ホンダ長谷川氏に訊く2017年Vo.2:最大の問題は時間不足
ホンダのF1プロジェクト総責任者である長谷川祐介氏に話を訊いた。長谷川は今季最大の問題は「時間が足りなかったこと」だと語る。

今年のアブダビGPは、マクラーレン・ホンダとしての最後のレースとなった。来年はマクラーレンはルノーと、ホンダはトロロッソと手を組んで新しいスタートを切る。
その最後のレースでホンダのF1プロジェクト総責任者の長谷川祐介に話を聞いた。長谷川は今季、F1担当になって2年目。2年とも厳しいシーズンだったが、確実に改良がなされ、タイムは上向いてきた。その2年目に特化して語ってもらった。その第2回目である。
ーー性能的に満足できはじめたのはいつ頃からですか?
「夏休み明けにスペック3.5といわれるエンジンを入れたところからは、性能的にも良かったし、レース中に大きな心配をしなくてもよくなりました。ちゃんと走行距離を管理すればパフォーマンスは問題なかったので、夏休み明けからは中団で戦える競争力は出来たと思います。でも、夏休み明けのレースがスパ、モンツァと超パワーサーキットだったのであまり良い結果が出せなくて、せっかく新しいパワーユニットを入れたのに、ポイントは獲れませんでした。そこから後も同じですね。グリッド降格ペナルティが続き、マレーシア、シンガポールとアロンソのクラッシュがあったものですから、悪い方へと行ったみたいです。実力は付いたんですが、上手く活かせなかったですね」
ーーバージョンを上げていくというのは、エンジンのどこに手を入れるのですか?
「エンジン本体の効率アップがメインです。エンジン本体といってもシリンダーブロックというよりは、ピストンやバルブですね。同時にフリクション下げる等のことは当然やっています。 ホンダのエンジンは、他チームのエンジンと比べると開発の余地があります。性能の伸び率で言うと圧倒的に大きいです。それはスタートラインが低いということですが……。でも、他社のレベルが大体分かっていますから、そのギャップを埋めなければいけないし、そこに答があるわけです」
ーーエンジンのパフォーマンスは熱効率で計れますが、ホンダは十分な数値を得ていますか?
「今のF1エンジンは、パワーユニットの効率で言うとメルセデスが答えているように50%までいっていると思います。それがもちろん目標数値になりますが、彼らの言っているのは排気回生も含めてです。でも熱効率には違いないです。ホンダが足りなかったのは、エンジン側もモーター側もどちらもですね。かといって、大きく離れているわけではないんですが、その数%の違いがF1では戦闘力に大きく影響します」
ーー今年の最大の問題点は何だったと思いますか?
「技術的には色々問題点はありましたが、最大の問題は時間が足りなかったということですね。特に今年はパワーユニットのコンセプトを変えた分、もっと早くスタートしていないといけなかった。それに尽きます。今年コンセプトを変えたのは、去年のままでは性能が足りなかったからです。もちろん去年から踏襲している箇所もありますが、大きく色々と変えました。それは必要な変化でしたが、去年の5月頃から開発を始めたのですが、1年で出来る技術はやっぱり限界があったということですね」
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この記事について
シリーズ | F1 |
ドライバー | フェルナンド アロンソ , ストフェル バンドーン |
チーム | マクラーレン |
執筆者 | 赤井邦彦 |