フレキシブルウイングはリヤにも? マクラーレンの”ミニDRS”とも言える新たな手法が明るみに。ピアストリ2勝目を後押しした?
F1アゼルバイジャンGPでは、マクラーレンのリヤウイングのフラップが、直線走行中に後方に倒れているのが確認された。これにより、直線でのスピードを高めようとしている可能性がある。
McLaren MCL38 rear wing
写真:: Giorgio Piola
F1アゼルバイジャンGPでは、マクラーレンのリヤウイングが注目を浴びることになった。メインストレートを含む長い全開区間を走行するマクラーレンのリヤウイングのフラップが、後方に向けて倒れるように歪んでいるのが、オンボードカメラで映し出されたのだった。このことは、今後技術面に関する論争の火種となる可能性がある。
オスカー・ピアストリがドライブするマクラーレンMCL38の後方を映したオンボードカメラ映像では、リヤウイングに負荷がかかった際に、フラップが歪んでいるのが映し出された、速度が上がるに連れてこのフラップが後方に歪んでいるようで、これによって空気抵抗が減り、直線スピードが向上している可能性がある。つまり、フレキシブル・リヤウイングになっているようだ。
今シーズンは、フロントウイングがフレキシブルウイングとなっていることについて注目されてきた。しかし今後は、リヤのフレキシブルウイングについても、議論の的となっていくかもしれない。
マクラーレンの”フレキシブル”リヤウイングについては、後方を走っていたフェラーリのシャルル・ルクレールがDRSを使っているにも関わらず、ピアストリがこれを抑え続けたレースが終わった後に注目された。
F1では長い間、フレキシブルウイングが合法なのか、あるいは非合法なのかということが、議論され続けてきた。各チームはFIAの静的テストをクリアしつつ、空気抵抗によって変形するウイングの開発を常に模索してきた。この開発がうまくいけば、コーナーではしっかりとダウンフォースを得ながらも、ダウンフォースを必要としない直線走行中の空気抵抗を減らすことができ、マシンの全体的なパフォーマンスを引き上げることに繋がるからだ。
FIAの静的テストは、基本的には安全対策に重点が置かれている。しかしフレキシブルウイングは、レギュレーションが目指す考え方とは違うということもあり、取り締まりが強化されてきた。
そのため各車に搭載されたオンボードカメラ映像を活用。ウイングの変形がどのように起きているのかを確認する手段が確立された。これは2021年から導入されていて、FIAは全てのチームのリヤウイングのメインプレーンとフラップの特定の箇所に12個の位置特定用のステッカーを貼るように要請した。そしてこれを後方を映したオンボードカメラを使って確認するという形だ。なおフラップに6箇所、メインプレーンに6箇所、白い点が貼られており、この位置を測定するという手法になっている。
ただこれは主に、リヤウイングの変形を自主的に確認するための手段として機能していたと見られている。
McLaren MCL38 rear wing detail
Photo by: Uncredited
上の写真をご覧いただくとわかるように、高速走行中のマクラーレンのリヤウイングのフラップ前端が、少し上に持ち上がっているように見える(赤い矢印の部分)。これは今回のアゼルバイジャンGPに新たに持ち込まれたものではないはずで、FIAとしてはレギュレーションの範囲内にあることを確認できているものと見られる。
この効果は、フラップとメインプレーンの間に隙間を開けることで、DRSを開いた時と似た効果が得られている可能性が高い。もちろん、開く大きさが違うので、同じ効果というわけではない。ただ、リヤウイング全体に負荷がかかると、フラップが後方に倒れるため、1周にわたってパフォーマンスを向上させることができるはずだ。
たとえばアゼルバイジャンでは、メインストレートを含む全開区間以外にも、中間セクターでもフラップが歪んでいるのが確認できた。ただその時のフラップの動きは、メインストレートほどではなかった。
まさに”ミニDRS”とでも言えそうなこのマクラーレンのフレキシブル・リヤウイング。この技術は、F1のエンジニアが示した独創性の新たな例だと言えよう。F1では、ライバルが考えすらしなかった方法でレギュレーションを解釈する方法を見つけることで、優位に立つ一助にすることができる……そんなスポーツなのだ。
そしてもっと興味深いのはこれからのことだ。他のチームも、間違いなくこの設計手法を取り入れてくることだろう。しかしながら、今シーズンの高速サーキットでのグランプリは、ほとんど終了してしまった。そのことを考えると、今シーズン中にマクラーレン以上にこの手法を活用できるチームは出てこないだろう。
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