありませんが、F1に行く人はカート時代にも勝っているということは言えます」

「そしてヨーロッパのカートを経験すると、一緒に競い合ったドライバーたちを基準に自分自身を測る『ものさし』ができるんです。カート時代に手に入れたそのものさしは、フォーミュラに転向してからも必ず役に立ちます。カート時代に繋がりを作っておくことはすごく大事だと思うし、刺激になると思います」

「加えて、語学とコミュニケーション能力の重要さにも気づいてもらえるような環境づくりにこだわっています。どうしても日本人は海外に行っても日本人だけでかたまってしまいがちです。そのような環境どもを連れて行っても、文化の違いにすら気づかずに帰ってきてしまいます。それでは意味がないですから

しかしそういった環境誰かが与えてあげない限り、原石みたいな子がいてもキャリアに結び付けられないことがあります。だからこそ我々は原石を見つけやすい環境を作って、そういった子が出てきたらすぐにヨーロッパに繋げていくというやり方を採っています」

EXGEL社長 小川要

EXGEL社長 小川要

Photo by: Motorsport.com / Japan

 そして2023年シリーズ開幕に向けて、小川社長は次のように意気込んだ。

「順調にエントリーも集まってきていますし、MOTUL KT CHAMPも含めてチャンプカートシリーズ全体として、さらに盛り上げを図っていきます。より幅広くカートを知って頂くキッカケにしていきたいですね今年はさらにもう一段階ステップアップしていきます

 当該年度14歳から出場可能なEXGEL OK CHAMPがまだ見ぬ若い才能の発掘に重点をおいたクラスである一方、MOTUL KT CHAMPはあえて当該年度16歳から出場可能と年齢層は高め。蓋を開ければその狙い通り、エントリーリストにはスーパーGTの現役ドライバーや、かつて国内カートレースでトップに君臨していたベテランなど、多彩なメンバーが揃った。この新シリーズにも注目だ。

 EXGEL OK CHAMP1ラウンド2レース制を採用し、年間3ラウンドが鈴鹿サーキット南コースで開催。2023年は2月26日に第1ラウンド、7月16日に第2ラウンド、8月13日に最終ラウンドの開催を予定しており、EXGEL OK CHAMPとMOTUL KT CHAMPは同日開催となる。レース情報SNSでも随時発信されるので、是非チェックしてみてほしい。

 
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