F1メカ解説|超高速のスパ・フランコルシャンに、各チームが持ち込んだリヤウイングを徹底比較:ベルギーGPピットレーン直送便
サマーブレイク明け初戦のベルギーGPに持ち込まれた各チームの最新パーツ。舞台であるスパ・フランコルシャンは高速サーキットと言っても過言ではないため、多くのチームが最高速を重視した薄いローダウンフォース仕様のリヤウイングを持ち込んだ。
写真:: Giorgio Piola
ジョルジョ・ピオラ【F1メカ解説】
Analysis provided by Giorgio Piola
ベルギーGPの舞台であるスパ・フランコルシャンは、オー・ルージュ〜ラディオンの超高速上り勾配コーナーが特に有名である。しかしターン1のラ・ソースを立ち上がると、ケメル・ストレートエンドのターン4”レコンブ”まではアクセル全開。ダウンフォースよりもストレートスピードが欲しいサーキットだと言えるだろう。
そんなスパ・フランコルシャンには、多くのチームがローダウンフォース仕様の薄いリヤウイングを持ち込んできた。メイン写真のハースもその一例。フラップの上部を切り取り、ダウンフォース……つまり空気抵抗を削ってきたのだ。
本稿ではそのリヤウイングを中心に、各チームが持ち込んだパーツを見ていこう。
Aston Martin AMR22 rear wing detail
Photo by: Giorgio Piola
アストンマーチンは、これまでにも数回使われた、ローダウンフォース仕様のリヤウイングを持ち込んできた。
メインプレーンは中央部分が落ち込むスプーン形状。しかし両端は、前から見るとほぼ平らになっている。翼端板にはふたつの円形の開口部が設けられていて、収納されているボルトを取り外すことで、メインプレーンを別の形状のモノに変更できるようになっている。
なおアストンマーチンは、ハンガリーGPで投入した昨年までのリヤウイングを彷彿とさせるある意味革新的な翼端板を、今回のグランプリでは使っていないようだ。
Ferrari F1-75 rear detail
Photo by: Giorgio Piola
フェラーリのリヤウイングは、メインプレーンが全体的に薄く、そしてスプーン形状となったデザイン。このメインプレーンの形に合わせて、フラップは中央が厚く、両端が薄い形状になっている。
このリヤウイングも、今回初登場の新仕様ではなく、すでに使用されてきたもの。ベルギーGP専用品を用意できなかったのは、予算制限によりマシン開発が十分できないという影響があったからなのかもしれない。
AlphaTauri AT03 rear wing detail
Photo by: Giorgio Piola
アルファタウリは、フラップの後端に通常なら取り付けるはずのガーニーフラップを、今回のグランプリでは取り外してきた。
ガーニーフラップは、ほんの少しだけダウンフォースを追加したい時に用いられるもの。しかしその反面、わずかながらではあるものの、空気抵抗も増加する。アルファタウリはそのほんのわずかな空気抵抗の増加も嫌ったということなのだろう。
Alfa Romeo C42 rear wing detail
Photo by: Giorgio Piola
アルファロメオは、フラップの後端を切り取ることで、ダウンフォースおよび空気抵抗を削減している。なおDRSのアクチュエーターが取り付けられる中央部分は、そのスペースを確保するために従来の幅が確保されている。
Red Bull Racing RB18 rear wing detail
Photo by: Giorgio Piola
レッドブルのリヤウイングは、他のチームのモノに比べてフラップの角度が立っており、より大きなダウンフォースを生み出すように見える。しかしその一方で、下方の目を転じると、ビームウイングが存在していないのが分かる。これがレッドブルならではの、空気抵抗削減対策なのかもしれない。
Mercedes W13 rear wing detail
Photo by: Giorgio Piola
メルセデスは、メインプレーンもフラップも、直線的で薄いモノを採用している。それ以上に注目なのは、翼端板との繋ぎ目の部分だ。
写真を見ると、上端にはふたつの角(赤い矢印の部分)が存在しているのが分かる。実は外側の低い角の部分は、通常よりも薄くなっている。そして、ここに別パーツを取り付けることで、別の仕様のリヤウイングをとしても使い回すことができるのだ。
これならば、予算上限が導入された現状の中でも、無駄なくサーキットに合わせた空力パッケージを用意することができるはずだ。
Mercedes W13 rear detail
翼端板の角に、追加パーツが取り付けられたメルセデスW13。今季アルピーヌが使っているモノに似た形状に生まれ変わった。
McLaren MC36 rear wing detail
Photo by: Giorgio Piola
マクラーレンも、フラップの上端を切り取ることで、空気抵抗を削減してきた。そしてアルファロメオ同様、中央部分はDRSポッドを取り付けるためのスペース確保のため、従来の幅を維持している。これらを実現した結果、フラップの上端は波打つような形状となった。
Alpine A522 rear detail
アルピーヌは、アゼルバイジャンGPでも使ったリヤウイングを今回も使用。フェルナンド・アロンソは当時このリヤウイングで、レース中に332km/hの最高速を記録した。
AlphaTauri AT03 detail
リヤウイング以外のパーツも見ていこう。
アルファタウリは、フロア下で発生するダウンフォース量をコントロールするため、フロアのエッジ部に変更を加えてきた。写真のように大きく切り欠きが設けられ、その上にはフロアエッジウイングがU字型のマウントを介して取り付けられている。
また切り欠きの後方には、上方に向かって巻き上げるような形状となった部分が続いている。
AlphaTauri AT03 detail
アルファタウリのサイドポンツーンのショルダー部分前端には、3本のフィンが開幕時から取り付けられている。この小さなパーツによって、サイドポンツーンのショルダー部分を後方に向かって流れる気流を整えているのだ。
McLaren MCL36 detail
マクラーレンのフロアエッジの切り欠き。切り欠きと言うより、上方に跳ね上げられたその形状は、ディフューザーのようである。
McLaren MCL36 rear detail
切り欠きの後方には、前後に長いフロアエッジウイングがU字型のマウントを介して取り付けられている。
McLaren MCL36 detail
サイドポンツーン上面からエンジンカバーにかけて、排熱用のルーバーが開けられたマクラーレンMCL36。
Alpine A522 detail
一方でアルピーヌA522は、排熱用のルーバー開口部はわずか4つ。マクラーレンとの違いは顕著である。
Alpine A522 rear detail
アルピーヌA522をリヤから。光が車体下に綺麗に回ったため、フロア下のベンチュリトンネルの形状、そしてディフューザーの内部をしっかりと確認することができる。そして間隔が大きく開けられたビームウイングのレイアウト、そして非常に小さく絞り込まれたエンジンカウル後方の開口部もチェックしておきたい。
Red Bull Racing RB18 detail
車体に取り付けられるのを待っている、レッドブルRB18のフロアとディフューザー。写真の奥、箱状になっているのが、ディフューザーである。中央の窪みには、ギヤボックスが収まる。そしてディフューザーの上部には側方に向けてやはり窪みが設けられているが、これはリヤサスペンションが動いた時に干渉するのを防ぐためのモノである。
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