“日本品質”にアジアからの熱視線。新生カートレースEXGEL MAXチャンプが海外勢の参戦を歓迎する理由とは「ごちゃ混ぜでやることに意味がある」
ROTAX製カートエンジンを使用するEXGEL MAXチャンプには、瑞浪サーキット開催の大会を中心に、アジア諸国から多数の参戦が見られた。何が彼らを惹きつけているのだろうか?
Group photo
写真:: EXGEL Motorsport
2024年、新たに発足したカートレース「EXGEL MAXチャンプ」。シリーズを全面バックアップするEXGELは国内カートレースのグローバル化という狙いの通り、日米交換留学プログラムの実施だけでなく、アジア諸国からのドライバーの参戦も積極的に促進しているという。
車いす・介護用やデスクワーク用のクッションを手掛けるEXGEL。現在はそれだけでなく、HANSデバイス用パッドやカート用プロテクターなども展開するなど、モータースポーツでのシェアも拡大し、カートレースへのサポートも積極的に行なってきた。
EXGELは今年、オーストリアの老舗エンジンメーカーであるROTAXのエンジンを使用した、ROTAX MAXカートシリーズに協賛を開始。ROTAXはヨーロッパ選手権をはじめ世界各国で統一規格のシリーズが開催されており、その頂点として”グランドファイナル”と呼ばれる世界大会が年に1度開かれている。そして同様にROTAXエンジンを使う日本のシリーズのひとつが「EXGEL MAXチャンプ」だ。
鈴鹿サーキット南コースやフェスティカサーキット瑞浪が舞台のEXGEL MAXチャンプは、シニア、ジュニア、ミニの3クラス制で構成されているが、フェスティカサーキット瑞浪で開催されたミニクラスは、実に国際色豊かな顔ぶれとなった。その開幕戦では、出場ドライバー全33名のうち、14名が中国、韓国、タイからの参戦と、EXGEL MAXチャンプにアジアから熱い視線が注がれている。
EXGELの小川要社長は、COVID-19の影響が減り、アジア諸国の経済力が高まる中で、日本のカートが選択肢のひとつに入ってきたと説明した。
「ひとつはパンデミックが終わったということがあります。また環境で言えば向こうは成長市場になりますし、豊かになってはるかに多くの選択肢を持っています」と小川社長は言う。
「中国には子供たちにレースをさせる環境としてヨーロッパや日本を無理なく選べる人たちが多数いて、タイなどでも同様の人たちが増えています」
Race start
写真: EXGEL Motorsport
「そのような、ヨーロッパでも日本でもレースをさせられる人たちにとって、今の日本のカートレースがどのように見えているのか、徐々に理解できるようになってきました」
「彼らから見て日本が選択肢に入ってきたというのは、パンデミックの問題や円安など環境が変化している中で、すごく良い流れになったと考えています」
その中で小川社長としては、モータースポーツの本場ヨーロッパやアメリカといった大きな市場だけではなく、質の高い日本のレースが成長の場としてアジア諸国のドライバーから選ばれる流れを確立していきたいと言う。
「これからF1などのレースを目指そうという子は、アジアも含め基本的にはヨーロッパを見ています。そういったファミリーは、費用的にも問題なく行かせてあげることができます」と小川社長は語った。
「しかし日本のレースは運営方法や使っている道具など、そういった部分に関しては非常にレベルが高く環境が良いんです。東アジア、中央アジアの人たち全員がヨーロッパに向くのではなく、1度日本のレースを経験してからヨーロッパに参戦していくような、そんな流れを作れないかと考えています」
「そこからヨーロッパに行きたい子もいれば、アメリカに行こうという子も出てくると思います。そのステップアップの過程で、日本での経験を活かしてもらいたいというのが一番の願いです」
またEXGELは、昨年からアメリカのROTAXシリーズへのスポンサー活動を本格的に開始したことを期に日米交換留学プログラムを開始。8月に鈴鹿で開催されたスペシャルラウンドにはアメリカ選抜のドライバーが参戦し、同じく8月にアメリカで開催されたUS TROPHY FINALにはEXGEL MAXチャンプで賞典を掴んだドライバーが参戦した。
ROTAXの日米アンバサダーに就任した日本のスーパーGT/スーパーフォーミュラドライバーの笹原右京は、日本生まれのドライバーにとっても、“外の世界”を知ることができる環境は「ありがたい環境」だと考えている。
「中国をはじめ色々な国の選手たちが日本に来られているというのは、日本のドライバーたちにとってとてもありがたい環境なんです」と笹原は語る。
「自分がカートをやっていた時は周りに日本人しかいませんでした。でも今は自分たちが知らない世界を知っている人たちが日本に来ている訳ですから、それを活かせるようにしなくてはいけませんし、アメリカと日本の交換留学などの制度は素晴らしいことだと思います」
「自分がF1を目指したい、ヨーロッパのレースに出たいと思った理由は、世界を知るキッカケがあったからでした。11歳の時にスカラシップでイタリアのレースを見て、翌日にテスト走行ができるというプログラムがありました。そこには今まで見たこともないような環境があって、こういうドライバーたちがいて、こんなレベルの高いレースをしている、世界にはこんな人たちが沢山いるんだということを知りました」
Ukyo Sasahara
写真: EXGEL Motorsport
「そこからどう思うかは人それぞれかもしれませんが、僕はその人たちと戦いたい、自分がどこまで通用するのかやってみたいと感じて、それが1番の原動力になりました」
「僕が初めてのイタリアで受けた強烈な印象を、今は日本にいながらにして知るチャンスができてきています。もしかしたら、知った瞬間に視野が広がり、すごい才能が出てくるかもしれません」
ヨーロッパも知り、メンタリティや発想の異なるアジア諸国のドライバーがEXGEL MAXチャンプに参戦することで、迎え撃つ日本のドライバーも従来とは異なる刺激を受けているという。
「メンタリティや発想が違います。特別な才能を持っている子だけではなく、アベレージの子もいるので、毎ヒートごとに色々なことが起こります」
小川社長はそう語る。
「教育でもスポーツでも、日本は均一化を求めるところがあるので、カートの子供たちを見ていても平均的に上手ですね。ただ、飛び抜けた選手がなかなか出てきづらい。そこに、全く発想やメンタリティの違う海外の選手が入ってくると、途端にレースの質が変わってきます。それを見ていると、ごちゃ混ぜでやることにすごく価値があると思います」
「グローバルに通用するスキルを持ったドライバーは、日本しか知らない子供たちの発想を遥かに超えた動きをしてくることもあります。それは私としても1番目指したかったところですし、そういうレベルの子たちが日本に来てくれるというのは、チャンスだと思っています」
「選手層の面ではヨーロッパの方が今でも遥かに厚みがありますが、今アジア圏からもどんどんレベルの高いドライバーが来てくれるようになったことで、これまで競ったことのないような子たちとレースをするという刺激が、今のROTAXにあると思います」
そしてEXGELとして小川社長は、才能のあるドライバーに“世界の扉”を開けていきたいと語った。
「我々はスポンサーとして、”世界”への最初のドアを開けるんです」と小川社長は言う。
「そこで見たモノから何かを感じ取って笹原選手みたいに大志を抱くのか、日本の方が楽しいと思うかはその子次第ですが、才能があると我々が見出した子を世界へのドアまで連れて行って、その先を見せてあげることはできます」
記事をシェアもしくは保存
Subscribe and access Motorsport.com with your ad-blocker.
フォーミュラ 1 から MotoGP まで、私たちはパドックから直接報告します。あなたと同じように私たちのスポーツが大好きだからです。 専門的なジャーナリズムを提供し続けるために、当社のウェブサイトでは広告を使用しています。 それでも、広告なしのウェブサイトをお楽しみいただき、引き続き広告ブロッカーをご利用いただける機会を提供したいと考えています。