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企画『eスポーツを知る』第3回:eレーサーはリアルレーサーと相反する存在なのか?

eレースの世界を極めし者たち。彼らはリアルレースのドライバーたちとは全く異なる存在なのか? そんな彼らの生態に迫るため、グランツーリスモのトップ選手である山中智瑛と宮園拓真に話を訊いた。

宮園拓真

写真:: Polyphony Digital

 新型コロナウイルスの蔓延を受けた緊急事態宣言に伴う外出自粛により、2020年のモータースポーツは開幕が延期されたままだ。この間、リアルなイベントの代替として注目されたのが、バーチャルレースだった。バーチャルレースは、実際に人間が集合することなくインターネットを介してレースができるので、まさに自粛生活に適していた。サーキットを走れず時間を持て余していた国内外のリアルレーシングドライバーたちが続々とバーチャルレースに参入、一気にリアルとバーチャルの垣根は低くなった。新しい時代が訪れそうな予感がする。

 リアルレースのファンにはまだ馴染みが薄いかもしれないが、バーチャルレースの世界にはすでに世界的にも名前が通用するスター選手がいる。有名なのは2018年度FIAグランツーリスモ選手権の世界チャンピオンとなったブラジル選手、イゴール・フラガだ。彼はリアルレース界でも注目されており、今年はレッドブル・ジュニアチームに抜擢されてFIA-F3選手権を戦う予定だった。

 日本にも世界レベルで戦う有力選手がいる。今回は、その中から山中智瑛と宮園拓真を紹介しよう。1993年生まれ26歳の山中は、フラガに「尊敬する選手の1人」と言わしめた日本選手勢の代表格。一方宮園は今年オーストラリアで開催されたFIAグランツーリスモ選手権ネイションズカップで日本選手として初めて優勝を飾った、今年20歳になる新進気鋭である。

 山中は5歳の時にグランツーリスモを始めたという。リアルレーサーがレーシングカートに触れるような年代である。

「中学生の時にオンライン対戦ができるようになり、全世界のプレーヤーと競い合えるようになったことがキッカケでのめりこみました。当初はどんなに頑張っても1周3秒遅いタイムしか出すことができず、あまりにも悔しかったので本格的に速く走ることを追求し始め、約1年続けた結果、国内ではトップ10には入ることができるようになり、大学1年生の時には初めてアジア大会に出場しました」

 まさに若いリアルレーサーが世界に触れ、自分を高めていく過程に重なる話だ。一方、宮園も幼稚園の頃にグランツーリスモを始めているが、本格的に取り組んだのは現行グランツーリスモSPORTでワールドツアーが開催されることを知った2018年3月、つい2年前のことだという。

「海外(特にヨーロッパ)に行くことが夢だったので、ここで頑張れば手が届くかもしれないと思い、オンラインシーズンに出場し始めたのがきっかけです。大学入学試験の関係で、他の選手と比べて始めた時期が遅かったこと、オンラインで対人レースをした経験がほとんどなく、バトルの駆け引き等の技術が全くなかったことなどで苦労しました。速さの面に関しては数ヵ月でかなり成長できましたが、バトルに関してはある程度上手になるまでは1年半以上かかったように感じますし、まだまだ他の選手と比較しても足りないと思います」

 本格的に活動するのが遅かったにもかかわらず宮園はわずか2年のうちにめきめきと実力を伸ばし、今や世界のトップを争うまでになった。山中は宮園について「天賦の才能を持っている」とまで評する。しかし世界と戦う過程でバトル経験の不足を感じるなど、若いリアルレーサーが世界に触れて戸惑うのと同様の経験をしているのが興味深い。

■eレースへの取り組み方は、さながら“プロフェショナル”

山中智瑛

山中智瑛

Photo by: Polyphony Digital

 彼らは普段どれくらいの練習を積んでいるのだろうか。社会人である山中はこう語る。

「平日は仕事が終わった夜、休日は時間の許す限り練習を行なっています。基本的に毎日プレイするようにしています。平日は3時間程度、休日は6〜8時間は練習をしています。MSY株式会社というゲーミングデバイスの販売を取り扱う会社に勤め、社会人プロゲーマーとしてサポートを受け、仕事との両立をしています」

 山中が務めるMSY株式会社には『TeamGRAPHT』というeスポーツアスリートやクリエイターをバックアップする組織があり、山中はそこに所属する選手である。こうした体制もリアルレース界によくあるものだ。

 学生選手の宮園も、学業の合間を見て練習を重ねているという。

「学業やアルバイト等で限られているので、その限られた時間の中でいかに効率よく練習を行なうかが大事だと感じています。現在週4日、夜にレースがあるのですが1回のレースにつき合計で2〜3時間程度練習を行なっています。合計すると1週間で10〜15時間、1日あたりだと2時間ぐらいになると思います」

 練習したくとも練習する機会を作りにくいリアルレーサーに比べると、バーチャルレーサーは恵まれているとも言えるが、練習を重ねるにはそれなりのコンディション管理も求められるようだ。

 山中は「目のケアについては、特に気を付けています。長時間画面を見続けると目の疲労が溜まって、それが原因で集中力が乱れパフォーマンスが低下してしまうことがあります。目に負担の少ないメガネを着用、アイマッサージやトレーニングなどを行ったりするなど疲労が溜まりにくくなるように心がけています」と言い、宮園は「ストレスがたまっている状態だったり気分の良くない状態でプレイすると経験上良い結果を残すことは難しいので、現状だと定期的にランニングをしたり、友人と定期的に通話をして普段通りの生活を行なうことをなるべく心がけています」と言う。まさに"アスリート"である。

■バーチャル→リアル、リアル→バーチャルへ移行は可能なのか?

Igor Fraga, DR Formula

Igor Fraga, DR Formula

Photo by: acisportitalia.it

 急激に普及しつつあるバーチャルレースだが、現状を彼らはどう見ているだろうか。山中は戦い続けられる限りeレーサーとして活動していきたいと語る。

「スポーツとしては歴史が浅く世間からはまだスポーツとして認知されていない点、同じeスポーツでもジャンルによって格差があり、(レースでは)プロ選手としてのみの活動で生きていくのは難しいという課題があります。バーチャルレースは誰でも気軽に始めることができて、レースの経験値をリアルレースの何倍も速いスピードで貯めることができるので、(リアルレースについても)眠っている才能を開花させるきっかけを作ることができるはずです。また、逆にリアルレーサーも、強烈なGに耐えながら数時間のレースを戦う集中力を持っていますから、本格的に参戦をしたらグランツーリスモの世界でトップを争うことができると思います」

 宮園は、普及が進んでいるとはいえ、バーチャルレースの認知はまだまだだと言う。「レースゲームやクルマに詳しくない友人は、自分の出場したワールドツアーのレースを観ても何がすごいのかがよくわからないと言います。レースの面白さや迫力を魅せるという面で大きな課題があるのかなと感じています」

 もっとも、こうした意見はリアルレースでも往々にして聞く状況なので、モータースポーツ全体の課題と言えるのかもしれない。フラガのように、バーチャルレースからリアルレースのトップ選手が今後も生まれるか、その逆はあるかと聞くと宮園はこう答えた。

「バーチャルからリアルに移行する場合、車幅感覚やタイヤの使い方、バトルの仕方などの部分で経験値が圧倒的に不足しています。逆にリアルからバーチャルへの移行だと、実車で得られるGやタイヤに関する情報等が存在しないし、レースゲーム特有の走らせ方もあるので、適応するには時間が必要だと思います。イゴール(フラガ)は幼少の頃からリアルでもバーチャルでもレースをしていたからこそ両方で結果を出せたのだと思います。どちらの移行も、適応するための時間が必要ですが、結果を残すことはどちらも不可能ではないと思います」

 改めてバーチャルレースの第一人者の話を聞いて、モータースポーツにおける"バーチャル"と"リアル"の類似点、相違点が見え、双方の急速な接近によって生まれるかもしれない新しい"モータースポーツ"の形が見えてきたような気がした。

 

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