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空力の鬼、エイドリアン・ニューウェイが築いた王者の歴史。ウイリアムズFW14B~レッドブルRB19

エイドリアン・ニューウェイは、F1カーデザインにおけるパイオニアであり、50年におよぶそのキャリアで、数々の勝利・タイトルを獲得してきた。

Ed Hardy

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編集: 2024/02/25 14:00

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Nigel Mansell (GBR) Williams FW14B, 2nd Place. Belgian Grand Prix, Spa, 30 August 1992

 12月26日に65歳の誕生日を迎えたエイドリアン・ニューウェイは、伝説的なデザイナーとしてF1で輝かしい実績を残してきた。

 ニューウェイはレッドブルの同僚たちとともにRB19を開発し、22戦中21勝を挙げて2023年のF1コンストラクターズチャンピオンシップとドライバーズチャンピオンシップの両方を制覇した。

 しかし、伝説的なデザイナーが貢献したチャンピオンシップはこれが初めてではなく、14台のマシンがタイトルを獲得している。ここではウイリアムズ、マクラーレン、レッドブルで彼が手がけた14台のチャンピオンマシンを紹介しよう。

ウイリアムズ FW14B

Nigel Mansell, Williams FW14B Renault

Photo by: Rainer W. Schlegelmilch / Motorsport Images

Nigel Mansell, Williams FW14B Renault

 ニューウェイが手がけ、初めてチャンピオンを獲得したマシンは、F1史上最も伝説的なマシンのひとつである。FW14Bは1992年に16戦中10勝を挙げ、ウイリアムズはドライバーズランキングで1-2フィニッシュを果たし、ナイジェル・マンセルが自身唯一のF1タイトルを獲得した。

 ニューウェイはウイリアムズのチーフデザイナーだったが、この年の成功の鍵となったのはFW14Bのアクティブサスペンションだったといえる。これは走行状況に応じて車両の上下動を制御するサスペンションシステムで、コーナーでの安定性を向上させ、ストレートでの空気抵抗を減らすのに役立った。

 空力面では先代FW14とほぼ変わらない。ただ、アクティブサスペンションの投入に伴い、フロントサスペンションのアクチュエータを収めるバルジが追加されているのが特徴だ。

 ルノーV10エンジンを搭載し、トラクションコントロールも含めたハイテク武装のFW14Bは、まさにF1史上最も革新的なマシンのひとつとなった。

ウイリアムズFW15C

Alain Prost, Williams FW15C Renault.

Photo by: Motorsport Images

Alain Prost, Williams FW15C Renault.

 FW14Bが火をつけたことにより、1993年のF1はハイテク競争が激化したが、FW15Cはその最先端を走っていた。アラン・プロストはFW15Cを”小さなエアバス”と表現し、アクティブサスペンション、トラクションコントロール、パワーステアリング、アンチロックブレーキなど、様々なエレクトロニクスが搭載されていた。

 また、ライバルであるマクラーレンやベネトンが使用するフォードV8よりも80~100馬力高いルノーV10エンジンとともに、ニューウェイとウイリアムズはFW15Cのエアロダイナミクスを最大化した。

 この結果、ウイリアムズは16戦中10勝を挙げ、プロストは自身最後である4度目のドライバーズタイトルを獲得した。

ウイリアムズFW16

Ayrton Senna, Williams FW16

Photo by: Sutton Images

Ayrton Senna, Williams FW16

 1994年はコンストラクターズチャンピオンに輝いたにもかかわらず、ニューウェイとウイリアムズにとって信じられないほど悲しい年となった。引退したプロストの後任にはかつてのライバル、アイルトン・セナが指名されたが、セナはシーズン第3戦のイモラで事故死してしまったのだ。

 ニューウェイの自伝『How to build a race car(レーシングカーの作り方)』で説明されているように、この事故はいまだに彼に「罪悪感」を与えている。それは彼が「マシンの空力特性を台無しにしてしまった」と考えているからだ。

 アクティブサスペンションを含めたハイテク武装が禁止されたため、通常のパッシブサスペンションに戻すことになったが、FW16は非常に狭いセットアップウインドウに苦しみ、序盤からドライビングが難しい状態だったのだ。

 しかしその後、新型フロアとボディワークの改良を含む大幅なアップグレードが施され、ウイリアムズは残り9戦中6勝を挙げる。

 こうしたシーズン後半の好調により、ウイリアムズはコンストラクターズタイトルを獲得。ただ、ドライバーズタイトルではデイモン・ヒルがミハエル・シューマッハー(当時ベネトン)に1ポイント差で敗れている。

ウイリアムズFW18

Damon Hill, Williams FW18 Renault

Photo by: Motorsport Images

Damon Hill, Williams FW18 Renault

 FW18もまた、ウイリアムズとニューウェイによって生み出された圧倒的なマシンである。1996年、ニューウェイは現代のF1に残るデザインを生み出し、ドライバーはコックピット内で寝そべるような体勢となり、頭を低く、ペダルを高くした。

 これによりマシンの重心が下がり、ウイリアムズのエアロダイナミクスはライバルを大きく引き離した。さらに、強力なルノーV10エンジンのおかげもあり、ヒルは全戦で予選フロントロウを獲得する速さを見せた。

ウイリアムズFW19

Jacques Villeneuve,  Williams FW19

Photo by: Sutton Images

Jacques Villeneuve, Williams FW19

 FW19は、ニューウェイがウイリアムズで開発に携わった最後のマシンだ。ニューウェイは1997年シーズン開幕前にマクラーレンに移籍し、その後、ジェフ・ウィリスがニューウェイの仕事を引き継いだ。

 よりコンパクトになったギヤボックスが特徴だが、最大の変化は軽量な新型ルノーRS9エンジンの導入だった。重心も従来のエンジンより14mm下がっている。

 このような変更により、ウイリアムズはニューウェイが設計したマシンで再びチャンピオンを獲得。ジャック・ビルヌーブがドライバーズタイトルを獲得し、コンストラクターズ選手権もフェラーリに21ポイント差をつけてチャンピオンとなった。

マクラーレンMP4/13

The 1998 McLaren MP4/13 is driven around the circuit

Photo by: Andy Hone / Motorsport Images

The 1998 McLaren MP4/13 is driven around the circuit

 マクラーレンに移籍したニューウェイが最初にデザインしたマシンは、いきなり両タイトルを制する速さを見せた。とはいえ、チーフデザイナーのニール・オートレイが1996年からこのマシンの設計・開発を進めていたため、ニューウェイは手を加えた程度だとしている。

 1998年に入ってすぐに明らかになったのは、マクラーレンがルールの変更に最もうまく適応していたということだ。

 マシンの横幅が狭くなったにもかかわらず、マクラーレンMP4/13のホイールベースは以前とほぼ同じに保たれた。前世代のマシンに近い安定性を優先したのだ。

 他のチームもすぐにこのデザインに追随したが、マクラーレンは1998年に16戦中9勝を挙げ、ミカ・ハッキネンが初のドライバーズタイトルを獲得。また、この年は現時点でマクラーレンがコンストラクターズ選手権を制した最後の年となっている。

マクラーレンMP4/14

Mika Hakkinen, McLaren MP4/14-Mercedes

Photo by: Motorsport Images

Mika Hakkinen, McLaren MP4/14-Mercedes

 強力なメルセデス・エンジンを搭載したMP4/14は1999年グリッド最速のマシンとなり、ハッキネンは全16戦中11戦でポールポジションを獲得した。エアロダイナミクスもMP4/13より進化していたが、マシンには欠点もあった。

 それは信頼性だ。この年、マクラーレンはメカニカルトラブルで12回もリタイアを喫し、フェラーリとのコンストラクターズ選手権争いに敗れた。マクラーレンは最終的にランキング2位に終わったが、ハッキネンがドライバーズタイトルを連覇。ニューウェイがデザインした7台のマシンが1990年代にタイトルを獲得したことになる。

レッドブルRB6

Sebastian Vettel, Red Bull Racing RB6 Renault, 1st position

Photo by: Charles Coates / Motorsport Images

Sebastian Vettel, Red Bull Racing RB6 Renault, 1st position

 2006年、ニューウェイはレッドブルへの移籍を決断した。ジャガーを買収し、2005年にF1参戦を開始したばかりの新興チームに加わったのだ。

 しかし、この移籍が実を結ぶのにそれほど時間はかからなかった。ニューウェイはレッドブル初のチャンピオンマシンとなったRB6の設計に携わり、久々のタイトル獲得となった。

 RB6は、レッドブルに初勝利をもたらしたRB5の後継マシンであり外見もよく似ている。空力面では排気を利用してダウンフォースを生むブロウン・ディフューザーなどを武器に18戦中9勝を挙げ、2010年のコンストラクターズ選手権を制覇した。セバスチャン・ベッテルもまた、劇的な幕切れとなったアブダビGPで自身初のドライバーズタイトルを獲得した。

レッドブルRB7

Sebastian Vettel, Red Bull RB7 Renault, crosses the finish line and takes the chequered flag

Photo by: Rainer W. Schlegelmilch / Motorsport Images

Sebastian Vettel, Red Bull RB7 Renault, crosses the finish line and takes the chequered flag

 RB7はF1史上最も速いマシンのひとつと言える。2011年は1戦(韓国GP)を除いてすべてのグランプリでポールポジションを獲得した。11勝をマークしたベッテルは4戦を残して2度目のタイトルを獲得し、1992年のナイジェル・マンセルを上回りシーズン最多ポールポジション記録(15回)を18回に更新した。

 マルチディフューザーやFダクトが禁止された2011年の大幅なレギュレーション変更を、ニューウェイと彼のチームは見事に乗り越えた。その代わりにレッドブルは、ブロウン・ディフューザーを進化させた。排気管を延長し、リヤタイヤ内側に排気を吹き付けることで大きなダウンフォースを得た。低速時にも一定量の排気が得られるよう「オフスロットル・ブローイング」も使用した。

 この年、リヤウイングのフラップを稼働させるDRSが導入され、自主規制されていたKERS(運動エネルギー回生システム)が復活。ニューウェイは「KERSを搭載したくない」とこぼし、実際に使用しないレースもあった。

レッドブルRB8

Sebastian Vettel, Red Bull RB8 Renault, battles with Lewis Hamilton, McLaren MP4-27 Mercedes

Photo by: Charles Coates / Motorsport Images

Sebastian Vettel, Red Bull RB8 Renault, battles with Lewis Hamilton, McLaren MP4-27 Mercedes

 レギュレーションによりエキゾーストパイプの出口が特定のエリア内に限定されたため、RB8はブロウン・ディフューザーの変更を余儀なくされた。

 その影響もあってか2012年は非常に僅差なシーズンとなり、開幕から6戦すべてで勝者が入れ替わり、レッドブルは開幕から13戦でわずか3勝しかできなかった。ニューウェイもマシンの状態を正しく把握できず、フラストレーションを溜めていた。

 しかし、シンガポールGPに向けた大規模なアップグレードがレッドブルのシーズンを大きく変えた。チームはフロントウイングをフロアに近づけることができるよう、ノーズを再設計。また、RB8にはリヤウイングの下にあるビームウイングに気流を導き、ドラッグの低減に貢献するダブルDRSが追加された。

 日本GPではレッドブルがシーズン初のフロントロウ独占を果たすなど、ベッテルが4連勝を飾り、レッドブルは3年連続のダブルタイトルを獲得した。

レッドブルRB9

Sebastian Vettel, Red Bull RB9 Renault

Photo by: Steve Etherington / Motorsport Images

Sebastian Vettel, Red Bull RB9 Renault

 2012年のタイトル争いがシーズン終盤まで続いたことで、レッドブルはRB9のシャシー開発を遅らせた。にもかかわらず、レッドブルRB9は圧倒的な強さを見せた。

 ベッテルは最終戦アブダビGPで9連勝を達成し、シーズン13勝。3戦を残してチャンピオン4連覇を決めた。これはフロントウイングのたわみに関する規制強化など、様々なルール変更を乗り越えて達成されたものだった。

 とはいえ、RB9は先代RB8が持っていた特性の多くを備えた正常進化だった。これはパワーユニット(PU)の導入を含む、2014年のレギュレーションの大幅変更を控えていたためでもあるが、以後しばらくレッドブルとニューウェイはタイトルから遠ざかることになる。

レッドブルRB16B

Max Verstappen, Red Bull Racing RB16B

Photo by: Zak Mauger / Motorsport Images

Max Verstappen, Red Bull Racing RB16B

 2021年は、マックス・フェルスタッペンとルイス・ハミルトンの世代を超えた激しいタイトル争いが繰り広げられた。

 2014年から2020年までは、まさにメルセデスが時代の王者に君臨していた。しかし2021年に向けていくつかレギュレーションが調整され、フロア、ディフューザー、リヤブレーキウイングレットに変更が加えられた。安全のため、ピレリタイヤにかかる負荷を減らすべく、ダウンフォースが10%削減されたのだ。

 メルセデスはこの影響を大きく受けたが、レッドブルはこの年限りでのF1撤退を発表したホンダが急きょ投入した新骨格のPUも武器に、メルセデスと互角以上の戦いを繰り広げた。

 その結果、タイトル争いは大接戦。決着は物議を醸す形になったものの、最終戦アブダビGPのファイナルラップでハミルトンを交わしたフェルスタッペンが、自身初のチャンピオンに輝いた。なおコンストラクターズチャンピオンはメルセデスに奪われている。

レッドブルRB18

Max Verstappen, Red Bull Racing RB18

Photo by: Erik Junius

Max Verstappen, Red Bull Racing RB18

 2022年はF1にグラウンドエフェクト・カーが再導入され、これまでの多くのレギュレーション変更と同様に、ニューウェイが手掛けたマシンが勝者となった。

 パドックで唯一、1980年代のグラウンドエフェクト時代のF1に携わっていたテクニカルディレクターであるニューウェイは、マシンの安定性が非常に重要であることを理解していた。RB18がライバルのようにポーパシング(空力の影響でマシンが激しく縦揺れする現象)しなかったのは偶然ではない。

 レッドブルはマシンの安定性に寄与するサスペンションに注力し、アグレッシブなコンセプトのサイドポンツーンを採用した。

 しかしRB18は重量オーバーに苦しみ、決勝では強力だったものの予選ではフェラーリに先行を許すシーンも多かった。

 だが開発が進むにつれてダイエットに成功したRB18は22戦中17勝を挙げ、うち15勝をマークしたフェルスタッペンが連覇を果たした。

レッドブルRB19

Race winner Max Verstappen, Red Bull Racing RB19

Photo by: Red Bull Content Pool

Race winner Max Verstappen, Red Bull Racing RB19

 RB19はF1史上最も支配的なマシンであり、22戦21勝をマークするシーズン最高勝率で両チャンピオンを楽々と獲得した。

 基本的にはRB18を正常進化させたマシンではあるものの、その空力効率の良さは圧巻。大きなダウンフォースを生みながらも、DRSをオープンした際のスピードはRB19の大きな武器になった。

 レースペースでの強さも健在で、たとえポールポジションを逃したとしてもフェルスタッペンから笑みが消えることはめったになかった。

 ニューウェイはこれまで数々のチャンピオンを獲得してきたが、2023年はおそらくこれまでで最高だっただろう。ニューウェイは週末を通してセットアップに苦戦し、唯一勝利を逃したシンガポールGPで「問題点が浮き彫りになった」と話しており、RB20はさらなる進化を果たすかもしれない。

 

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