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コラム

重くなり続けるF1はこのままでいいのか? ディ・グラッシが提言するF1の目指すべき姿

F1マシンは年々重くなり続けている。2023年のマシンの最低重量は798kg……まもなく800kgを超えそうな勢いだ。しかも多くのチームが、この最低重量まで軽量化できずに苦しんでいる。F1はこのままでいいのか……ルーカス・ディ・グラッシが提言する。

Lance Stroll, Aston Martin AMR22, Zhou Guanyu, Alfa Romeo C42, Yuki Tsunoda, AlphaTauri AT03

写真:: Zak Mauger / Motorsport Images

 飛行機は人のようなモノだと読んだことがある。つまり、飛行機も人も、時間とともに太り、大きくなるというわけだ。そして、レーシングカーについても同じことを言うことができるかもしれない。

 今年のF1マシンは、これまでで最も重い798kgだ。12年前、僕がF1でレースをした時よりも大幅に重くなっている。当時僕が走らせたヴァージンのVR-01は、ドライバーも含めた最低重量が620kgだったはずだ。しかもそれ以前は、もっと軽かった。しかし今年は798kg……その上、その最低重量に近づけるために、多くのチームがまだ苦労している。

 この傾向は、FIAのテクニカルレギュレーションがどうやって作り出されたかに関係している。

 F1のように大きく、重くなるのは自然の摂理ではない。F1チームが自由に選択できるのならば、現在の状況とは異なり、最も強力なエンジンを搭載し、かつ最も軽量なマシンになると思う。様々な理由から、マシンは軽ければ軽いほどいいはずだ。

 マシンの重量が重ければ重いほど、質量は大きくなる。当然加速は鈍くなり、コーナーでの遠心力も増える。もちろん、重心や重量配分、その他の要素も考慮する必要があるけどね……。またクラッシュした時の影響も、重量が重ければ重いほど大きくなる。

今年のF1マシンは、これまでで最も重い798kg

今年のF1マシンは、これまでで最も重い798kg

Photo by: Andy Hone / Motorsport Images

 重さの効果は、(燃料搭載量が大きく異なる)決勝レースの1周目と予選アタックのラップタイムを比較すれば分かりやすいだろう。重量が軽くなると、マシンのコーナリング性能、加速性能、ブレーキング性能が向上する。ドライバーとしては、その違いは鮮明なんだ。

 アンダーステアな場合、重量が増えればその傾向が悪化する。オーバーステアの時も同じだ。重量が増えて、良いことなどひとつもない。だからマシンをできるだけ軽くしたいのだ。そしてチームがバラストを最も効果的な方法で積むことができるよう、マシンを最低重量未満で作り上げようとしているのはそのためだ。

 これはF1に限った話ではない。僕はアレクサンダー・ブルツと共に、ACO(フランス西部自動車協会)に、LMP1マシンの最低重量に、ドライバーの体重を組み込むよう働きかけを行なったのを覚えている。その結果、2015年以降は、ドライバーの平均体重が80kg以下のチームは、バラストを搭載する必要があった。

 なおドライバーが20kg軽ければ、当時はル・マンを1周あたり1秒速く走ることができた。その効果は、ドライバーの腕の差よりも大きいとも言える。体重が軽いドライバーを獲得することは、どんなレースにとっても大きなアドバンテージになるのだ。

 レッドブルのエイドリアン・ニューウェイは、マシンはできるだけ軽くするべきであり、その逆になるべきではないと言っている。その意見には完全に同意するよ。F1は、地球上で最も高性能の車両であるべきだと思う。

 かつては、極端に軽く速いマシンを作り上げようとした場合、パーツに信頼性の問題を抱えることが多く、事故に繋がることになった。しかし今では技術は進歩し、安全性を損なうことなく、軽いマシンを生み出すことができるようになった。

 コーリン・チャップマンの時代、彼らはパーツを作り、コースで実際に走らせて壊れないかどうかを確認してから、修正して再度走らせるというようなことをやらなければいけなかった。でも今では、高度な製作機械やシミュレーションがあるので、強度や安全性を確保することができるようになった。技術が大きく進歩し、軽量の素材で作られていてもマシンの信頼性が高く、サスペンションなどの故障もほとんどなくなった。

 テクノロジーが進歩するに連れて、マシンが重くなる必要があるということを受け入れるべきではない。フォーミュラEは、非常に良い仕事をしている。新しいGen3マシンは、一番最初のGen1よりも小さく、80kgも軽量化されている。より多くの電力を”積む”ためには、重くすれば簡単だ。でもGen3はそれを逆転させ、測定可能な重量という点で、持続可能性を実現したのだ。

フォーミュラEのGen3は、前世代よりも小型・軽量化されており、重量増加の傾向を逆転させることが可能であることを示している

フォーミュラEのGen3は、前世代よりも小型・軽量化されており、重量増加の傾向を逆転させることが可能であることを示している

Photo by: NIO Formula E Team

 そのためには、適切な環境とルールを作り上げる必要がある。F1の重量増加の最大の要因は、複雑なハイブリッドエンジン、つまりパワーユニットである。軽量化によってパフォーマンスを向上させるためには、F1に関する哲学を変える必要がある。ただ軽量で丈夫な素材を作るのにはコストがかかる……そのため、予算上限のどこが最適なのかという点についても、見極める必要があるだろう。

 ただ軽量化の道を進めていくことができれば、今のハイブリッドF1よりも、さらに多くの利益を世界にもたらすのは間違いない。

 2026年以降、MGU-Hを廃止するのを決断したことは、驚くべきことではない。この熱回生技術は、通常の市販車では使えなかった。効率を追求するためにこのような複雑なパワートレインを使うことは、現行のレギュレーションが始まって以来の欠陥だった。

 今の飛行機を電動にできない、あるいはハイブリッドでさえない理由は、バッテリーが重いため、長い距離を飛ぶのに適していないからだ。F1がハイブリッドPUを使うために重いバッテリーを積むよりも、ハイブリッドなしの方が速く走れる場合、ハイブリッドを使うということに意味はないかもしれない。

 ハイブリッドエンジンに多額の投資を行なっている人たちからすれば、受け入れられない意見かもしれない。しかし僕としては、モータースポーツの主要なシリーズがそれぞれどんな目的を果たそうとしているのかを明確に区別して、重複しないようにする必要があると思う。例えばF1は妥協のない最大パフォーマンスに焦点を当て、フォーミュラEは効率に焦点を当て、その他のシリーズは市販技術に関連するWECのようなモノにすべきだと思う。

 この考えは急進的なモノかもしれないけど、F1がどうあるべきかという正しい考えを導き出すために向けられている。また持続可能性を向上させるためにも、マシン設備を軽量化することで、輸送時の炭素放出量を大幅に削減できると思う。

 世間に対して、持続可能性という側面を訴えることができなければ、スポンサーや自動車メーカーにとって、F1は魅力的なモノには映らなくなるだろう。これまでで最も派手なマシンを生み出すために、持続可能性を放棄するのは現実的ではない。しかし軽量化を目指すことになれば、市販車で使うための実験場と言える場合もあるかもしれない。

マシン軽量化により、物流面でもさらなる効果が期待できる

マシン軽量化により、物流面でもさらなる効果が期待できる

Photo by: Mark Sutton / Motorsport Images

 より軽いマシンを走らせるということは、生産しなければならないパーツが少なくなり、パーツを生み出すために使うエネルギー量が少なくなるということを意味する。また軽いクルマは使う燃料も少なくなり、市販車に置き換えるのも容易だ。それは、世間に正しいメッセージを送ることになるだろう。

 ヨーロッパでは、2035年までにエンジン車の販売が禁止されることになっている。F1が市販車と関連していなければならないのなら、ハイブリッドPUに焦点を当てなければいけないというのは、明確なことかもしれない。

 しかしF1は、航空宇宙産業、軽量構造、またこの目的に最適な技術を使う、極端な車両に関連する技術開発に焦点を当てるべきだと思う。将来的にどんな技術がやってくるのかを目にするのは、実に興味深いことだろう。

 
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