自己最高得点の裏側……ガスリー、牽引役として戦った2021年を振り返る「ユウキとの関係は上位チームと同じ」
マックス・フェルスタッペンの隣で大きく苦戦したレッドブルへF1チームでの2019年シーズンから2年、ピエール・ガスリーはアルファタウリでチームリーダーとして2021年に真価を発揮した。
写真:: Getty Images / Red Bull Content Pool
ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)は2021年シーズンのアゼルバイジャンGPで3位表彰台を獲得し、いくつかのレースではトップ6フィニッシュを獲得。20名のF1ドライバーの中でも傑出したパフォーマンスを発揮したひとりだ。
結果として、2021年のドライバーズランキングではダニエル・リカルド(マクラーレン)とわずか5ポイント差、チームメイトでルーキーの角田裕毅(32ポイント)を大きく上回る110ポイントで9位を獲得した。
2018年にアルファタウリの前身トロロッソからF1フル参戦を果たしたガスリーは、翌年からはリカルド離脱の穴を埋めるべく親チームのレッドブルへ昇格し、マックス・フェルスタッペンをチームメイトにシーズンをスタートさせた。
しかし、成績不振を理由にシーズン後半戦からはトロロッソに降格させられてしまった。ただガスリーはそこで腐ることなく走り続け、シーズン終盤のブラジルGPで初表彰台を獲得。アルファタウリとして装いを新たに臨んだ2020年シーズンは、イタリアGPでF1初優勝を達成。2021年シーズンはキャリア自己最高得点を記録するなど、これまでで最も好調なシーズンを過ごした。
2021年はF1初優勝のように高みに達することはなかったが、ガスリーは予選から決勝レースまでトップ10の“常連”として安定した速さをみせていた。
motorsport.comの独占インタビューに応じたガスリーは、F1キャリアにおいて最高のパフォーマンスを発揮してきたとして、自分自身の真価を世界に見せつけられたと考えている。
「2021年は見るからに良い1年になったし、自分のポテンシャルを発揮できるポジションにいた。何度もね」とガスリーは言う。
「中団グループの後方にいたら、例えば年に2回でも9位や8位という素晴らしい結果を出しても、それでさえ信じられないくらいなのに誰も気づきはしないだろうしね」
「2021年は、ところによってはフェラーリやマクラーレンを倒せるマシンを手にできた。フェラーリは僕らよりも2倍も3倍も予算があるし、より競争力のあるパッケージを持っている。マクラーレンも(フェラーリと)似た状況だとも分かっているけど、それでも僕は何度か彼らを打ち負かすことができた」
「僕としては、自分のスキルやスピードを証明できるポジションにいることが重要だったんだ。もちろんまだまだ課題は多いけど、F1キャリアで過去最高の結果を残すことができたのは素晴らしいことだね」
Pierre Gasly, AlphaTauri AT02
Photo by: Jerry Andre / Motorsport Images
また、ガスリーは2021年シーズンの個人的な目標が「レースウィークでの安定感を高めること」だったとして、過去にはマシンの戦闘力を補填しようと度々限界を超えて走っていたと語った。
「マシンの状態が素晴らしい時はパフォーマンスを発揮しても問題ないけど、時にはマシンがそれほど良い出来じゃないときもある。それでもそのマシンを最大限まで引き出そうとしてしまうから、一貫性に注力したいと思っていたんだ」とガスリーは言う。
「過去には何度か、限界を超えてしまったり、やりすぎてしまったりしたこともあったと思う」
「その点では、良いステップアップができたと思うし、個人的なメイン目標である一貫性はより高められた」
レッドブル所属時は、トップチームという重圧、そしてフェルスタッペンを中心としたチーム体制からか、ガスリーの真価を目にすることは出来なかった。そして、アルファタウリでは経験の浅い角田を引っ張る事実上のチームリーダーとしてのポジションに立たされている。
ガスリーは「いつかはレッドブルへ戻りたい」という願望を隠していない。しかし新F1王者となったフェルスタッペンのパートナーとして、2022年もセルジオ・ペレスがレッドブルに乗ることが決定しており、ガスリーのレッドブル再昇格は見送られた。ただ、ガスリーはチームの中心的役割を務めるドライバーが如何に貴重かを理解しており、アルファタウリがガスリーに焦点を置いたことが2021年の全体的なパフォーマンス向上の大きなカギになったと語った。
「レッドブルでのマックスを取り巻く状況と同じだし、だから(フェルスタッペンは)タイトルを戦うポジションにいることができたのだと思う」と彼は指摘した。
「ルイス(ハミルトン/メルセデス)もチーム全体を支配下に置いているし、タイトルを戦うポジションにつけていた。もしふたりがそうしたポジションにいなかったら、あれほどまでの実力は発揮できなかっただろうね」
「ルーキーのユウキがいるアルファタウリでの僕は、似たようなポジションにいる。チーム全体が僕にフォーカスして、最大限のポイントを稼ごうとしていた。僕らがパッケージ以上の成果を上げた理由もそこにある。場合によっては、持てるパッケージ以上のモノを手にするために僕の方にかなり注力していたこともあったからね」
「どんなチームに入っても、ベストパフォーマンスを出したければステータスが必要なんだ」
F1の予算制限レギュレーション導入や2022年からのテクニカルレギュレーションの劇的な変更により、グリッドに“天変地異”が起こるかも……と期待する声も大きいが、ガスリーは「現実的になる必要がある」と自身のワールドチャンピオン獲得に関しては冷静さを保っている。
Pierre Gasly, AlphaTauri
Photo by: Mark Sutton / Motorsport Images
F1キャリアでの野望をアルファタウリで叶えることができるかと尋ねられたガスリーはこう答えた。
「現時点で何か言うのは早すぎると思う」
「素晴らしい成果を手にすることは可能かもしれないけど、同時に現実的になる必要もある」
「僕はF1でワールドチャンピオンになりたい。でも、リソースやノウハウを過去数年に渡って築き上げてきたメルセデスなどのチームと対峙することは恐ろしくハードなことだ」
「上位で戦う経験もだ。上位で戦えば、自ずとプレッシャーも増えてくるというのは分かるだろう。目に見えるミスは許されないし、全てにおいて最高である必要がある。そうしたチームには、(プレッシャーのかかる)状況に対処する経験やノウハウが揃っているんだ」
「明らかに今何かを語るのは早すぎるけど、僕の目標は明確……キャリアの中でタイトル争いに挑むことだ」
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