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F1分析|現代F1マシンはモナコにとってデカすぎる? マシンの大きさがオーバーテイク回数に与える影響とは

雰囲気は素晴らしいが、レースとなるとオーバーテイクがほぼ不可能であり、面白みに欠けると言われることもあるF1モナコGP。その原因は大型化するF1マシンにあるかもしれない。

Sergio Perez, Red Bull Racing RB18

写真:: Erik Junius

 70年以上に渡り、基本レイアウトを変えずにF1カレンダーに残るモナコGP。歴史や豪華絢爛さが注目を集める一方で、レースそのものやオーバーテイクに関して、現代のF1マシンには不向きだと批判されるようになっている。

 確かに、狭く曲がりくねったモンテカルロ市街地サーキットでオーバーテイクを成功させるのはリスクは高く、ドライバーの小さな判断ミスが激しいクラッシュに繋がる可能性が大きい。

 F1マシンがそれほど大きくなかった時代からモナコは”抜きにくいサーキット”と評価されてきたが、近年のマシンの大型化に伴って状況はさらに悪化している。

 20年前のF1マシンは全長約4.5m、全幅約1.8mで、当時としてもモナコで2台のマシンが並走するのは難しかった。その後、様々なレギュレーション変更により、マシンの全長は5.5m、全幅は2mを超えるようになった。

 3度のF1チャンピオンであるネルソン・ピケは、モナコGPを「リビングルームで自転車に乗るようなモノ」と評したが、今では「バスルームで戦車を操るようなモノ」と言えるのかもしれない。

 F1マシンがこれほどまでに大型化したのは、パッケージングと空力が主な原因である。空力の専門家たちが、マシンのフロアを長くした方がダウンフォースの発生量が大きくなることを発見し、ホイールベースは年々長くなっていった。そして車体が大きくなるにつれて、ボディワークを細くしようと内部の配置が変更され、マシン後方には”コークボトル”のように絞られたセクションが作られた。

 そして2017年のテクニカルレギュレーションの変更が、マシン大型化に拍車をかけ、20年近く約1.8mだった全幅が約2mへと拡大された。レギュレーション変更の意図は車速向上にあったが、その代償としてコース上での接近戦を行なうことが難しくなった。

 2022年のレギュレーション刷新は、2017年の変更で難しくなった接近戦を改善すべく施行されたが、ワイドなマシンであることに変わりはない。そして1シーズンに渡って行なわれたマシン開発によって、接近戦の改善という当初の目的は薄れてしまった。

 F1がモナコの限界を超えてしまったと考えることもできるが、それは単に認識の違いかもしれない。結局、マシンがかなり小さくなっても、モナコがカレンダーに載ることを疑問視する人は少なくないだろう。

A rare side-by-side moment from Lando Norris and George Russell in 2022.

A rare side-by-side moment from Lando Norris and George Russell in 2022.

Photo by: Zak Mauger / Motorsport Images

 ここでは、過去モナコでどれだけマシンが競い合うことができたかを示す指標として、その年のオーバーテイク数を例に挙げ、数字に関連する背景をそれぞれ記すことにする。

 1993年のモナコGPは、全幅の広いマシンにもかかわらず数字を伸ばした。ただ、ウイリアムのアラン・プロストがジャンプスタートによるペナルティや再スタート時のストールから順位を回復したことが影響しており、全体としてマシン自体もそれ以降よりも小さく軽快に走れたことも影響しているだろう。

 また燃料補給のレギュレーションによって、オーバーテイクの数は激減。コース上でリスキーなオーバーテイクをするよりも、ピット戦略によりポジションアップすることができると考えたからだ。

 グラフで山になっている1997年と2008年のモナコGPはウェットレース。完走3台と稀に見る荒れたレースとなった1996年では、オーバーテイクはあまり行なわれなかった。

 

 2005年と2006年ではセーフティカー出動したため、ギャップが縮まれば追い抜いていくことも可能だということが証明された。また2006年は、フェラーリのミハエル・シューマッハーが予選でラスカスでマシンを故意に停めたとしてペナルティを科され、最後尾からの追い上げを強いられたこともあって数字を押し上げる一因になった。

 2010年に給油が廃止されれると、当初はオーバーテイク数が伸びなかったが、2011年以降は安定して2桁を記録するようになった。この時期はDRSが導入された時期と重なるが、一般的にはモナコのストレートでのDRSの効果は限定的と言われている。

 そして2017年以降、マシンの幅が拡大するとオーバーテイク数はすぐさま減少。マシンの全長と全幅が大きくなり、重量が増えた結果、機敏な動きはできなくなったのだ。

 モナコ名物のヘアピンを通過するためにドライバーがステアリングを限界まで回すのはよく見受けられる光景だが、現在のマシンはただフルロックさせるだけでは曲がりきれない。サスペンションアームを変更し、十分な回転半径を確保する必要があるのだ。

1993年のモナコGPでは、29回のオーバーテイクが行なわれた。それ以来、この数字に並ぶことはできていない。

1993年のモナコGPでは、29回のオーバーテイクが行なわれた。それ以来、この数字に並ぶことはできていない。

Photo by: Motorsport Images

 2022年のレギュレーション変更後のモナコGPはウェットコンディションで行なわれたため、現在のマシンがモナコに対応できていないと断言するのは早計だ。2023年は現行マシンがどのような動きができるかを示すためにドライコンディションのレースが必要だが、現地の予報では決勝は雨になるとも言われている。

 科学的にはモンテカルロ市街地サーキットには、小型で軽量なマシンが適しているとされている。慣性が小さくなり、ドライバーがよりダイレクトなステアリング感覚を得ることができるからだ。

 2017年にレギュレーションが変わって以降、モナコでのバトル性能は明確に低下している。それに比べて、全幅1700mmのGen3マシンで走るフォーミュラEは、29周で争われた今年のモナコePrixで116回のオーバーテイクを記録している。ここには”アタックモード”などレースフォーマットの違いもある。しかし、もし「モナコでオーバーテイクはムリだ」と言うのであれは、それこそ不誠実な話。F1が小型マシンへの回帰を選択すれば、モナコでもまともなレースが行なわれる可能性はある。

 
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