特集
F1
”空力の鬼才”の名は伊達じゃない! エイドリアン・ニューウェイが手掛けたF1マシン傑作選
レイトンハウス、ウイリアムズ、マクラーレン、レッドブル……天才デザイナー、エイドリアン・ニューウェイが世に送り出したF1マシンのうち、10台をピックアップ。

Charles Bradley
編集: 2024/09/10 10:03
Copy link
Viberでシェア
Google検索でmotorsport.comをお気に入り登録

Nigel Mansell, Williams FW14B Renault
写真:: Rainer W. Schlegelmilch
エイドリアン・ニューウェイは、伝説的なF1デザイナーとして、これまで数々の勝利やタイトル獲得に貢献してきた。彼の手がけたマシンは総計でコンストラクターズタイトル12回、ドライバーズタイトル13回を獲得している。
そんな彼は2025年3月にレッドブルを離れ、アストンマーティンへ移籍することが発表された。ニューウェイは現在65歳だがF1への情熱は衰えておらず、新天地でその辣腕を振るうことになる。
彼がこれまでデザインした幾多のマシンのうち、10台をピックアップして紹介しよう。

ニューウェイが手がけた最初のF1マシンは、1988年のマーチ881だった。このマシンは空力面で非常に優れており、その基準を一気に引き上げた。その一方で、空力性能を追求するためにコクピットが非常に小さくなり、ドライバーであるイワン・カペリとマウリシオ・グージェルミンを苦しめた。当時はターボエンジンが主流の時代。搭載していたジャッドV8エンジンは自然吸気エンジンだったため、ストレートでの最高速はV6ターボ勢にはとても敵わなかった。しかしその空力性能をいかんなく発揮し、時折速さを見せた。特に日本GPでは、カペリがラップリードを記録。これは1988年シーズンで唯一の、非ターボ車によるラップリード記録であった。

レッドブルが初めてタイトルを獲得した2010年のRB6。ニューウェイが引き出したダウンフォースレベルを十分に活かし、4年連続でドライバーズチャンピオンとなるセバスチャン・ベッテルの、記念すべき1回目のタイトル獲得マシンである。 この年のタイトル争いは、フェラーリvsレッドブルの大接戦。最終戦アブダビGPを迎えた時点では、ランキング首位がフェルナンド・アロンソ(フェラーリ)、2番手がマーク・ウェーバー(レッドブル)だった。しかしアロンソは、早々にピットインしたウェーバーに追従する形でピットイン。しかしふたりは、遅いマシンを抜くことができずポジションを落とし、変わって首位でフィニッシュしたベッテルがタイトルを大逆転でもぎ取ったのだ。レッドブル時代の幕開けとも言える1台。

1994年と1995年、ウイリアムズはベネトン+ミハエル・シューマッハーの前に屈した。しかしシューマッハーは、1996年からフェラーリに移籍。これが、ウイリアムズとデイモン・ヒルにとっては追い風となった。 このFW18はトリック・ディフューザーを持ち、強さを発揮した。新たにF1デビューを果たした大型新人ジャック・ビルヌーブの活躍もあり、この年のウイリアムズは16戦中12勝を達成。ヒルが史上初の親子チャンピオンに輝いた。 ニューウェイはこの年限りでチームを離れることになるが、翌年用マシンFW19もすでに手がけていたため、ビルヌーブがタイトルを獲得することに成功した。

2005年のマクラーレンMP4-20は何のタイトルも獲得しなかったが、他のどのチームよりも多くの勝利を挙げた。シーズン初期にはトラブルが相次いたため、キミ・ライコネンやファン-パブロ・モントーヤから勝利を奪うこととなった。もしこれがなければ、あと数勝加算することができていたかもしれない。結果、シーズン終盤7戦中6勝を挙げたものの、ルノーを駆るフェルナンド・アロンソにチャンピオンを獲られることになった。

2010年にダブルタイトルを獲得したレッドブルは、RB7を走らせた翌年はさらに強さを増し、19戦中12勝を挙げてセバスチャン・ベッテルが2年連続のドライバーズタイトルを手にした。また予選でも驚異的な速さを見せ、19戦中18回のポールポジションを獲得。逃したのは、韓国グランプリだけだった。コンストラクターズポイントでも、2位マクラーレンに153ポイントもの大差をつけた。

伝説的なテクニカルディレクターであるパトリック・ヘッドと協力することで、ニューウェイの才能は完全に開花したと言っても過言ではないだろう。1991年のFW14は、非常に速かったがその反面トラブルに見舞われることが多かった。このFW14はウイリアムズ初のセミ・オートマチックのパドルシフトを採用したマシンであり、熟成には時間がかかったのだ。 シーズン後半にはこの信頼性が高まり、マクラーレン・ホンダを苦しめる頻度が多くなった。そして1992年にはFW14にリ・アクティブサスペンションなどを追加したFW14Bが登場。ナイジェル・マンセルのドライビングも相まって、1992年シーズンを席巻した。結局マンセルは9勝、チームメイトのリカルド・パトレーゼは1勝を挙げた。 FW14シリーズは、2シーズン合計で17勝を獲得。史上最強の1台と言われることもある。

マシンの幅が狭くなり、グルーブドタイヤが投入された1998年のF1。ニューウェイはMP4-13のデザインで正しいことを全てやってのけたと言えるだろう。彼は荷重移動を最小限に抑えるため、車体の重心を著しく下げた。ただフェラーリのミハエル・シューマッハーも手強く、激しいタイトル争いへと発展。しかし結局ミカ・ハッキネンが8勝を挙げ、初のドライバーズタイトルを獲得した。

レッドブル黄金時代、最盛期の1台。またV8エンジン時代最後のチャンピオンマシンである。これで、セバスチャン・ベッテルが通算4度目のタイトルを獲得。ベッテルはこの2013年に13勝。ベルギーGPから最終戦ブラジルGPまでは、破竹の9連勝を達成した。RB9のパフォーマンスは非常に良かったが、トリックエンジンマップなど、幾つかの疑惑の的ともなった。この翌年から、F1はV6ターボ+ハイブリッド時代に突入。メルセデスの天下となっていく。

史上最もハイテクなF1マシンだとも言える1993年のウイリアムズFW15C。FW14Bとは異なり、最初からアクティブサスペンションありきで開発が行なわれたマシンだ。ニューウェイはエアロパッケージを精査し、前面投影面積を減らすことに成功。これにより、ハイダウンフォースが必要となるサーキットでは、リヤウイングを巨大化させる余裕が生じた。またABS(アンチロック・ブレーキ・システム)も搭載し、アクティブサスペンションを活用することで、メインストレートでのレーキ角を調整できるようになっており、最高速を発揮するのに役立った。ある意味、現在のDRSの根源とも言える。 アラン・プロストは1992年を休養に充て、1993年に復帰。自身4度目のタイトル獲得をあっさり決めた。しかしプロストは、このシーズンのみでF1から引退することになる。またデイモン・ヒルは、ブラバムから一気にトップチームに昇格し、この年3勝を挙げる活躍を見せた。

名実ともに、F1最強と言える1台が、レッドブルRB19だ。2023年シーズンの全22戦中21勝という輝かしい成績を残した。これはF1の歴史上、年間の最高勝率記録を樹立するものである。レッドブルは2022年に導入された新レギュレーション下でいち早く、速さを発揮するための要点を掴んだ。2022年に計17勝を挙げたRB18をさらに進化させたRB19は、まさにライバルを圧倒する速さ、強さを見せた。当然、この偉業はニューウェイひとりの力で成し遂げられたわけではないが、2024年のレッドブルが苦戦していることを考えると、その貢献は考えられている以上に大きいのかもしれない。
10
あなたの意見が聞きたい!
Motorsport.comで何を見たいですか?
5分間のアンケートにご協力ください。
- Motorsport.comチーム
関連ニュース :
記事をシェアもしくは保存
Copy link
Viberでシェア
前の記事 ニューウェイ加入間近と言われるアストンマーティン。果たして“鬼才”を受け入れるに十分な体制なのか?
次の記事 エイドリアン・ニューウェイ、伝説の始まり。狭くて乗りにくい、でも恐ろしく速い……レイトンハウス・マーチ製作秘話

More from
Charles Bradley

ミカ・ハッキネンが生死を彷徨った30年前の大事故。速さは失わなかったが、短命F1キャリアのきっかけに「もう運試しはやめようと思った」
F1
F1 10 ヵ月前
ミカ・ハッキネンが生死を彷徨った30年前の大事故。速さは失わなかったが、短命F1キャリアのきっかけに「もう運試しはやめようと思った」

目まぐるしく変わるアロー・マクラーレンのドライバー……悪評は全てパロウのせい? ブラウンCEOが指摘「あの契約問題で不当なレッテルがついた」
IndyCar
IndyCar 2024/07/30
目まぐるしく変わるアロー・マクラーレンのドライバー……悪評は全てパロウのせい? ブラウンCEOが指摘「あの契約問題で不当なレッテルがついた」

衝撃の大クラッシュ……巻き込まれたカークウッドは批判撤回「ガス欠が予測できるわけじゃないしね」
IndyCar
IndyCar
Iowa Race 2
2024/07/16
衝撃の大クラッシュ……巻き込まれたカークウッドは批判撤回「ガス欠が予測できるわけじゃないしね」
More from
Adrian Newey

ホーナー元レッドブル代表アストンマーティン入りの噂を、ニューウェイが否定?「今のスタッフに満足している。微調整は必要かもしれないがね」
F1
F1 1 ヵ月前
ホーナー元レッドブル代表アストンマーティン入りの噂を、ニューウェイが否定?「今のスタッフに満足している。微調整は必要かもしれないがね」

アップグレードが”前進の一歩目”になるのか? アストンマーティンが『AMR26B』に期待すべきこと
F1
F1
ベルギーGP
2 ヵ月前
アップグレードが”前進の一歩目”になるのか? アストンマーティンが『AMR26B』に期待すべきこと

アストンマーティン新車AMR26、ニューウェイの構想は2024年からスタート!「ガーデニング休暇中に生まれた哲学を貫いた」
F1
F1
Aston Martin launch
7 ヵ月前
アストンマーティン新車AMR26、ニューウェイの構想は2024年からスタート!「ガーデニング休暇中に生まれた哲学を貫いた」
最新ニュース

コラピントのチームメイト撃墜事件に終止符。ブリアトーレ「腹は立ったが……もう終わったことだ」
F1
F1 F1
バーレーンGP
26 分前
コラピントのチームメイト撃墜事件に終止符。ブリアトーレ「腹は立ったが……もう終わったことだ」

マルク・マルケス、レース完全支配しスプリント勝利。小椋藍が5位|MotoGP日本GPスプリント
MotoGP
MGP MotoGP
日本GP
43 分前
マルク・マルケス、レース完全支配しスプリント勝利。小椋藍が5位|MotoGP日本GPスプリント

3ヵ月欠場からのMotoGP復帰、一番驚いているのはビニャーレス本人?「KTMが僕に何を求めているのか分からない」と困惑気味
MotoGP
MGP MotoGP
日本GP
1 時間前
3ヵ月欠場からのMotoGP復帰、一番驚いているのはビニャーレス本人?「KTMが僕に何を求めているのか分からない」と困惑気味

やっぱり速いメルセデス。アントネッリが最速で、レッドブル勢とがっぷり四つ。アロンソも期待高まる12番手|F1バーレーンGPフリー走行3回目
F1
F1 F1
バーレーンGP
1 時間前
やっぱり速いメルセデス。アントネッリが最速で、レッドブル勢とがっぷり四つ。アロンソも期待高まる12番手|F1バーレーンGPフリー走行3回目
Subscribe and access Motorsport.com with your ad-blocker.
フォーミュラ 1 から MotoGP まで、私たちはパドックから直接報告します。あなたと同じように私たちのスポーツが大好きだからです。 専門的なジャーナリズムを提供し続けるために、当社のウェブサイトでは広告を使用しています。 それでも、広告なしのウェブサイトをお楽しみいただき、引き続き広告ブロッカーをご利用いただける機会を提供したいと考えています。
次の 2 つのオプションがあります。
- サブスクライバーになります。
- 広告ブロッカーを無効にします。
購読中 すでに購読していますか? ここからサインインします
広告ブロッカーを無効にしましたか?
ページをリロード
お知らせの管理
登録