
F1第16戦マレーシアGPの初日、フリー走行(FP)1でトップタイムだったのはニコ・ロズベルグ、FP2でトップだったのはルイス・ハミルトンと、いずれもメルセデスが1-2という結果である。
今回注目したいのは、それぞれのタイヤコンパウンドごとのデグラデーション(性能劣化によるレースペースへの影響)値の小ささである。今回のグランプリにピレリは、ソフト、ミディアム、ハードの3種類を持ち込んでいるが、そのいずれも、デグラデーションが非常に少なそうなのだ。
FP2の走行結果を見る限り、ソフトタイヤのデグラデーション平均値は、1周あたり0.087秒だった。つまり1周走るごとに0.087秒ずつラップタイムが遅くなっていくということを意味する。この数値は、非常に小さい。ちなみに、ミディアムタイヤは0.049秒/周、ハードタイヤはサンプル数が少なく正確さを欠くが、0.108秒/周であった。
FP2の気温は非常に高く、路面温度が60度を超えることもあった。にもかかわらず、これだけデグラデーションが小さいのは、サーキットの舗装が全面的にやり直され、路面がスムースになったことが影響していると思われる。そしてこの値なら、各チームとも極力ピットストップを減らしたいはずだ。
なお、各コンパウンド間のペース差は、ソフトとミディアムの差が0.5〜1秒程度(ピレリの発表では1.3秒)、ミディアムとハードの差がやはり1秒程度と算出できた。その上で、決勝ではハードタイヤを最低でも1周は使わなければならないという義務があること、各コンパウンド間のデグラデーション値の差が小さいことを考えれば、ソフトとハードのタイム差が小さいチームはソフト→ハードの1ストップ、ソフトとハードのタイム差が大きいチームは、ハードの周回数をできるだけ減らしたソフト→ソフト→ハードの2ストップを選択してくるだろうか? ちなみに、ピットストップのロスタイムは22〜25秒+静止時間程度と考えられる。
今回の勢力図を検証してみると、前述の通り1発のタイムではメルセデス勢がやはり速く、これに次いでフェラーリ、レッドブルの順となっているようだ。この後方をフォースインディアとマクラーレン・ホンダが争う展開である。
ただ、FP2でのロングランのペースを見ると、少し様相が違って見える。特筆すべきはレッドブルで、特にマックス・フェルスタッペンの速さが光っていた。
フェルスタッペンは、ロングランペースが特に秀逸だった。フェルスタッペンはミディアムタイヤを履いて1分39秒台の走行を重ね、「ロングランのペースについては本当にハッピーだ」と語るほどの手応えを感じている。その直前に彼が行ったソフトタイヤでのロングランと比較すれば、おそらくこの時の燃料搭載量はかなり少なかったと見ることができる。とはいえ、他のロングランで1分39秒台を記録したドライバーがいなかったことを考えれば、優秀な時計であることに疑いの余地はない。
フェルスタッペンが一歩抜きん出ている感はあるものの、メルセデス、フェラーリ、レッドブルのトップ3チームその他の5人のロングランペースはほぼ同一。予選結果、そしてスタート次第では、非常に白熱した上位争いが繰り広げられることだろう。
4番手チームをめぐる争いも、1発タイムとは少し異なる見解を見出すことができる。フォースインディアのロングランは、デグラデーションは若干大きめではあるものの、ソフトタイヤでは1分40秒台に入れ、ミディアムタイヤでも1分41秒台前半を記録するなど、非常に秀逸なところを見せる。
一方のマクラーレンは、フェルナンド・アロンソがミディアムタイヤで1分41秒台後半、ジェンソン・バトンはソフトタイヤでも1分41秒台後半を記録するのがやっとだった。この結果を鵜呑みにすれば、大きな差を感じる。
ここに加わってきそうなのはウイリアムズ勢。特にバルテリ・ボッタスはソフトでもミディアムでも1分40秒台を記録する、フォースインディアと同レベルのロングランを実施した。毎度のことながら、ウイリアムズは2日目以降ペースを上げてくる傾向にあり、FP3でどんな走りを見せるのかという点にも注目したい。また、トロロッソ勢もこれに加わるだけのペースを発揮していた(ダニール・クビアト、カルロス・サインツJr.とも、1分40秒台後半から1分41秒台前半のタイムを記録している)。
ここまでデグラデーション、そして勢力図を分析してきたが、この結果がそのままレースに繋がるとは、どうも言えそうもない。
まずは予選。FP2は現地時間の14時から行われたが、予選は17時からのスタート。路面温度が低くなることが予想されるため、FP2同様の勢力図になると言い切ることは非常に難しい。またさらに、予選の時刻から決勝までは、現時点では雨予報も出ている。もし本当に降雨があれば、勢力図がガラリと変わってしまうということも決して否定できない。特にここマレーシアは、夕方にはスコールが来襲する可能性が非常に高いのだ。
この記事について
シリーズ | F1 |
イベント | マレーシアGP |
サブイベント | 金曜 フリー走行2 |
ロケーション | セパン・インターナショナル・サーキット |
執筆者 | 田中 健一 |