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企画『eスポーツを知る』第5回:グランツーリスモが見据える、“次のステージ”

グランツーリスモシリーズの生みの親、山内一典プロデューサーは新作の『グランツーリスモ7』発売にあたり、意外な発言をしている。今作は近年注目を集めているオンラインレースよりも、オフラインのモードを主体とするというのだ。しかしモータースポーツの未来を考えれば、これは大きな意味を持つはずだ。

#23 Ronnie Quintarelli, #39 Juichi Wakisaka

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GTA

 新型コロナウイルス蔓延に伴う活動自粛期間、世界中の様々なモータースポーツカテゴリーでオンラインシミュレータを用いたバーチャルレースイベントが開催され、実際にサーキットを走れないプロドライバーたちが参戦して熱戦を見せてくれた。リアルレースのトップドライバーたちがバーチャルレースでも非凡な才能を示すことに驚いたファンも少なくないだろう。

 そもそも、プロドライバーたちのうち少なからぬ数は、何らかのパーソナルシミュレータを自宅や事務所に導入して日常のトレーニングに使っており、リアルレースとバーチャルレースの垣根は非常に低くなっている。いきなりのバーチャルイベント出場でも、戸惑うことなく対応ができたようだ。もはやバーチャルだ、リアルだと区別する時代ではなく、ますます両者の融合が進み、バーチャルはひとつのカテゴリーとして確立し、モータースポーツの形が変わり始めているのだ。

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 一方で、バーチャルレースについては非常に興味深い動きも見えてきた。現在、バーチャルレースのプラットフォームとして用いられているのは、『iRacing』、『rFactor』、『Assetto Corsa』、『グランツーリスモSPORT』などのオンラインレーシングシミュレータソフトである。そのうちグランツーリスモを開発しているポリフォニーデジタルは、今年末に予定されているプレイステーション5発売に合わせ、新しい仕様のグランツーリスモ7を発売すると発表した。

 現時点でグランツーリスモ7の詳細は明らかにされていないが、同シリーズの生みの親である山内一典プロデューサーは「グランツーリスモSPORTはオンライン機能を使って様々なオンラインレースのプラットフォームとして使っていただきました。これに対し新しいグランツーリスモ7は、オンラインレース機能よりもキャンペーンモードを主体としたものになります」と意外な発言をしているのだ。

 キャンペーンモードとは、実在の対戦相手とインターネットを介してオンラインレースをするのではなく、ソフトの中に組み込まれたAIカーとレースをする機能である。せっかくオンラインによるバーチャルレースでプロドライバーたちが闘うことが広く認知され、バーチャルレースがさらに発展しようというときに、グランツーリスモはなぜオンライン機能よりもキャンペーンモードを主体にしたソフトへ変貌しようとしているのだろうか。山内プロデューサーは言う。

「グランツーリスモSPORTのオンライン対戦には全世界で800万人のユーザーが参加しています。でもその中でトップを目指してガチで戦っているのは5万人。そこでの闘いはあまりにもレベルが高くなっています」

GT World Finals

GT World Finals

Photo by: Gran Turismo via Getty Images

 実際、グランツーリスモでレースをした経験のあるユーザーならば、世界のトップクラスが集うワールドツアーで繰り広げられるレースのレベルの高さに驚愕したことがあるはずだ。そこで繰り広げられるレースは、一般的なユーザーにはとても太刀打ちができないほど速く正確な、きわめて高いレベルで推移していて、言ってみれば別世界となっている。

 この距離感はちょうど、実際のサーキットを走るアマチュアレーサーがF1ドライバーのパフォーマンスに驚いて腰がひけるのと似ている。サーキットを走るアマチュアたちが全員プロレーサーと戦おうと思っているわけではないし、プロを目指しているわけでもない。と言うよりもほとんどのアマチュアレーサーたちは、自分たちの能力相応のレースでそれなりに楽しめれば十分だと思っているのだ。

 そもそも近年、モータースポーツのライセンス取得者が減少しているという。若者の自動車離れも影響しているだろうが、様々な安全装備などの義務づけが進んだこともあり、モータースポーツ入門者が強いられる初期投資額が上がったことも一因だろう。競技車両を準備しサーキットへ運搬して走行するには手間も時間も費用もかかる。リアルのモータースポーツを始めるためには相当な覚悟が必要で、手軽なレジャーが多くなった現代にあって、モータースポーツ入門者が減少しているのは当然かも知れない。

 しかしF1グランプリを頂点にモータースポーツに関わる選手層はピラミッドの形をしていて、入門者やホビーでレースを楽しむアマチュアレーサーたちがピラミッドの底辺となって全体を支えているのだ。そのとき底辺のアマチュアドライバーたちが、モータースポーツへの入門に尻込みして入門を断念しピラミッドの底辺が崩れ始めたとしたら、その影響はいつかピラミッドの頂点にまで及んでしまうことだろう。

 今、モータースポーツ界は競技ライセンスを取得しようと考える入門者やアマチュアレーサーを増やさなければならない時である。と言って、リアルの競技車両をサーキットで走らせるには前述したようにかなりの覚悟が求められる。

 だからこそ山内プロデューサーは、「グランツーリスモSPORTはオンラインレースを追求してプロ寄りになったので、新しいグランツーリスモ7ではより多くのユーザーがレースを楽しめるキャンペーンモードを主体にしよう」と考えたのだ。この決断にはバーチャル、リアルを含めたモータースポーツ界全体の未来を考えると大きな意味がある。

「グランツーリスモ7は、みんながスターになれるソフトにします」と山内プロデューサーは言った。iRacingを初めとする他のシミュレータソフトが、リアリティを追求して先鋭化する反面、初心者には操るのが難しくなっているのに対し、グランツーリスモは初心者が楽しめるソフトになろうとしている。それはつまり、モータースポーツ初心者が手軽にサーキット走行を試し、その楽しさを知るためのツールである。グランツーリスモをきっかけにサーキット走行の奥深さ、楽しさ、爽快感を知れば、それなりの覚悟をしてリアルのサーキット走行へ踏み出すユーザーも増えるに違いない。

 バーチャルレースならば家庭用ゲーム機とソフトがあれば簡単にレースを始められる。一方でバーチャルレースは、近年はプロ選手がトレーニングに用いるほどリアリティが上がってきた。新型コロナ蔓延に伴うステイホーム期間、バーチャルレースはプロ選手たちによるハイレベルな闘いを観戦出来る場として認知が広がったが、今後はもっと積極的に、モータースポーツ入門のひとつの入り口として機能し、選手層のピラミッドを充実させるための下支え面でも大きな役割を担うことになるのだろう。

 

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