F1

ちょっと地味だったかもしれない、ザウバー代表アルンニ・ブラビ。しかし実に“バーニー時代”らしいF1キャリアだった

アレッサンドロ・アルンニ・ブラビがザウバーのチーム代表を退任する。この出来事は、F1を“バーニー時代”からさらに遠ざけるものとなる。

Stuart Codling

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公開日時: 2025/01/17 9:12

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Alessandro Alunni Bravi, Team Representative, Alfa Romeo F1 Team

 アレッサンドロ・アルンニ・ブラビが、ザウバーのチーム代表職から1月末で退くこととなった。彼はF1ファンに広く知られる人物ではなかったかもしれないが、彼の退任はバーニー・エクレストン個人がF1を取り仕切っていた時代と、F1がより企業的になった現代との距離をさらに広げるものになったと言える。

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 アルンニ・ブラビは弁護士資格を取得して弁護士として働く一方、副業でイタリアの『Vroom』『Autosprint』でジャーナリストとして活動。2000年代初頭は、週末にAutosprintの人間としてF1の取材を行なっていた。しかし彼のキャリアを決定付けたのは、2002年にイタリア・サルデーニャ島の都市カルアリで開催されたヨーロッパF3000のレースで、法的手続きを依頼されたことだった。

 ヨーロッパF3000は当時、エクレストンの一味によって運営されていた。アルンニ・ブラビに法的手続きを依頼したのは、カリアリ大会の後援者でもあったパスクアーレ・ラットゥネドゥ。サルデーニャ出身の彼は、エクレストンのいるパドックにおける“執行人”でもあった。

 ちなみに、ラットゥネドゥはF1で具体的な役職を持たないにもかかわらず、並外れた権力を握っており、まるでマフィアのドンかのような扱いを受けていた。そのため、彼の一存でパドックパスが発行されたり取り消されたりした。例えば、ラットゥネドゥがとあるチームトラックの駐車位置がずれていると判断すれば、チームスタッフは他の重要なタスクを後回しにしてまで、駐車位置の修正に向かわねばならなかっただろう。

 結果的には短命に終わったものの、カリアリのスタディオ・サンテーリア・スタジアム付近で行なわれたこのF3000レースは、ラットゥネドゥが力を入れていたプロジェクトであった。選ばれたF1メディア関係者は経費全負担で招待され、イベントの宣伝に勤しんだ。

 そんなラットゥネドゥの依頼で働いていたアルンニ・ブラビは、その仕事ぶりが評価され、翌年のイベントでより大きな役割を与えられた。その中には、当時新進気鋭の若手だったロバート・クビサが優勝を飾った『サルデーニャF3マスターズ』も含まれていた。その後、アルンニ・ブラビはクビサのマネージャーとなる。

 そうやってラットゥネドゥの庇護を受けていったことで、エクレストンファミリーのネットワークが広がっていったアルンニ・ブラビ。GP2(現在のF2)でトライデント・レーシングの運営に携わった後、こちらも非常に人脈の広い人物であるニコラス・トッドからオファーを受ける。

 トッドはジュニアフォーミュラの雄であるARTグランプリの共同創設者であり、フェリペ・マッサ、ジュール・ビアンキ、シャルル・ルクレールといったドライバーを抱えるマネジメント会社『オールロード・マネジメント』のオーナーも務めていた。このトッドとの繋がりによって、アルンニ・ブラビは同じくARTの共同創設者であるフレデリック・バスールの所属していたザウバーに、2017年に加入することになったのだ。

 前職のルノーで政治的な不条理に苦しめられたバスールは、上級職で信頼できる味方を求めていたとされる。そしてバスールはザウバーのチーム代表を務める上で、アルンニ・ブラビの加入を条件にしていたようだ。

 それから6年が経った2022年末、バスールはフェラーリへと移籍することに。それに伴ってアルンニ・ブラビは、“マネージングディレクター兼チーム代表”というややこしい肩書きで後任となった。これは、当時CEOとなったアンドレアス・ザイドルが表に出ることを好まなかったからだ。

 長年、静かに裏方でひっそりと過ごしてきた彼にとって、チームウェアを着てテレビ中継される記者会見に出席するのはカルチャーショックのようなものだった。彼はチーム代表として、メディアとコーヒーと菓子を囲んで話すことを好んだ。これは招待制だったとはいえ、決して和気あいあいさに欠けるものではなかった。

 リバティ・メディアがエクレストンを“名誉会長”の役職に追いやってから、すでに8年が経過した。株主やコンプライアンスに忠実なアメリカ企業にとって、握手による取引をして回る商売人をデッキに放置するわけにはいかなかったのだ。さらに前述のラットゥネドゥも、2017年シーズンにはF1の職から離れることに。ひとつの時代が終わったのだ。

 そしてこの度、バーニー時代を生きた男がまたひとりF1を去った。アルンニ・ブラビは50歳と比較的若いが、再び戻ってくることもあるのだろうか?

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