【F1分析】アルファタウリ・ホンダは2021年に”サプライズ”を起こせるか?

角田裕毅が加入し、2021年のF1開幕戦で印象的な活躍を見せたアルファタウリ・ホンダ。今後も、彼らの活躍は続くのだろうか? 開幕戦を見る限り、そうなる可能性は高そうだ。

【F1分析】アルファタウリ・ホンダは2021年に”サプライズ”を起こせるか?

 2021年のF1は開幕戦を終え、アルファタウリ・ホンダへの注目が高まっている。

 アルファタウリが開幕戦で獲得したポイントは、角田裕毅が9位に入賞したことによるわずか2ポイントのみ。しかし、予選でピエール・ガスリーと角田が見せたペースは、ライバルを驚かせるものだった。

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 角田は予選Q1で2番手タイムを記録。昨年王者のルイス・ハミルトン(メルセデス)をも凌いでみせたのだ。これにはマクラーレンのチーム代表であるアンドレアス・ザイドルが「ちょっとした驚き」と語るなど、警戒の目を向けさせるには十分すぎるものだった。

 続くQ2では、アルファタウリ勢は2台揃ってミディアムタイヤでの突破を目指した。これは本来ならば、レッドブルやメルセデスなどのトップチームにしか成しえない業。角田はうまくいかず13番手でQ2脱落となったが、ガスリーはしっかりとアタックを成功させ、Q3に進出してみせた。

 Q3でソフトタイヤを履いたガスリーは、フェルスタッペン、ハミルトン、バルテリ・ボッタス(メルセデス)、シャルル・ルクレール(フェラーリ)に次ぐ5番手タイムを記録、好グリッドを手にした。

 そのガスリーは、レース序盤にマクラーレンのダニエル・リカルドと接触してフロントウイングを失い、大きく遅れることになった。ただ角田は、スタート直後こそポジションをいくつか落としたものの、その後は印象的なペースで走り、前を行くマシンを次々にオーバーテイク。最終ラップにはアストンマーチンのランス・ストロールを抜いて9位入賞を果たした。

 これらバーレーンでの活躍は、今季のアルファタウリ・ホンダの可能性を十分に示したものだったと言えるだろう。

 アルファタウリは、大乱戦となった昨年のイタリアGP(モンツァ)で勝利。今季のマシンは昨年型の改良版であり、ホンダのパワーユニット(PU)のパフォーマンスが向上していることを考えれば、彼らが開幕戦のような速さを見せたのも驚きではないはずだ。

「多くのことを組み合わせた結果だ」

 アルファタウリのテクニカルディレクターであるジョディ・エギントンはそう語る。

「昨年も良いクルマを持っていると思っていた。でも我々は、より硬いタイヤでQ2を通過することができるだろうか、などと言えるような状況ではなかった」

「でも今回は、数字がそれがうまくいくと語っていた。そしてそれは、マシンがうまく機能していることの証だと思う。誰もがマシンを開発するために懸命に働き、そしてPUが良くなり、シャシーも良くなった」

「チームの若いエンジニアの多くは、この2〜3年の間に成長してきた。彼らは自信を高めており、そして我々は本当に良い方向性を手にしていると思う」

「それに加えてユウキがやってきた。彼は才能のある男だ。そしてピエールはこのチームに溶け込んでおり、素晴らしいインプットをもたらしてくれる。それが全て一緒になって機能しているんだ」

 どんなことでも、継続できるということは有益に繋がる。ライバルチームの一部は、マネジメント体制やPUに変更があったり、さらに今季から導入された予算上限に対応するための作業を行なうことを強いられた。しかしアルファタウリには、大きく変更された部分はない。

 彼らはルールで、レッドブルが2020年に使っていたギヤボックスとサスペンションを使うこともできた。しかしレッドブルは昨年、マシンのリヤエンドの不安定さに苦労。アルファタウリはこれを避けるため、昨年使っていたモノを今季も継続使用することを決めた。

 アルファタウリにとって最も大きな変化は、風洞のスケールが50%から60%に大きくなったことだ。他のチームは既に60%スケールの風洞を使用していたため、アルファタウリはようやくこれに追いついたということになる。

 風洞のスケールが変わったことで、チームには余計な仕事が増えたはずだ。しかしこの変更は、間違いなく利益を生むはずだ。

 エギントン曰く、チームは風洞の変更にうまく適応することができ、AT02の初走行まで順調に作業が進んだという。

「我々の計画は、我々のマシンをしっかりと学ぶことだった」

 そうエギントンは説明する。

「このマシンは50%の風洞で開発されたため、空力のデータを収集することに多くの時間を費やした。その後、60%スケールの風洞に移行したんだ」

「やるべきことはたくさんある。現在、我々は以前とは別の風洞でマシンを開発している。ある所で生み出され、今は別の場所で開発が進められているんだ」

「空力に関する仕事がたくさんある。相関関係を理解すること、そしてレギュレーションの変更による違いはどんなモノだったのかということを確認することなどだ。また、ユウキがマシンに求めているモノもね」

「そして明らかに、ホンダの新しいPUは、全てのチェックを実行し、我々が期待していたモノを提供してくれ、我々が期待した通りに機能していることも分かっている」

 2021年の空力レギュレーションの変更は、全てのチームにとってパフォーマンス上の鍵となるモノだ。アルファタウリは風洞のサイズが変更されることで、その変化に対するプロセスに、特別な視点が加わった。

「レギュレーションの変更により、フロアは劇的に変化した。そしてディフューザーやマシンのリヤエンドが、空力面でどう機能するかということもね。誰もがダウンフォースを取り戻そうとしていた。そんな中で我々は、適当な量を取り戻すことができたんだ」

「我々は、マシンの空力が幅広い領域で機能することを目指した。特に低速では、ドライバーはそれを活かすことができ、我々はより速く進むことができる」

「マシンがどんなモノであるのかということについて、我々は良い見解を手にしていると思う。そして、目標を達成することを可能にするのだ。空力の開発により、レギュレーションの変更によって影響を受けた領域から多くのパフォーマンスを引き出し、そして開発中の変更が他の何かを混乱させないようにするのだ」

「ただ開発を続けていくことが必要だ。イモラにはいくつか新しいモノが投入され、ポルトガル、そしてスペインにもいくつかの新しいモノを持ち込む。つまり、それは時間をかけてじっくりと進めていく。仰天させるようなモノはない。しかしスペインまで、我々は素晴らしい一歩を踏み出すことになるだろう」

 アルファタウリは昨年、シーズンを通して一貫性を保つのに苦労した。これが今後の課題。つまり、バーレーンで見せたようなパフォーマンスを、今後も見せることができるのかどうかということだ。

「昨年、我々は中団の混戦の中にいた」

 そうエギントンは語る。

「しかしその中で我々のパフォーマンスのバラつきは、望んでいたモノより少し大きかった。いくつかの週末にはとてもうまく機能したが、他の週末は少し苦労した」

「シーズン後半には、そのバラつきが減少した。そのために、我々が試したことがいくつかあった。そして今年も、まだ1戦を終えただけだけど、同じような混戦の中に戻ってきたようだ。ルーキーのドライバーと共にね」

「彼がすぐに馴染むことができたのは、我々がしてきたことの成果のように見える。今後数レースを見て、それから検証する必要がある。我々にはより一貫性が備わったのか……ということについてね」

「昨年のマシンのペースには満足していた。しかし、本当にうまくいったイベントもいくつかあったが、悲しみと共に家路についたイベントもいくつかあった」

「そういう浮き沈みを、最小限に抑えたいと思う。中団グループは大接戦であるため、そうしなければならない。誰もがポイントを奪い取ろうとするだろうし、それを失うような余裕はない」

■ガスリーは角田の絶好の”参考”に

 ガスリーは2019年の前半、一時レッドブルのドライバーを務めたことを除けば、アルファタウリに2017年の10月から所属し続けている(加入当初のチーム名は、まだトロロッソだった)。そのガスリーの存在は、チームの”継続性”という面で大きく貢献していると言えよう。

 ガスリーは昨年後半以降自信をつけており、レッドブルに昇格する可能性が少なくなったとはいえ、今置かれた環境で輝いている。

「彼の存在は重要だ。なぜなら彼は、昨年のマシンに対する評価を持っているからね」

 そうエギントンは語る。

「今年のマシンは昨年のマシンの進化形であり、エンジニアリングチームのメンバーと同様に、彼も昨年のマシンのパフォーマンスを理解している。それは、ユウキが何かに苦しむことになった場合に役立つだろう。ピエールは、ユウキにとっての参考書にもなるんだ」

「ピエールは、何が変わったのか、何が良いのか、そして何が悪いのかということを詳細にわたって説明してくれる。それは素晴らしいことだ。それと実験での相関関係を組み合わせると、ユウキが抱くかもしれないいくつかの疑問に答えるのに役立つ可能性がある」

 角田もすでにチームに溶け込んでおり、彼の存在はチームに活気をもたらしていると、エギントンは語る。

「彼は非常に急速に学んでいるところだ」

「彼はそれを段階的に進めており、多くの情報を吸収している。うまくコミュニケーションを取り、我々も彼がマシンに求めていることを理解している。彼はエンジニアリングのチームとも、うまく働いているんだ」

「アルファタウリはトロロッソ時代から、若いドライバーたちと仕事をしてきた歴史がある。そして、若いドライバーと仕事をするのを得意としている。チームに所属し、巣立っていったドライバーたちがその後残した記録を見れば、我々のエンジニアたちが優れていることを示していると言っても過言ではないだろう」

「我々には浮き沈みがあるだろうが、それを口にすることが重要だと思う。我々は中団グループの接戦の中にいるから、そういうことが間違いなく起きるだろうからね。そして彼は、ピエールからそれを学ぶことができる」

 2021年のF1第2戦エミリア・ロマーニャGPの舞台はイモラ。アルファタウリが、オフシーズン中に旧型マシンを使い、走り込んだコースである。角田もルーキーながら、このコースを十二分に走り込んでいる……いわば、アルファタウリにとってはホームレースとも言えるグランプリだ。

 この第2戦は、アルファタウリAT02の真の可能性を露わにするだろうか?

 

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この記事について

シリーズ F1
チーム アルファタウリ・ホンダ
執筆者 Adam Cooper