【2017年F1ニューマシン技術解説】ザウバーC36

2月20日に新車C36の写真を公開したザウバー。ザウバーは2017年マシンを公開した、ふたつ目のチームとなった。

 ザウバーは今年、F1参戦25周年という記念すべき年を迎えた。それを祝うべく、エンジンカウルには「25周年」のロゴが掲げられ、マシンの各所に高級感溢れる金色が使われている。ベースは昨年と同じブルーだがより深くなったように見え、イエローが目立ったC35とは、一線を画す存在感を示している。

フロントウイング 

Sauber C36 front wing detail
Sauber C36 front wing detail

Photo by: Sauber F1 Team 

McLaren MP4/31 front wing fins, Mexican GP
McLaren MP4/31 front wing fins, Mexican GP

Photo by: Giorgio Piola

 フロントウイングは、2016年後半にマクラーレンが試したコンセプトに酷似しているようだ。もっとも外側にトンネル状の構造を設け、フロントタイヤの外側に、積極的に気流を流そうとしている。また、タイヤ幅の拡大に伴って広げられたフロントウイングは、フロントタイヤ前面を横切る気流をデザインするよう形作られている。

バージボード&サイドポッド

Sauber C36 sidepod detail
Sauber C36 sidepod detail

Photo by: Sauber F1 Team

 バージボードは、レギュレーション変更に伴って長さが増加しており、その前端部には四角の部分(1)が取り付けられ、高さを増加させている。また、バージボードの後端は、フロアの先端に接合している(2)。

 サイドポッドは、昨年のマシンに似ているように見える。これは、レギュレーション変更で許された最大幅を活用するよりも、小さなサイドポッド下部の抉れ部を利用して、後方に流す気流をいかに最大限にするかという点を狙ったものと考えられる。

 サイドポッド前端付近を取り巻くような形状で、フロアからコクピット横までをつなぐ整流板が取り付けられている。これにより、サイドポッド上面・側面へ向かう気流を調整し、空力性能の最大化が図られている。

 この整流板の外側には、小さなフィン(3)が取り付けられていると共に、フロアとの接合部付近にもカスケードウイング状の小型のフィン(4)が取り付けられている。

フロアパネル

Sauber C36 floor detail
Sauber C36 floor detail

Photo by: Sauber F1 Team

 リヤタイヤ直前のフロアには、11本の小さなスリットと、垂直に立ったフィンが装着されている。これは、リヤタイヤに荷重がかかって変形した際、そこに当たった気流が乱れたまま、ディフューザーに影響してしまうのを防ぐためのものだ。この部分のコントロールがうまくできなければ、ディフューザーの効果は一気に減少し、ダウンフォースが不安定になってしまう可能性も考えられる。

 ふたつの垂直フィンのうち前方のモノ(5)は、マシンの外側に向かって曲げられている。これは、リヤタイヤ前面下側に集まる気流をマシンの外方向に向かって逃がすための処置であると考えられる。これにより、リヤタイヤで発生するドラッグ(空気抵抗)を減らそうとしているのだろう。

エアインテーク

Sauber C36 cockpit and airbox detail
Sauber C36 cockpit and airbox detail

Photo by: Sauber F1 Team

 コクピット後方に設置されたガイドベーン(6)は、サイドポッドの上面を後方に向かっていく気流を整えることに活用されている。

Mercedes W01 air intake evolution
Mercedes W01 air intake evolution

Photo by: Giorgio Piola

 C36で最も特筆すべき部分は、2010年のメルセデスW01や2011年のフォースインディアVJM04、そして同年のロータスT128で使われたようなロールフープ部のデザインだ。ドライバーのヘルメット上の部分に位置するエアインテークは、通常ならば穴がひとつだ。しかしC36が採用したそれは、中央にロールフープが板状に存在し、その両側にエアインテークが設けられていた。

 ザウバーは当然、先駆者たちの真似しただだけではない。マシンの重量を減らし、リヤウイングへ向かう気流を整え、そしてエンジンやターボチャージャーに向かう気流を整える役割を果たす、最適なデザインがこれだったのだろう。

Force India VJM04 air intake
Force India VJM04 air intake

Photo by: Giorgio Piola

 2011年にレギュレーションが変更されたことで、2010年にメルセデスが使用したごく薄いロールフープを使うことができなくなった。しかし、ロータスとフォースインディアはアイデアを踏襲。レギュレーションに準拠しながらも、マシンの左右にインレットを持つことができるようになった。

 この処理は、エアボックス、ロールフープ、エンジンカバー、そしてリヤウイング間の、常に変化する空力的関係を考慮したもの。2011年以来初めての登場となる。

シャークフィン&リヤウイング

Sauber C36 rear wing detail
Sauber C36 rear wing detail

Photo by: Sauber F1 Team

 C36には、巨大なシャークフィンが取り付けられている。これは、低くなったリヤウイングに向かう気流を整え、安定したダウンフォースを発生させるためのデバイスである。

 リヤウイングの翼端板には複雑なスリットが多数開けられている。特に目立つのは、前端上部の設けられた6本の水平スリット。これはトロロッソが初めて投入し、その後多くのチームが追従して一躍トレンドになった。

 翼端板後端には、垂直方向のスリットも設けられていて、これはディフューザー効果を高めるためのものである。

Sauber C36 rear wing detail
Sauber C36 rear wing detail

Photo by: Sauber F1 Team

 リヤウイングは、中央に存在する1本のピラーによって支えられている。このピラーはエキゾーストパイプの真上に位置しており、DRSのアクチュエーターとの接続も兼ねている。

 リヤウイングのフラップ形状は複雑で、中央部が湾曲したV字形状になっている。またそれだけではなく、前端部にキャンバー角が付けられているようにも見える。

最大の弱点は旧式のパワーユニット

 今季のザウバーには大きな弱点がある。それはフェラーリ製のパワーユニットだ。コスト面と、使用するパワーユニットを早期に決定するというふたつの要因に基づき、ザウバーは昨年の早い段階で、2016年モデルのパワーユニットを使用することを決めていた。つまり、彼らのパワーユニットがアップデートされることはなく、シーズンが進むにつれ、大きく遅れていく可能性があるのだ。

 しかし、悪い面だけではない。昨年使われたフェラーリ製パワーユニットであるため、すでに多くのデータが蓄積されている上、ある程度の信頼性も保証されていると言って過言ではないだろう。

 また、早期にパワーユニットを確定できたことで、マシンのデザインを有利に進めることもできた。今季のようにレギュレーションが大きく変わる年は、空力面の開発が非常に重要になってくる。その面で最大限のパフォーマンスを発揮するためには、多くのリソースを注入することが重要になるのだ。

 とはいえ、型落ちのパワーユニットでは、パフォーマンス面で限界があるもの事実。その上、彼らが使うパワーユニットは、今季のマシンにかかる負荷を見据えて開発されたモノではないのだ。

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シリーズ F1
チーム ザウバー
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