佐藤琢磨「日本のモータースポーツが盛り上がる日はまた絶対に来る」

インディ500を制すというビッグニュースをもたらした佐藤琢磨。彼は、日本のモータースポーツが盛り上がる日が再び来ることを確信している。

 今年5月、日本のモータースポーツファンにインディ500制覇というビッグニュースを届けた佐藤琢磨。彼は日本のモータースポーツ界が再び盛り上がる日が来ると確信し、来シーズンも良い走りを続けることで注目を集めたいと語った。

 インディカーが9月に最終戦を迎え、オフシーズンを迎えた佐藤はF1日本GPが開催された鈴鹿サーキットを訪れ、トークショーやホンダ第1期F1活動で勝利を飾ったRA300のデモランを行い、決勝後には表彰台でインタビュアーを務めた。

 彼がF1を戦っていた時代、F1日本GPが開催される鈴鹿サーキットには多くの観客が詰めかけていた。スーパーアグリに在籍していた2006年、日本GPには過去最高となる3日間で36万1000人が訪れた。しかしそれ以降、観客数は減少傾向に。今年の日本GPは初日の金曜日が雨に見舞われたとはいえ、のべ13万7000人で観客動員数の過去最低を更新することとなった。

 インディ500優勝直後の凱旋帰国の折、モータースポーツの魅力を広く伝えていきたいと話していた佐藤。いちドライバーとして日本のモータースポーツ界の現状をどう考えているか、と彼に訊くと次のように答えた。

佐藤琢磨
motorsport.comのインタビューに応える佐藤琢磨

Photo by: Motorsport.com

「僕も日本のモータースポーツが爆発的な人気になって発展していってもらいたいし、それを”夢”のように思っています。だけど実際そこで僕が何ができるのかといったら、とにかく自分のレースをしていくしかないですね」

「今回、インディ500を優勝したことでモータースポーツだけじゃなくて一般のメディアもすごく注目してくれました。そういう意味では、モータースポーツ界あるいは自動車界が活性化するきっかけになっていると思うんですよね。これをやっぱり続けていくことが大事だと思うので、まずは来シーズンに向けて集中して良いレースをすることで、また日本に帰ってきた時に応援してもらえるようにしたいです」

 そう語った佐藤は来季、2012年に在籍していたレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングに”復帰”する。早くもチームに手応えを感じていると語る彼は、北米で自身が活躍を続けることが、日本のモータースポーツのために自分ができることだと述べた。

「世界で戦うことの”意味”っていうのは、すごく大事なことだと僕は思っています。本当はもっと若いドライバーたちにヨーロッパを含めて北米にもどんどん出てきてもらいたいんですけど、現状、特に北米に関しては自分が頑張るしかないですから、行けるところまでいって勝って勝って勝ちまくって、自分の最大の目標であるシリーズチャンピオンを獲って、っていうことで注目してもらうしかないです」

 ただ勝つだけではなく、勝ち方やそれをどうメディアに扱ってもらうかも大事だと言う佐藤。インディ500のディフェンディングチャンピオンとして良い走りで結果を残し、自身が立ち上げた復興支援プロジェクト『With you Japan』を通して子どもたちに夢を与えたいと語った。

「僕は復興支援に力を入れたいから、子どもたちがたくさん夢を見れるようなきっかけを作りたいですね。そのためにレースの素晴らしさ、クルマの楽しさ、チャレンジすることの大切さ、夢を持つことの大事さっていうのを伝えていって、それが最終的にはモータースポーツがもっと注目されることにつながればと思います」

 F1も観客数が減ったとはいえ、鈴鹿を訪れたF1ファンの熱狂度は全く変わっていない。その熱気を感じた佐藤は日本のモータースポーツが盛り上がる日が再び来ることを確信しているようだ。

「鈴鹿もすごく盛り上がりました。もちろん観客動員数という意味では、絶対値を見れば苦しい状況かもしれないですけど、会場にいるときはそんな風に全く感じなかったです。いまだに熱気はガンガン上がっていっていますし、これからF1もどんどん面白くなっていくと思います。ホンダも(トロロッソと提携し)次の挑戦に挑んでいきます」

「もちろん、みんな日本人のF1ドライバーを望んでいるわけだから、1日でも早くそういうスターが出てきて活躍することが、鈴鹿のF1に関して言えば盛り上がるんじゃないかと思います。でも国内モータースポーツを見れば、スーパーGTは変わらず人気があるわけだし、スーパーフォーミュラはものすごい高いレベルで競争をしている。どうにかしてその魅力を伝えていくことができれば、相乗効果でモータースポーツが盛り上がる日がまた絶対に来ると思っています」

誰がインディに来ても”ウエルカム”

Race winner Lewis Hamilton, Mercedes AMG F1, tries on the Indy 500 winners ring belonging to interviewer Takuma Sato
日本GP優勝のハミルトン、佐藤琢磨からインディ500リングを”拝借”

Photo by: Charles Coates / LAT Images

 日本GPの表彰台では、インタビュアーを務めた佐藤がつけていたインディ500のチャンピオンリングを、優勝したルイス・ハミルトン(メルセデス)が自分の指にはめる場面も見られた。

 これについて佐藤は、誰にとっても”微笑ましい瞬間だった”と振り返った。

「日本GPのポディウムも、そういう意味ではモータースポーツの魅力を伝えられました。今までF1の表彰台にインディカー(関係の話題)は絶対に出てこなかったのに、ワールドチャンピオン(ハミルトン)がリングをつけた。すごいプロモーションもできたし、シリーズの垣根を超えたという意味で、みんなにとっても微笑ましい瞬間でした」

 今シーズン、フェルナンド・アロンソ(マクラーレン・ホンダ)がF1モナコGPを欠場し、インディ500に挑戦、佐藤のチームメイトとなった。アロンソはエンジントラブルにより完走はならなかったが、世界中の注目を集めることになった。

 ハミルトンも表彰台で冗談交じりに「将来僕も(インディカーを)走るかも」と語ったが、もし今年も他のカテゴリーからインディ500に”刺客”がやってきた場合、ディフェンディングチャンピオンの佐藤はどう”やっつける”か訊くと、「それはもう誰が来てもウェルカムです」と彼は答えた。

「世界中からも注目されるし、今年のフェルナンドの参戦も世界的なビックニュースになりました。現役のF1ドライバーがモナコGPを欠場してまで出るインディ500ってなんだろうって見てくれた。そういう意味ではインディ500の魅力がたくさん伝わったと思います」

「この間のルイスも、このリングにものすごい食いついてきた。彼はインディ500というよりも、リングがキラキラしているからだと思うけど(笑)」

「そうは言っても彼もリスペクトしてくれました。ルイスと僕は同時期にF1を戦っていたこともありますが、僕がどんなレースしているのか、ルイスにしてみれば全く知らないと思うんですよ。ただ、インディ500のチャンピオンとしてはもちろん彼も知っている。僕が表彰台に来るなんて彼は全然聞いていないわけだから、本当に咄嗟のことだったんだけど、同じレーシングドライバーとして通じるものもあるだろうし、リスペクトもあってああいう形になったんだと思います」

 今年、8回目の挑戦で栄冠を勝ち獲った佐藤。インディカードライバーとして、インディ500のディフェンディングチャンピオンとして、そう簡単に”よそ者”に勝利を譲る気はないようだ。

「インディカーは本当に楽しめるシリーズだし、誰が来てもウエルカムです。でもものすごいハイレベルな競争が行われているので、そんなに簡単には勝てないよと思いますね」

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シリーズ F1 , IndyCar , スーパーGT , スーパーフォーミュラ
記事タイプ 速報ニュース