サインツは今までのキャリアを振り返り、これからトップチームのシートを獲得するという決意と自分の信念を語った。
2014年にカルロス・サインツは、レッドブルのF1プログラムに入り込める余地がなかった。そして昨年、彼はトロロッソのシートをようやく射止めたが、大きく注目を浴びたマックス・フェルスタッペンの後塵を拝した。
サインツの速さは十分に認められていたものの、今季ダニール・クビアトがレッドブルからトロロッソに移った時、空いたレッドブルのシートに収まったのはフェルスタッペンだった。
それでもやってきたサインツだが、モナコGPでのピットストップ時のミスにより表彰台のチャンスを逃し、更なるフラストレーションに直面した。
しかし、サインツは失われた機会に拘ったり、不平不満を言うような男ではない。実力を持った頭脳派ドライバーだ。
そして過去数年間、降りかかってきた全ての課題を乗り越えて、彼は2018年でトップチームのシートを獲得するために戦っている。
「僕には自信がある」
彼は今までの課題を乗り越えてきたことで培われた自分の信念について、motorsport.comの独占インタビューに語った。
「その自信は、F1ドライバーにとって必要なものだ。僕は常にそれを持ってやってきた」
「他人からすればそれは時に垣間見えるだろうし、時によく見えなくなるのかもしれない。でも僕は常に自信を持っている自分を信じてやってきた。そして今、カルロス・サインツがトップチームで走るのに値することをレッドブルやヘルムート・マルコに示す」
「大抵のドライバーに尋ねると、彼らは揃って同じことを言うだろうね。『僕はトップチームでドライブしたい』ってね。でも、僕の場合は違う。本当にそうなれる自分を信じている。そして、僕がそのためにプッシュし続けていけることを信じている」
トロロッソでの厳しい戦い
またサインツは、そう簡単に自分の下へトップチームのシートのチャンスが巡ってくるわけではないと重々承知しており、トロロッソでやれる限り挑戦していく覚悟を決めている。
彼はその焦りの中でマシンを操縦し、レースをしていくというバランスをとるのが難しいことを認めている。マシンの中でどんなにベストを尽くしたいと思っていても、それが全面に結果に現れるわけではない。しかし彼は、自分の目的を達成するための唯一の方法を知っているという。
「簡単なことじゃない。僕は『試してみるよ』とか『そのためにプッシュするつもりだ』という言葉が好きなんだ」とサインツは語った。
「『僕はそうなりたい』というフレーズの”なりたい”という欲望は、重要ではないんだ! そのためには物事を試していって、そしてベストを尽くさなければいけない。でも、その他に必要なことはほんの少しの”偶然性”だけだ。正しいタイミングと正しい場所に、人は置かれるのだから」
「それは多分、2年前にトロロッソからレッドブルにジャンプアップしたクビアトや、今年のバルセロナでレッドブルに移ったマックスと同じようなものさ。ジャンプするためには適切なタイミングと適切な場所、あとは少しばかりの運が重要だ。あと、非常に高いレベルのパフォーマンスよりも、より多くの要素が必要になる。僕たちを見ればわかると思うけど」
サインツは厳しい道を優先するタイミングがどのような状況の時かよく知っていた。フェルナンド・アロンソがフェラーリからマクラーレンへ移ったドミノ効果で、彼は2014年末にトロロッソに乗る機会を得た。
「みんなは偶然だとか、運によるものだと言うけど、僕は厳しい道を選択する方が好きなんだ」と彼は話した。
「2013年、僕にとって非常に苦しい年だ。その時レッドブルはダニール・クビアトを選び、僕はワールドシリーズ(フォーミュラ・ルノー3.5)でタイトルを獲得した」
「僕は自分の軌道を修正するために多くの変更を行った。そして最終的にはこうしてF1でレースしている。ワールドシリーズで優勝したけど、でもその後にマックス・フェルスタッペンのニュースがあがった。そしてレッドブルは、フェルスタッペンとの契約を別の年に結ぶために(ジャン−エリック)ベルニュとの契約を更新するような動きをしたんだと思う」
「でも突然状況は変わった。実際にはアロンソのおかげだ。彼はフェラーリを離れて、クビアトがレッドブルにいくと、僕はトロロッソにいくことができた」
「もちろん、これは一致点であるけど、しかし僕はワールドシリーズでタイトルを獲って、それによってヘルムート・マルコが選んでくれたことがキーになったのだと本当に信じている」
また全てのレッドブルドライバーにとって、レッドブルのモータースポーツアドバイザーのヘルムート・マルコが、若手をプレッシャーの掛かる環境に置くことは周知されていることだ。
そしてサインツは、マルコが仕向けてくる困難をポジティブに捉えている。そしてそのマルコによる”厳しい講義”について語った。
「本当だよ!」
「15歳になるとレッドブルのプログラムに参加し、そこでヘルムート・マルコと握手することになるんだ。そしてプログラムに参加できることを感謝し、自分のやりたいことをやり抜くことを約束する」
「それは15歳の子供にとって厳しいものだ。あまりにも強烈なあの男に直面できるだけの成熟度を持ち合わせていないんだから。とても辛いものだよ。そしてそこで自分のキャラクターを構築していく。15歳から彼とのミーティングに参加し、彼からたくさんの批判を受けてもそれに直面し受け止める。そうすることで成熟し、カテゴリーで勝てるようになっていく。そうやって成し遂げていくんだ」
「19~20歳の人間が突然F1の世界に飛び込んだら、5年間で30歳になったような感覚になるよ。それは長所も短所もあると思う。僕は短所より長所を見つけたんだ」
F1デビュー”同期”のフェルスタッペン
サインツは、フェルスタッペンがレッドブルでこなしている仕事を見て、大いに自信を深めている。
フェルスタッペンのレッドブルへの加入により、ダニエル・リカルドでさえ、自身にプレッシャーがかかっていることを認識しているが、サインツはトロロッソで、フェルスタッペンに対抗して成し遂げたことが、非常に印象的だったことを彼はわかっている。
「ダニエルはすでに3勝を記録しているし、彼がどんなに素晴らしい男か、みんなわかっている。だから、状況はすごく異なると思う」と彼は語った。
「僕の場合、大きく状況は違った。F1に来たばかりの人間にとっては、周りのすべてのものが刺激的だったし、僕らふたりとも、ゼロからのスタートだった」
「その年は生き残るので精一杯だったし、実際まずまずのパフォーマンスを出せた。すでにすごくタフだったし、印象を残して、2年目にさらに前進することはさらに困難だった」
「だから、僕がF1に入った時のことを考えると、今ここに居られるのはすごくラッキーなことだ。理想からは程遠いけれど、F1に留まることは簡単なことじゃないんだ」
サインツが、2017年により素晴らしい結果を残せると考えているのには、もうひとつ原因がある。彼と、彼のチームは”人並み”のパワーユニットを手にするためだ。
彼は過去2年間、パワーの劣るパワーユニットで戦うという苦難を乗り越え、トラック上で強くなったと考えている。
「間違いなくそうだ」と彼は語った。
「2015年の開幕戦のオーストラリアから、そのエリアがどれだけ進歩したのか、想像もできないだろう。ルーキーだったし、言い訳するのは簡単だよ。『オーバーテイクするのに十分なスピードがない。DRSを開いても、同じ速度までしか出ないんだから、追い抜きは不可能だ』ってね」
「40戦近くをF1で戦って、やり方を見つけたんだ。他の人より時速20kmも遅いのに、追い抜く方法なんてわからなかった。でも、僕たちがやっているように、他の人が思いもしないスペースを見つけて、DRSに加えて、バッテリーも使うんだ。そして、コーナーではタイヤも少しね。それはとてつもないことだよ」
「僕はそれに感謝しているし、全く後悔していない。それが僕のF1での2年を難しくさせたと思うけれど、僕をもっと強くしてくれたとも確信している」
12ヶ月が経ち、サインツはF1のドライバー市場で鍵になるだろうか? おそらくそうなるだろう。