苦節2年。メルセデス代表、ようやく実現したラッセルF1初優勝への旅路を回想「これまで彼を失望させてきた……」
F1サンパウロGPでは、メルセデスのジョージ・ラッセルがF1キャリア初優勝を挙げた。ただ、彼が勝利を掴むチャンスは、2年前にも訪れていた……。
写真:: Steve Etherington / Motorsport Images
インテルラゴス・サーキットで開催されたF1第21戦サンパウロGP。レースを制したのはメルセデスのジョージ・ラッセルだった。ラッセルにとってはこれがF1初優勝であり、113人目のグランプリウィナーとしてF1の歴史に名を刻んだ。
今季からメルセデスに加入したラッセルだが、F1で勝利を手にするチャンスを掴んだのはこれが初めてではなかった。
2020年シーズンのサクヒールGPでは、新型コロナウイルス感染により欠場することとなったルイス・ハミルトンの代役としてメルセデスから出走。予選から当時メルセデスドライバーだったバルテリ・ボッタスに匹敵する速さを見せつけ、決勝レースではスタートでボッタスを交わすと後続を寄せ付けない走りで、F1初優勝に向け絶好のチャンスを手にした。
しかし、レース中盤のピットストップでチームがタイヤ装着ミス。レース最終盤にはパンクに見舞われ、9位でレースを終えることとなった。皮肉なことに、当時ウイリアムズのドライバーだったラッセルにとっては、これがF1での初入賞だった。
そこから月日は経ち、今季からハミルトンのチームメイトとしてメルセデスに昇格。コンストラクターズタイトル8連覇を誇る強豪チームへの移籍が故に、ラッセルのF1初優勝は近いとシーズン前には見られていたが、予想に反してチームが大失速……シーズン序盤は優勝争いからは程遠いポジションを争うこととなった。
厳しい状況下もラッセルは、時にハミルトンを上回るペースを見せ、ハンガリーGP予選では初のポールポジションを獲得。シーズン後半に入ると表彰台獲得も珍しくなくなった。そしてシーズン残り2戦となったサンパウロGPではマシンパフォーマンスも伴い、ラッセルはF1初優勝を遂げた。
ラッセルの成長を間近で見守ってきたメルセデスのトト・ウルフ代表に、今回がサクヒールGPのリベンジになったかと訊くと、「リベンジと言うべきかどうかは分からない」とした上で、次のように振り返った。
「バーレーンでは彼は優勝するに値したし、我々は彼をマシンの面で失望させてしまった」
「2年前は優勝できたはずなのに、そうはならなかった。しかし今回、彼は初勝利を挙げた。だからこそ、この勝利が我々を幸せにしてくれるのだ」
「余談だが、(サンパウロGPの)決勝レース中、マシンには水漏れがあり、本当に最後まで走れるかどうか分からないという状況だった」
ラッセルは2015年にメルセデスAMG製エンジンを使用するハイテックGPのマシンを駆り、FIA F3ヨーロッパへ2シーズン参戦。2017年にはメルセデスのジュニアプログラム加入を発表し、ARTグランプリからGP3(現在のFIA F3)へ参戦し、初年度ながらも4勝をマークしタイトルを獲得した。この年には、メルセデスでF1テストを行ない、フォース・インディア(現アストンマーチン)から2度フリー走行に出走していた。
翌2018年にはFIA F2参戦初年度ながらも7勝を挙げ、タイトルを獲得。2019年にウイリアムズからF1昇格を果たすこととなった。F1参戦後は低迷が続くチームということもあり、テールエンドを走るレースが続いたものの、チームメイトには勝ち越し続けた。
ウイリアムズでの特筆すべきレースは、参戦3年目となった2021年のベルギーGPだろう。雨を味方に予選で2番手フロントロウを獲得し、豪雨の影響によりほぼレースが行なわれなかったものの、F1での初表彰台となる2位を掴んだ。
苦境の中でも輝きを放ってきたラッセル。彼がF1のトップレベルに到達できないのではと才能を疑ったことはあるか、そうウルフに訊くと、次のように彼は答えた。
「レースの後、16歳の彼がスーツにネクタイ、そしてパワーポイントのプレゼン資料を持って入ってきた時に考えた」
「彼は我々の新設したジュニアプログラムの中で、初めて(F1の)レースを制したドライバーだ。もちろん、ルイスもずっとここにいて、ジュニアアカデミーを卒業した中で最も成功したドライバーだがね」
「ただ6年後に、(ラッセルは)グランプリレースを勝ったのだ。彼は勝利に値するし、我々は常に高い目標を設定してきた。GP3でもF2でも勝つ必要があったが、彼はルーキーシーズンでそれを成し遂げてきたのだ」
「ウイリアムズ時代は、彼にとって最高の学びの期間になったと思う。一年長すぎたかもしれないけどね」
「いずれにせよ、今回最も重要なことは、彼がグランプリウィナーであり、それに相応しい人物であるということだ」
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