ザク・ブラウンに訊くマクラーレンの今後、そしてホンダとの関係

マクラーレンのエクザクティブ・ディレクターであるザク・ブラウンに、マクラーレンの今後、そしてホンダとの関係について訊いた。

 今季限りでホンダとの関係を解消し、来季からはルノーと新たな道を歩むことに決めたマクラーレン。同チームのエクゼクティブ・ディレクターを務めるザク・ブラウンに話を訊いた。

ーーホンダとの関係が終了しました。あなたがマクラーレンに来て僅か1年でした。

「大いなる挑戦だったが、正直言って困難な1年だった。今は2018年に向けて準備を進めている。中東の株主がロン・デニスの持ち株を全部買い取って、今はひとつの会社になった。2018年に向けては大手スポンサーが付きそうだし、ドライバー2人は決定。加えてランド・ノリスとの契約もでき、新しいパワーユニットも手に入った」

「正直言って株主はこれまでずっと不満を抱えていた。実際には色んなことが展開できたが、レースの結果がついてこなかった。しかし、来年は新しいパワーユニットを手に入れたので、これから先は大きな進展が期待出来る」

「これまでも我々のチームはかなり先進的なことを達成出来た。Eスポーツとか世界最速のゲーマーとか、とにかく多くのことを成し遂げたと思っている。コース上の結果がついてこなかっただけだ」

ーーホンダとの契約は何年でしたか?

「契約はもう数年残っていたが、我々は変化を求めて、その契約を終了することにした。契約終了を申し出たのは我々マクラーレンだ。我々は勝利が欲しかった」

ーーロン・デニス時代と経営などの方針が大きく変わったということはありますか? 何を変え、何を変えなかったのですか?

「デニスは時代を超えて最も成功したF1チームオーナーだと思う。この世界では小さな成功を収めるだけで大変なのに、彼が作り上げ、成し遂げたものがどれだけ凄いか」

「もちろん彼のやり方と私のやり方は異なり、どちらが良いとか悪いとかではなく、時代が変わったということだ。レーシングドライバーが年齢が来たら引退し新しいドライバーがやって来るのと同じように、マネージメントも代替わりするということだ。そして、新しくマネージメントに着いた人物は新しい環境を作ろうとする。私はメディアやファンに向けてより暖かい、開けたコミュニケーションを築こうと思っている」

ーーデニスの作ったチームは伝統のトップダウンですが、あなたはよりオープンな組織にしようとしている。イギリス人とアメリカ人の違いですか? 

「F1チームは企業とは言ってもそれほど大きな組織ではないので、効率良く様々なことを発信しなくてはいけない。だからかつての時代とは違うマネージメントが必要で、デニスとは違う世界から来た私が異なるアプローチをするのは当然だと思う。マクラーレンにとれば、デニスが作った帝国が第二期に入ったと考えてもらってもいい。そこには新しいマネージメント・システムが必要なのは分かるだろう」

ーーマクラーレンが変わるには何が必要ですか?

「すでに少しだけど変わってきている。例えばインディ500に参加したことで、我々はより開けたチームであることをみんなに示すことが出来たと思っている。それは新鮮な考えであり、勇敢な行為であり、リスクを伴うものでもあったけれど、株主は我々がそこに挑戦することを認めてくれ、舞台がインディであってもマクラーレンの価値は認められたことを喜んでいる」

ーーマクラーレンもそうですが、F1グランプリ自体が大きく変わろうとしています。リバティ・メディア参入でそれが加速しています。

「リバティ・メディアが来てからまだそれほど時間が経たないが、これまでは良い仕事をしていると思う。彼らがフォーカスを当てているのはファンで、より多くの若いファンを取り込もうとしている。彼らがこれからの大切な消費者で、スポンサーはそのために資金を注ぎ込むはずだ。そうすればチームは豊かになり、技術が進化して戦いは激しくなる。つまり、リバティ・メディアはまさに誰もが望むべき方向にF1を持って行こうとしている」

ーーこれはあなたが望んでいたことですね。

「ああ、その通り。我々はF1がより華々しくなるために、多くの助けを必要としているからね」

ーーこれまでF1は非常に自己規制が強く、ドライバーに他のレースに参加させないという風潮があった。かつてはジム・クラーク、グラハム・ヒル、マリオ・ アンドレッティ……多くのドライバーがインディを掛け持ちしていた。

「F1の仲間からの強いジェラシーを感じた。誰もが我々がやったようにやりたいんだが、一歩踏み出せない。それはF1の呪縛だ」

ーーマクラーレンにはアロンソがいた。これもプラスに働いた。

「その通りだね。彼がいなければマクラーレンがインディに出たかどうかわからない」

ーーマクラーレンとホンダはヨーロッパと日本の異なる文化が手を組んでのビジネスになった。

「ホンダのような日本の企業は自分たちのことをグローバル企業だと言うが、現実にはまったくそうなっていないことが、F1という世界で暴かれた気がする。例えばジャガーはF1で結局は成功しなかった。それはジャガーがF1のやり方を知らなかったからだ。メルセデスはF1で成功を収めたが、それは彼らがF1のやり方を理解したからだ。ジャガーはそれが出来なかった。フォードにしたってそうだ。近年のホンダの苦戦は、F1のやり方を理解出来ていないからだ。それはグローバル企業だからどうだという話ではない」

ーーホンダに限らず、トヨタにしても同じかもしれない。

「トヨタもF1では成功しなかった。それは企業の国籍や規模の問題ではなく、F1に代表されるモータースポーツへの理解の問題だと思う。モータースポーツでは素早い決断、素早い対応が求められ、成功への激しい欲求が求められる。やり方は日本流でもアメリカ流でもイギリス流でもドイツ流でも何でもいい。しかし、F1流であることが重要だということだ」

ーー日本ではグローバル企業という言葉が流行語のように使われている。アメリカやヨーロッパではあまり聞かないように思うのだが。

「まあ、わざわざ言うことではないね。しかしアメリカのインディを見ると、ホンダはそこでアメリカの会社として戦っている。良い例はメルセデスのエンジンだ。それが開発されているのはドイツではなくイギリス。それはF1という世界に素早く対応するためにメルセデスが決定したことだ。グローバル企業というのは規模や考えだけではなく、どこでもその需要に合う供給が出来るような体制をいう」

ーー最後の質問です。マクラーレンは2018年からホンダに替えてルノーのパワーユニットを使用します。ルノーに落ち着く前は他のメーカーのパワーユニットも考慮の対象にありましたか?

「ルノー以外にもふたつの候補があったけれど、お金の問題やパートナーシップの関係からルノーがベストチョイスだということになった。レッドブルがルノーで成功を収めているという実績もあった」

ーー有り難う御座いました。マクラーレン・ホンダではなくなりましたが、成功を祈っています。

「ありがとう」

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この記事について
シリーズ F1
チーム マクラーレン
記事タイプ 速報ニュース