ハースF1小松礼雄代表、“ブロック作戦”で1ポイントもぎ取ったチームを称賛「あれが唯一のチャンスだった」
サウジアラビアGPでチームプレーを駆使して1ポイントを掴んだハース。チーム代表を務める小松礼雄は、作戦を成功に導いたケビン・マグヌッセンの走りとチームの戦略を称賛した。
ジェッダ市街地サーキットで行なわれたF1サウジアラビアGPでは、10位にハースのニコ・ヒュルケンベルグが入り、チームに今季初ポイントを届けた。ただこの1ポイントは、ハースがチーム全体で勝ち取ったモノ。チーム代表を務める小松礼雄は、作戦の立役者であるケビン・マグヌッセンとチームを褒め称えた。
金曜日に行なわれた予選でマグヌッセンが13番手、ヒュルケンベルグが15番手となったハース。土曜日の決勝では、レース序盤のセーフティカー出動時にチーム間で戦略を分け、ヒュルケンベルグがステイアウト、マグヌッセンが多くのライバルと同様にピットインを選択した。
ただマグヌッセンは、セーフティカー明けにウイリアムズと接触アレクサンダー・アルボンし10秒のタイムペナルティを受けた。その後RBの角田裕毅とのバトルの中にコース外を走ってアドバンテージを得たとしてさらに10秒、合計で20秒のタイムペナルティが科されることとなった。
12番手を走るマグヌッセンは入賞を争う権利を実質的に失ってしまったが、ステイアウトを続けるヒュルケンベルグはレース中盤、入賞が狙える10番手を走行中。そこでチームは、あえてマグヌッセンにペースを落とさせて前とのギャップを形勢することで、ヒュルケンベルグがピットストップ時に後続集団に飲み込まれないようにしようと考えたのだ。
そこでマグヌッセンは1分35秒台から一気に1分36秒台にペースを下げ、角田以下を徹底ブロック。その結果ヒュルケンベルグが33周目終わりにピットへ向かう時には、同様のステイアウト戦略を取った周冠宇(キック・ザウバー)を挟んでマグヌッセンまで22秒のギャップが生まれた。ヒュルケンベルグはマグヌッセンの前でコースに復帰することに成功し、10位でチェッカーフラッグを受けることができた。
“ブロック作戦”を思いついたのはいつかと尋ねられた小松代表は「何を言っているのか分かりませんね(笑)」とおどけて、次のように答えた。
「それは冗談ですけどね。ケビンは20秒のペナルティが科されていて、ポイントを獲得することはできませんでしたし、10位を獲得するチャンスはニコにしかありませんでしたからね。もちろん、彼が十分なギャップを築けるか、まだピットストップをしていなかった周(冠宇/キック・ザウバー)のことを考えました」
「それが唯一のチャンスでした。正直なところ、ケビンは素晴らしい仕事をしてくれました。驚きましたよ」
「我々は彼に(1分)36秒台で走るように伝えていました。彼は36.2秒、36.2秒、36.2秒と刻み、ある瞬間ストレートで角田に抜かれてもうダメかと思いました。そうしたらケビンがターン1でアウト側に押しやって……驚きました。素晴らしい仕事ぶりでした」
小松代表はマグヌッセンが後続を抑え込むことができた要因のひとつとして、今季のVF-24が「ハース史上一番幅が広い」からだと冗談を放ち、次のように続けた。
「とにかくやるしかありませんでした。少なくともこのサーキットはクレイジーですし、基本的にセクター1でオーバーテイクはできません」
「ケビンがあのラップタイムでオーバーテイクされずに素晴らしい仕事をしてくれました。素晴らしいドライブでした」
Ayao Komatsu, Team Principal, Haas F1 Team, talks to the press
写真: Mark Sutton / Motorsport Images
またハースにとって今回の1ポイントがどれほど重要だったか? と尋ねられた小松代表は次のように答えた。
「信じられないほど重要です。我々の上には上位5チームがいるので、金粉みたいなモノです。10位、1ポイントを他の多くのチームと争う訳ですから、全てが完璧でなければいけません」
小松は今年初めのチーム代表就任時から、常に慎重な姿勢を取ってきた。昨年までハースはレースでのタイヤのデグラデーション(性能劣化)の激しさに頭を悩ませ、シーズン開幕後もレースを意識した週末のビルドアップが行なわれてきた。そうした中で開幕2戦目にして手にした1ポイントは、小松代表にとっても嬉しい驚きだったようだ。
「私も想定していたことがあるので、驚きの連続ですよ」と小松代表は言う。
「我々は一番小さなチームなので、我々がオフシーズン中に発見したゲインを他のチームも最低限見つけているはずです。開幕前の時点では、レースでのタイヤマネジメントの問題はまだ解決されていませんでした。そこが私のベースライン、スタート位置だったんです」
「プレシーズンテストではもちろん、昨年よりマシンは良くなっていました。でもバーレーンのようなサーキットではラップタイム差はかなり大きくなります」
「ここでの予選では12番手くらいがベストだろうということが金曜日の時点でハッキリしていました。我々のマシンはレースで強いと信じていますが、バーレーンでも明らかだったように、多くのドライバーと1ポイント、つまり10位を争っています。だから厳しいんです」
「でもチームには本当に満足しています。今回の作戦は、レースチームとして完璧に近いモノでした。だからとても嬉しいです」
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